2013年9月12日

News Release No.13050

キッコーマン、「新規フルクトシルペプチドオキシダーゼの開発とそれを用いた糖尿病診断法の構築」で第22回生物工学技術賞を受賞!

キッコーマン株式会社は、公益社団法人日本生物工学会より、「新規フルクトシルペプチドオキシダーゼの開発とそれを用いた糖尿病診断法の構築」に対して第22回生物工学技術賞(*1)を授与されることになりました。

授賞式と受賞講演は9月18日、第65回日本生物工学会大会(広島国際会議場)で行われます。

糖尿病の診断は血液検査により行われ、血糖値と糖化ヘモグロビン(HbA1c)の値を指標とします。糖化ヘモグロビン(HbA1c)は、ヘモグロビンが糖と結合した成分で、血糖値が高いと結合しやすいといわれています。その量は過去1~2カ月の平均血糖値を反映することが知られており、糖尿病診断の指標としてだけでなく、糖尿病治療の指標としても注目されています。従来、糖化ヘモグロビン(HbA1c)はHPLC法と免疫法により測定されていましたが、より簡便な酵素法の開発が強く望まれていました(*2)。今回の受賞は、当社が酵素法での糖化ヘモグロビン(HbA1c)の測定方法を世界で初めて確立したことが評価されたものです。

しょうゆの旨み成分の多くは、麹菌が生産する酵素のはたらきに由来するため、当社では酵素の研究を進めてきました。しょうゆ以外への利用を目的とした酵素の研究も進み、その成果の一つとして、糖化ヘモグロビン(HbA1c)の測定に用いる新規酵素「フルクトシルペプチドオキシダーゼ」を発見し、工業生産に成功しています。現在、「フルクトシルペプチドオキシダーゼ」はキッコーマンバイオケミファ株式会社で臨床診断薬原料として製造、販売し、キットメーカー各社の診断キットに使用されています。当社では、さらに「フルクトシルペプチドオキシダーゼ」の立体構造を解明し、得られた情報から酵素の機能改良に取り組み、次世代測定法の開発を続けています。

厚生労働省の2011年国民健康・栄養調査報告によると、糖尿病が強く疑われる人や可能性を否定できない「予備軍」が合わせて成人の27.1%と推計され、4人に1人が糖尿病かその予備軍であることが明らかになりました。糖尿病の診断だけでなく、血糖の定期的な管理のため、糖化ヘモグロビン(HbA1c)検査数は年々増加の一途をたどっています。また糖尿病は、初期段階で見逃して放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性があることから、適切な検査による診断が重要です。今回開発した測定法は、糖尿病の正確・迅速・簡便な診断に有効であり、合併症予防や健康管理、糖尿病患者の生活の質向上に大きく貢献することが期待されます。

  • (*1) 公益社団法人日本生物工学会が、生物工学に関連する工業の技術開発に顕著に貢献した会員に対し、授与している賞です。
  • (*2) 【HPLC法】高速液体クロマトグラフィーという高精度な専用機器を用いる方法です。いち早く開発された検査方法であり、現在でも多く使われています。
    【免疫法】特定の物質に結合する抗体の反応を利用した測定法です。汎用の自動測定装置が使用できます。時間あたりで処理できる検体数が多く、検査コストも安いのが特徴です。
    【酵素法】特定の物質に対してのみ作用する酵素反応を利用した測定法です。当社が確立したのは、糖化ヘモグロビン(HbA1c)からタンパク質分解酵素により出てくる糖化ジペプチドに対し、検出酵素(フルクトシルペプチドオキシダーゼ)を反応させ、出てくる色の変化をみる測定方法です。大量検体処理に適しており、検査コストも安いため、需要が高まっています。

以上