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過去の展示

四季を巡る江戸庶民の行事と暮らし
冬 歌舞伎の顔見世
冬 歌舞伎の顔見世 旧暦11月1日は歌舞伎の「顔見世」の初日で、一般の正月に当たる。芝居の関係者は初日から三日間はすべて裃、羽織袴を着用し、雑煮で祝った。「芝居」の語源はもと芝生の上の見物席を指したものという。大芝居、小芝居など各種の芝居があったが中村座、市村座、森田座が「江戸三座」として有名であった。
江戸では一日3千両の商いがあったといい、芝居、吉原、魚河岸の3ヶ所で千両づつ、〆て3千両となる。また、歌舞伎は江戸の文化の源で文学、絵画、音楽など各方面に大きな影響を及ぼし、いわゆる歌舞伎趣味は江戸庶民の娯楽であり、教養であった。
芝居の興業時間は明け六ツ(午前6時)から暮七ツ半(午後5時)までと一日掛りで、食べものの手当ても必要となる。芝居小屋の附近には木戸札や料理などの手配をする芝居茶屋があり、その茶屋を通してくる桟敷の客は大名の留守居役、出入りの商人、宿下りの御殿女中などで、まず口取りと酒を出し、昼になると幕の内弁当に口肴、午後には鮨と水菓子というのが決まりであった。中位の土間の客には菓子、弁当、鮨が決まりで、それぞれの頭文字をとって「かべすの見物」といった。
現今、俵型の型押しの飯の入った弁当を幕の内弁当と稱しているが、「江戸芝居見物の中食には焼き握りが通例で、蒟蒻、焼豆腐、芋、蒲鉾、玉子焼当が入る、江戸芳町の万久という店が販売している、名付けて幕の内という」(『守貞謾稿』)とある。
大芝居繁栄之図
幕の内弁当/大芝居繁栄之図/携帯用の提重
歌舞伎の顔見世