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過去の展示

四季を巡る江戸庶民の行事と暮らし
秋 中秋の名月
秋 中秋の名月 「明月」は四季を通じて見ることが出来るが、「名月」は8月15日の一夜のみで、十五夜の満月を「中秋の名月」と稱し、観賞するのが「月見」であると古書にある。
江戸市中の風俗や日常の雑事を見聞し記録した『守貞謾稿』(嘉永6年・1853年)に江戸の月見は「机上の中央に団子を盛った三方を置き、花瓶に芒を差して供える」とあり、米の粉で作る団子は何も入っていない素のもので、そのほかに柿、栗、枝豆、里芋などを供物にする。
『東都歳時記』(天保9年・1838年)に「麻布六本木芋洗坂に青物屋があり、八月十五夜の前に市が立ち、芋の商い多く、芋洗坂と呼ぶ」とある。中秋の名月は一名「芋名月」とも呼ばれるが、十五夜前後は芋の収穫期と重なることから、感謝祭の意味があるのではないかと推察されている。名月観賞の風習は中国から伝わった。中国では唐の時代には行われていたらしいが、始まった時期は不明である。さらに月を祭ることは中国では元、明の頃、わが国では室町時代になってかららしい。
「名月や池をめぐりて夜もすがら」は芭蕉の名句として知られているが、江戸の人々はどこで月見をしていたのだろう。隅田川、綾瀬、深川洲崎、立川(堅川)、小奈木川(小名木川)、鉄砲洲、芝浦、高輪、品川、不忍池などが挙げられているが、ほとんどが水辺近くの場所であり、当時は舟を仕立てて月見をすることもあった。
月見団子
月見団子/青物売
中秋の名月