キッコーマン食文化講座

みその話 ~日本の食生活を支える発酵食品~

日程 2011年4月22日
場所 野田本社
講師 舘博先生
主催 キッコーマン国際食文化研究センター

味噌の起源は醤(ひしお)とされており、仏教の伝来と共に我国に伝わり、未醤(みしょう)を経て我国独自の味噌が出来上がったと考えられている。因みに、味噌の桶に溜まった汁である溜りが液体調味料として使われる様になり、醤油として発展して行くのである。当初、味噌は貴族や僧侶の貴重な食品で卓上の調味料として使われていたものが、鎌倉時代に漉し味噌が考案され、水に溶ける様になったことから味噌汁として使われる様になり、室町時代からは庶民にも普及した。戦国時代には、味噌はその栄養価から陣中食として用いられる様になり、伊達政宗は1645年に「御塩噌蔵(おえんそぐら)」という日本最古の味噌工場を建てたとされている。

味噌は醤油と違い、発酵管理が難しく無く、圧搾工程も無くて比較的簡単に造れることから、自家醸造されることが多い。今でも地方に行くと、糀屋といって麹を販売している店も多く残っている。また味噌には、醤油と違って日本農林規格が無く、様々なタイプの味噌が市販されている。味噌の分類には、米味噌、麦味噌、豆味噌など原料による分類、甘味噌、甘口味噌、辛口味噌など味による分類、白味噌、淡色味噌、赤味噌など色による分類、信州味噌、仙台味噌、越後味噌、讃岐味噌など産地による分類などがある。

味噌は醤油と違い、水分の少ない固体状態で発酵を行なうため、麹菌の酵素による分解が不完全であり、醤油に比べて多くの分解中間生成物を含んでいる。タンパク質の分解では、アミノ酸まで分解される途中のペプチド類を多く含んでいる。このペプチド類が多くの機能性を持っていると考えられる。また味噌は、圧搾工程を持たない事から、原料成分の分解物の殆ど全てが製品に移行している。味噌は、機能性に富む健康食品としてのイメージが定着している。

味噌は我国の伝統的な発酵食品であるが、食生活の変化に伴いその生産量は年々減少傾向にある。日本人にとって味噌汁を飲むような食事が、栄養バランスが取れていて健康に良いと考えている。改めて、我々の食文化の素晴らしさを多くの人々に認識して欲しい。