キッコーマン食文化講座

酒の話 ~日本の食生活を支える発酵食品~

日程 2011年6月24日
場所 野田本社
講師 舘博先生
主催 キッコーマン国際食文化研究センター

世界には多くの酒が存在するが、その国の文化により発達してきている。その製造法によって醸造酒、蒸留酒、混成酒に大別され、また発酵方法により単発酵酒と複発酵酒に分類される。我国の清酒は、醸造酒の中の複発酵酒であるが、糖化と発酵が同時に進行する並行複発酵酒で、醸造酒の中でもアルコールが20%にも達する世界でも類を見ない特徴的な酒である。

我国においては、酒類は課税の対象物で、酒税法で管理されている。酒税法では清酒は、「アルコール分が22度未満の酒類で、米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの」と最初に定義されている。また、清酒の種類としては、米、米こうじ及び水を原料として発酵させた純米酒と、アルコールなどを添加したアルコール添加酒に分類されている。その他、吟醸酒、大吟醸酒、本醸造酒などの特別名称酒についても規定されている。

清酒醸造の醸造方法とその管理方法は世界でも類を見ないほど複雑にして、精巧であるが、この醸造技術を継承してきたのが杜氏制度である。杜氏とは酒造りをする酒蔵の長で、酒造りに責任を持つだけではなく、蔵人を統括し、酒造現場の管理を行っている。南部杜氏(岩手)が最も有名であるが、津軽杜氏(青森)、山内杜氏(秋田)、越後杜氏(新潟)、但馬杜氏(兵庫)など全国各地出身の杜氏がいる。現在では、杜氏のなり手不足と高齢化により、従業員を杜氏に育てている酒蔵も増えてきている。

清酒醸造の基本は、「一麹、二酛、三造り」と言われている。一番大切な事は、原料分解に必要な酵素力価の高い麹を造る事で、次に醪を発酵させる酵母をしっかり培養した酒母を造り、旺盛な酵母による発酵した醪の発酵管理を行うことにより、良い清酒が出来るのである。

清酒はエチルアルコールを含む致酔飲料で、酔いは脳神経細胞の麻痺等によって引き起こされる。アルコール摂取に伴って、脳の機能低下が引き起こされ、陽気になったり多弁なったりするが、呑みすぎると言語障害や歩行障害になり、さらには意識不明や呼吸困難など生命の危険にまで及ぶ。飲酒量と酔いとの関係を理解した上で、楽しくお酒を飲んで欲しい。

昨今の健康志向から和食が見直されているが、日本人にとって長い食文化から生まれて来た、野菜を多く摂る和食が健康に良いと考えている。その和食に合う清酒を飲むことにより、楽しくて美味しい食生活を送って頂き、長寿国日本を維持して欲しいと思っている。