キッコーマン食文化講座

トマトの歴史と品種育成の世界 ~畑に行こう!トマトを育てよう~

日程 2012年4月26日
場所 野田本社
講師 高田式久先生
主催 キッコーマン国際食文化研究センター

トマトの起源は現在のペルー、コロンビア、エクアドル、ボリビアに亘るアンデス地域です。それが実際にヨーロッパへ持ち込まれたトマトはメキシコからです。紀元前1600年頃、古代メキシコと古代ペルーは交流があり、その頃トマトが伝わったと推定されています。アンデス地域では栽培対象ではなく野生植物として自生していましたが、メキシコで1000年単位の時間をかけ栽培に適するトマトが選抜されました。新大陸発見後、スペイン人コルテスがトマトをスペインへ持ってきたのが1521年です。当時ジャガイモ、トウモロコシ、ペッパーなども持ち帰り、今日の重要な食糧となっています。スペイン人はメキシコでトマトがトウガラシと一緒にすりつぶされた、サルサソースのような調味料として使われていた場面を見ており、トマトの使い方もスペインへ持ち帰りました。その後、約500年に満たない期間で、トマトは世界中で栽培され食生活に根付きました。

17世紀には食材として頭角を現し、1692年にはイタリアナポリでトマト料理が現れています。1700年までにイギリスで大玉のトマト7品種が開発され、スープに利用され始めました。一方フランス、パリにスペイン出身の兄弟がレストランを開き、トマトを使った料理が現れます。その直後にフランス革命が起き、パリに集結した民衆がレストランの料理を知り、トマトを料理に使うことが普及し始めたと記録されています。

19世紀は、トマトが食材として世界へ広がった時期です。もっとも重要な出来事は、アメリカで1838年にトマト缶詰の製造技術が完成したことです。この技術でトマトを一年中利用することが可能になり、栽培が盛んになります。1863年の記録ではトマト品種23品種が登録され、1876年にはハインツがトマトケチャップを発売し、トマト調味料を利用することができるようになりました。1886年ころから、品種改良が急速に増え、トマトが重要な食材としての地位をつかみ始めています。まさにこの時期にデルモンテブランドが高級食品のブランドとして誕生し、世界のブランドに成長する一歩を踏み出すことになります。

1871年、米国農務長官ケプロンが青山の官園で野菜類を栽培、1877年米国ブルックス氏が北海道でトマトを栽培し始めました。1899年、蟹江一太郎がトマトソースの開発に成功し、一般のトマト製品ができ日本におけるトマト活用の幕が開けました。

世界で最も大量に栽培されている野菜はトマトで、2010年FAO統計では145.8百万トンです。世界では中国が41.8百万トンでNO.1です。国内では熊本県が生産量No.1で、茨城県、北海道、千葉県と続きます。

世界には、現在種々のトマト品種、例えばローマ種、サンマルツァーノ種、クーデブ―フ種、ビーフステーク種など様々です。品種とは、同じ動植物でも遺伝子が少し違うだけで異なる特性を出すものを指します。有益な特性をもつ品種を作り出すことを育種と呼びます。おいしさや栄養価や収量の改良など、育種は消費者、生産者、流通業者の皆さんへメリットを生み、世界中で、植物、動物の品種育成が進んでいます。

品種を作るには膨大な交配作業と選抜時間がかかり、更に圃場での商業的な栽培適合性判定にも時間がかかります。トマトでは開発開始してから選別を経て栽培までたどり着くには凡そ1品種10年はかかります。デルモンテでは、美味しさ、収量、耐病性などの違う品種約8000種を保有し、有益な品種の選抜を継続しています。

トマトに導入した特性の事例として、果実の色や大きさ、リコピン含量の増加、ジョイントレス特性、収穫量などがあります。一般的な生食用トマトは有支柱栽培です。加工用トマトは支柱を立てずに栽培しますが、これも主枝が一定以上伸びない特性を取りこんだ選抜品種です。このような種々の特性を持つトマト品種が世界中で開発されています。

家庭菜園で、トマトを栽培する時のポイントは、品種(苗)選び、土作り、環境作りと、こまめな栽培管理です。家庭では農薬を使いたくないというニーズに合わせ、デルモンテでは病気になりにくくするために苗に独自開発したCMVワクチン処理をしています。