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企画展示

江戸から学ぶ 食の「しつけ」と「こころ」

日本の「こころ」
日本は、四季の移り変わりを楽しめる、豊かな風土に恵まれ、私たちは昔から花鳥風月を暮らしのなかに取り入れてきました。花見では梅・桃・桜の花を愛で、紅葉狩りでは錦織り成す山々の紅葉に感動し、秋の虫の音に人生のはかなさをかみしめ・・・。そして、移り行く山川草木を愛でながら、日本の「こころ」を育んできました。
私たち日本人は、自然のなかで生かされているという謙虚な「こころ」をもち、温厚で繊細な感性を育んできました。
いま、その「こころ」が崩れかけています。
 10年ほど前に、スタンフォード大学の教授が私の家に遊びに来ました。秋だったのですが、夕方ご飯を食べていると、網戸の向こうから虫の音が聞こえてきました。その時この教授は、「あのノイズは何だ」と言いました。この教授にとっては虫の音はノイズ、つまり雑音であったのです。
 その言葉を聞いた時、私は信州の田舎に住んでいたおばあちゃんが、秋になって虫の音が聞こえ、枯葉が舞い散り始めると「ああ、もう秋だねえ」と言って、目に涙を浮かべていたのを思い出しました。
~『国家の品格』藤原正彦著・新潮新書より~
『東都名所 道灌山虫聞之図』
『東都名所 道灌山虫聞之図』☆ 1841・42年(天保12・13年) 歌川広重 作
風流な虫聞きの名所、道潅山(現・荒川区西日暮里)の光景が描かれています。
『年中行事絵巻』
日本の「こころ」