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過去の展示

四季を巡る江戸庶民の行事と暮らし
冬 酉の市
冬 酉の市 11月の酉の日を祭日とする大鳥(鷲神社)の祭りである。「一の酉」「二の酉」とあり、「一の酉」の日が重んじられ、年によっては「三の酉」まであり、その年は火事や災害が多いと云い伝えられている。
『江戸砂子』(享保17年・1732年)で「鷲大明神」とあるが、3年後に出た『続江戸砂子』には「鶏大明神、花又村(現足立区花畑)にあり、毎年十一月酉の日市立つ。三つある時は三日ともに市なり、初めの酉の日を専らにす。近在より集まりて繁盛の市なり、当社神事の心なり。当所の者鳥類食すことはならず。鶏を食すれば即死すという」とある。祭の当日、近郷近在の農民は鶏を奉納し、翌日浅草寺の当前に放つ仕来りであったという。江戸からも相当の参詣人が押し寄せたが、その大きな理由は辻賭博で、一年の運を賭けての神頼みだったが、安永2年(1773年)11月に博打が禁じられてからは、浅草の鷲神社に賑わいが移っていった。江戸市中にはそのほか下谷、千住、鳥越、巣鴨、四谷、新宿、深川などの諸所にも神社があるがすべて花又村の鷲神社の分社であるという。
ちなみに神社の御輿の天辺の飾りはおおむね鳳凰だが、今も花畑の御輿には鷲がついている。当初、市の売り物は熊手が主であったが、参詣人の多くは縁起を担ぐ商売人が多く、酉は「取り込む」、熊手は「掻き込む」、八ツ頭は「人の頭となる」などといい、蒸した芋をおかめ笹に通し、海山川の産物、餅の類、竹製品、金物類と共に売られた。熊手は次第に派手になり、お福の面、七福神、宝船、枡、千両箱、当り矢などが飾り付けられ、熊手の簪も考案された。
熊手/鶏の奉納
八ツ頭/熊手/鶏の奉納
酉の市