醤油仲間 / エッセイ

しょうゆ愛は、とまらない

安住 紳一郎

振り返れば、生まれながらにして「しょうゆ好き」かもしれません。
幼い頃から、家族に「しょうゆをかけすぎないように」と言われてばかり。
山形に住む祖母が納豆餅を作ってくれて、それが大好物でした。

その後、アナウンサーとしてロケで全国へ出向くようになりました。
ある時、九州の取材先で、
使うしょうゆによって同じレシピでも味が全然違うことに気付いたんです。
各地の料理の味をリードしているのはその土地の「しょうゆ」なんだと。
そこから取材の度、各地のしょうゆを手に入れるようになり、
2018年からは「しょうゆ大使」になりました。

かれこれもう20年ぐらい、しょうゆのラベルを集めています。
ワイン好きの方が付ける「ワインテイスティングノート」を見た時に、
これってしょうゆでもできるんじゃないかと思ったわけです。
いついつ誰と飲んだというようなことが書き込めるのですが、
私の場合は「type:本醸造」って書いちゃったりして。
そのノートを眺めているだけで楽しい。
始めた当初は、国内に約1,500のメーカーさんがあったのですが、
今では1,100くらいまでになっているとのこと、
マイペースな私でも、そろそろ達成の日が近づいています。

地方に行くと、どの地域でも誇らしげに
「うちのしょうゆを使ってみてくれ!」って自慢してくれるんですよね。
地域の文化に根差していて、獲れる魚の種類や育まれている食材、食文化のみならず、
歴史や気候などその土地の風土と繋がっていて、生活になくてはならないものなんです。
取材をしている中で、作り手の心意気やプライドに触れられるのも嬉しくて。
作っているものは違えど、私たちも番組の「作り手」で、
現場をまかされている立場ですから、“作り手の気持ち”に触れられる瞬間にビビッときます。
しょうゆが嫌いな方ってなかなかいないですし、日常にいつもありますよね。
万人受けしながらも個性を出す、本職を全うしながらも、世を見てトライする。
不思議と局アナの立場とも共通点を見出せそうです。
「昔から変わらない味」も、気付かないほど微細な変化を繰り返して、
世を捉え、日常の暮らしを支えている。
そうした熱き心意気を感じる世界だからこそ、これからもしょうゆから目が離せません。

しょうゆテイスティングノート

「ワインテイスティングノート」ならぬ、「しょうゆテイスティングノート」。ロケで出向いた土地でしょうゆを手に入れて、味や香り、その土地の話や率直な感想を書き込んでいく。見返す時間も、また楽しい。

安住 紳一郎(あずみ しんいちろう)

1973年北海道帯広市出身。明治大学文学部を卒業後、TBSに入社。『THE TIME,』の総合司会、『情報7daysニュースキャスター』、ラジオ『安住紳一郎の日曜天国』などを担当。2018年より日本醤油協会「しょうゆ大使」。