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過去の展示

四季を巡る江戸庶民の行事と暮らし
春 初鰹
春 初鰹 江戸庶民の初物食いは飛び抜けていた。初物は走り物ともいい、「初物を食うと七十五日長生きする」との信条のもとに「茄子」「胡瓜」「初鰹」「白魚」などに熱狂した。 なかでもの職人たちの「宵越しの銭は持たぬ」という気風は、とりわけ珍しいもの、うまいものに惜しみなく浪費する風潮となり、初物喰いに走ることになったのだろう。 初物の代表は初鰹にとどめをさす。値が高くなければ、売りも買いもせぬという庶民の見栄の突っ張り合いのなせること。
「品川沖へ予め舟を出し置き、三浦三崎の方より鰹魚積みたる押送船を見掛け次第、漕寄せて、金壱両を投げ込めば、舟子は合点して、鰹魚一尾を出すを得て、櫓を飛ばして帰り来る、是を名付て真の初鰹喰と云へり」(『五月雨草紙』―慶応4年・1868年)とあるような次第。
初鰹の出始めは4月初旬が相場だが、文化9年(1812年)3月25日に魚河岸へ入った鰹は、数は17本、そのうち6本が将軍家献上、3本が料理屋の八百善、8本が市内の魚屋に売れそのうち1本を三代目中村歌右衛門が3両で買っている。今なら10万円位になろうか。山口素堂の「目に青葉、山ほととぎす初鰹」の名句は誰でも知っているが、当時、鰹はどうして食べていたのだろう。川柳にこんなのがある。

 梅に鶯かつほにはからしなり(天元・仁)
 すり鉢を賑やかに摺る初鰹(明四・天)

鰹の刺身にはからし味噌やからし酢をつけて食べていたことがわかる。
鰹刺身/「初時易」
鰹刺身/「初時易」
初鰹