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過去の展示

自然がささえる草原の食卓


伝統的な飲みもの 草原の嗜好品
酒は、夏季につくられる馬乳酒の「アイラグ」と、ウマ以外の家畜乳を単独、または混合して発酵した蒸留酒「アルヒ」の2つがあります。
「アイラグ」は冷却した馬乳を乳酸菌と酵母で発酵させたアルコール濃度1.5~2.5%の酒で、専用の発酵容器に入れて1日に1万回程も攪拌してつくります。成人男子では1日に5~10l程飲まれています。発酵の過程で乳酸菌からビタミンCが生成され、野菜を摂らない遊牧民のビタミンC補給源として、健康維持に重要な役割を果たしてきました。その飲用には「結核に罹(かか)らない」、「血圧を上げない働きがある」などの医療効果も伝承され、子どもにも積極的に飲ませています。
「アルヒ」は自家製蒸留器を用いてつくられます。1回の蒸留によってアルコール濃度は4%前後となります。遊牧民には独酌の習慣がなく、来客があった時に飲まれます。このように、1人では飲まずに必ず大勢で酒を飲むという習慣は、人類の古い飲酒形態を伝えているといえましょう。
また、乾燥の激しい草原では、1日平均で1人あたり、2l前後の「スーティツァイ」(乳茶)を飲んでいます。つくり方は外国製の茶を削って煮出した後、乳と少量の塩を加えます。

ゲルを訪れる人は、初対面であろうと外国人であろうと、いつでも歓待されます。もてなしはこの「スーティツァイ」と自家製乳製品です。ゲルを留守にする時も、来客用として卓上に「スーティツァイ」を入れたポットと乳製品を用意しておきます。無人のゲルでも客は自由に入って飲食し、去ってかまわないのです。

フフル
フフル
ウシの一枚皮でつくった馬乳酒専用の発酵容器。搾り取った乳をここに入れて発酵させる
トゴーブリヘル(蒸留器)
トゴーブリヘル(蒸留器)
自家製の蒸留装置で、蒸留されたアルヒは樽の外に出てくるようになっている

アイラグ(馬乳酒)
アイラグ(馬乳酒)
ゲルの男性スペース(左側)に座って飲んでいる。左手にもっているのは、モンゴルの男性が大事にしているカギタバコで、初対面の人や知り合いと逢った時に交換する
伝統的な飲みもの