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過去の展示

『食道楽』に学ぶ

栄養論
弦斎の料理に対する姿勢は、従来の日本人の食生活を栄養面から見直して、その欠陥を補うために和風の食材を西洋料理にアレンジし、新しい食材と新しい味を広めようとしたところにある。そして『食道楽』は、家庭における料理の近代化を促進することに貢献した。
弦斎はアメリカ公使館で働いていたコックを雇い、コックが作る料理を試食して、おいしいと思ったものだけを採用して小説のなかに生かした。さらに日本料理や中国料理についても、それぞれ有名な店の料理人の協力を得ていた。したがって『食道楽』は、一流の料理人の意見を参考にしつつ、実用性を重視して書かれているのが特徴である。弦斎は、『食道楽』のなかで料理することの文化的意義を積極的にとらえ、医師や栄養学者のコメントを多用しながら、食べることの健康に与える影響はもちろん、日々の食生活を通して当時の日本人のライフスタイルそのものを変革しようとしたのである。
大隈伯邸花壇室内食卓真景(水野年方画) 『食道楽』冬の巻 口絵
大隈伯邸花壇室内食卓真景(水野年方画)
『食道楽』冬の巻 口絵
(神奈川近代文学館蔵)
イラスト
栄養論