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しょうゆは、昔から日本人にとってなくてはならない調味料。 そして今では、世界各国のホテルやレストラン、家庭の食卓でも、 広く用いられている時代となりました。

これほど日本人の食生活に密着し、また広く世界に普及した理由は、やはりしょうゆの持つ「おいしさ」にあるでしょう。
では、 そのおいしさとは一体どのようなものなのでしょうか。

おいしさというのは五感で感じる総合的な感覚で、置かれた環境や心理状態、また個人差によってもその感じ方は大きく変わってきます。 では、味覚、嗅覚、視覚に関係する「味」「香り」「色」についてお話してみましょう。

生理学的には五つの基本味があるといわれています。それは甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つ。
(他に辛味、渋味、えぐ味などもありますがそれらは現在、味覚に熱感、痛感、圧感、触感、収縮感などが加わったものとされています。)
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しょうゆ味のすごいところは、その五つの基本味が、渾然一体になっている、ということなのです。では、その基本の五味、それぞれについて説明します。(特に指定のないものは、こいくちしょうゆを念頭において、お話しています。)

しょうゆにはおよそ15種類に及ぶ糖分が3~5%含まれています。 なかでもブドウ糖が最も多く含まれています。
他にグリセリンを初めとする糖アルコールや、甘味をもつグリシンといったアミノ酸なども甘味の醸成に役立っているんですよ。

酸味とおいしさには、実は深い関係があるのです。最もおいしさを感じるのは、弱酸性(pH4~5)と言われています。しょうゆはpH4.7~5.0くらいの弱酸性。そういった意味では、うま味が最も活きる域内なんですね。
しょうゆにおける酸味の主な成分は乳酸、酢酸、ピログルタミン酸、コハク酸、クエン酸などの有機酸。なかでも塩味の角を取り、まろやかにする乳酸が0.5~2.0%と最も多く含まれ、それがしょうゆの味をよりうま味のあるものにしています。
ちなみにpH(ペーハー)とは、水素イオン濃度指数のことで、溶液中の水素イオン濃度を表します。pHが0~7の場合は酸性、7~14の場合はアルカリ性を表し、概して食べ物はpHが酸性に寄っているとき(およそpH5以下)においしく感じます。

しょうゆの塩分は約16%です。そう聞くと「かなり塩っ辛いんじゃないか?」って思うでしょう? それが、そうでもないのです。なぜかというと、アミノ酸や乳酸を初めとした各種成分が、発酵作用なども手伝って、味をまろやかにしているからなのです。
海水の塩分はおよそ3.5%。しょうゆの塩分濃度は海水の約5倍です。しかし同じ濃度の塩水と比較すると、塩辛く感じる度合いがはるかに低いんです。ただ、健康の面から「もっと塩分を下げるべきだ」という声もありますが、しょうゆの塩分を下げるために、あまりに低い塩分濃度にしてしまうと、理想的な発酵がおこなわれず、おいしい味と香りが生まれないのも、また事実です。
塩分が気になる方は使う量を加減したり、用途に応じて減塩しょうゆなどをうまく使い分けてみましょう。しょうゆのおいしさと香りの特性を活かし、ご自分の生活スタイルにあった使い方をしてみてはいかがでしょう。

苦味成分としては、苦味アミノ酸やペプチド類がわずかに含まれていますが、塩味や酸味でマスキング(覆いかくす)され、苦さというよりは、むしろしょうゆの「コク」として感じられます。

原料の大豆、小麦に含まれるタンパク質が麹菌の酵素群 (プロティナーゼ、ペプチダーゼ、グルタミナーゼなど) によって分解され生成する、約20種類のアミノ酸が、しょうゆのうま味を作り出す素になっています。
しょうゆのなかのアミノ酸には、グルタミン酸、グリシン、リジン、アラニン、アスパラギン酸などが含まれ、なかでもグルタミン酸が最も多く含まれています。そのグルタミン酸を初めとして、多くのアミノ酸類は窒素化合物ですが、窒素はうまさの指標!
窒素の含有量が多いほど、うま味成分の多いしょうゆということになります。JASでは、しょうゆの全種類に窒素分(全窒素分と表記)と、色度についての規格値が設定されているので、それによってしょうゆの等級と品質を知ることができます。
しょうゆの香りは、現在確認されている成分だけも約300種類!その代表的なものは、HEMFというフラノン化合物で、本醸造しょうゆの香りの主成分です。

他に果物や花の香りの主成分であるエステルやカルボニル化合物群などが含まれています。つまり、リンゴやモモ、パイナップルなどの果物や、バラ、ヒヤシンスなど花の香りの主成分が、しょうゆの香りを構成しているというわけです。

また、ウィスキーやハム・ソーセージ、コーヒーなどの香気成分(フェノール化合物類など)も含まれています。果物、花、コーヒーと、香り高い成分がバランスよく配合されているのが、しょうゆなのです。

しょうゆの香りは、原料である大豆や小麦が醸造されている間に生まれます。
小麦の主成分はでんぷん。このでんぷんが諸味(もろみ)の中でブドウ糖に変化するとき、しょうゆに甘味を加えるとともに、発酵過程を経てアルコールとなります。大豆はタンパク質が分解されてアミノ酸に変わり、さらに酵母によって各種アルコールに変化していきます。また同時に、エステルや揮発性フェノール類などの香気成分を生成し、しょうゆ特有の香りをもたらします。

香りはしょうゆ醸造の過程で働く微生物や、各種成分の結合によって醸し出されるため、香りの評価はそのまま、微生物による発酵は適正であったか、製麹(せいきく:しょうゆ麹づくりのことです)・仕込みの管理は適切であったかという、醸造の良否を判断する目安にもなります。

そのため、専門の検査員が絶えず厳正な官能評価(人の感覚によって品質を評価する方法です。)を実施しています。
少々、難しい話になってしまいましたが、しょうゆは醸造過程で、それだけ繊細な変化を遂げているために、他にない香りを生み出すわけです。
しょうゆの色というと、一般に黒っぽいイメージがありませんか? 新鮮な濃口しょうゆの場合は、むしろ鮮やかな赤色に近い色なんですよ。
多くの専門家はしょうゆの色を、「赤褐色」と表現するのを好みますが、褐色と呼んでしまったら、茶色やこげ茶色のイメージが強調されてしまいますよね。しかし、実際にガラス製のシャーレ(皿)にしょうゆを入れ、底から光を当ててみると、しょうゆの色は一般的な印象以上に赤い色をしています。

開栓したばかりのしょうゆをガラス皿に入れ、ご自宅でも試してみてください。しょうゆの色を「赤褐色」ではなく、 「しょうゆレッド」 と呼びたくなるような、美しい色が浮かび上がってきますよ。
この「しょうゆレッド」ですが、色の生成に重要な役割を果たしていると考えられているのは、アミノ・カルボニル反応。つまり、しょうゆの発酵熟成中、もしくは火入れの段階で、原料に由来するアミノ酸(グルタミン酸やアスパラギン酸など)と糖(ブドウ糖やガラクトースなど)が化学反応を起こし、メラノイジンという褐色の色素を生成することに起因します。

古いしょうゆの色が、全体的に黒ずんできてしまうのは、空気中の酸素にふれて酸化褐変反応を起こすことが原因です。栓を開けたら、なるべく新鮮でおいしい、美しいしょうゆレッドのうちに、使いきるようにしましょう!
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