2011年3月7日

News Release No.11024

キッコーマン、しょうゆづくりに欠かせない麹菌「アスペルギルス・ソーヤ」のゲノム解析に成功!

~3月25日から開催される日本農芸化学会2011年度大会で発表~

キッコーマン株式会社(本社:千葉県野田市)は、野田産業科学研究所、東京大学、東京工業大学と共同で、麹菌「アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)」のゲノム(全遺伝情報)解析に世界で初めて成功しました。
3月25日から京都女子大学で開催される日本農芸化学会2011年度大会で発表します。

「アスペルギルス・ソーヤ」は「アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)」(*1)と並ぶ日本を代表する麹菌の一種です。これまでしょうゆや味噌などの醸造現場からしか見出されておらず、進化的にも遺伝子資源の面からも世界的に関心がもたれています。
今回、「アスペルギルス・ソーヤ」のゲノムを次世代シークエンサー(*2)を用いて解読し、約3,900万塩基対のドラフト配列(*3)を決定しました。今後、「アスペルギルス・オリゼ」との比較など、さらに詳細なゲノム解析を進めてまいります。

今回ゲノム解析した「アスペルギルス・ソーヤ」は「アスペルギルス・オリゼ」と比べるとタンパク質を分解する能力が高く、しょうゆ・味噌など大豆を原料とする醸造食品の製造に主に利用されている麹菌です。タンパク質は分解されるとアミノ酸やペプチド(*4)になります。アミノ酸は食品の味を作る成分のひとつで、おいしさの源となる成分です。最近では健康、美容、医療などの分野へもアミノ酸の利用範囲が広がっています。またペプチドには血圧上昇抑制作用、抗酸化作用、抗菌作用などを持つものがあり、現在、盛んに研究が行われています。

麹菌「アスペルギルス・ソーヤ」のゲノムを解析することでタンパク質やペプチドを分解する多数の酵素に関する情報を得ることができます。これらの情報を元にしてタンパク質やペプチドを分解する酵素を多量に作るように麹菌を改良することで、しょうゆの生産効率をあげたり、よりおいしい食品や健康機能性ペプチドを含む食品を製造できるようになるなどの成果が期待されます。

キッコーマン株式会社では、今後、麹菌のゲノム解析の成果を利用して、よりおいしく、より健康に良い食品を提供していけるよう、研究を続けてまいります。

  • (*1) アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae):
    清酒・しょうゆ・味噌などの醸造に使用されている麹菌。2005年に日本の産官学連携による研究チームによってゲノム解析が完了しており、キッコーマンもこの研究チーム「麹菌ゲノム解析コンソーシアム」に参加し、解析に協力した。
  • (*2) 次世代シークエンサー:
    DNAの塩基配列を高速かつ安価に解読する新型シークエンサーの代名詞。従来型シークエンサーの数千倍の解読スピードをもつ。
  • (*3) ドラフト配列:
    ゲノムの95%以上を高精度に解読したもので、完成配列の一段階前の配列を言う。迅速に全体像を知ることができ、データベースとして利用可能であるため、多くのドラフト配列が公的データベースに公開されている。
  • (*4) ペプチド:
    アミノ酸が2個から数十個結合したもの。一般に100個以上結合したものをタンパク質という。

以上