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過去の展示

四季を巡る江戸庶民の行事と暮らし
夏 端午の節句
夏 端午の節句 5月5日は端午の節句である。家々では外に幟を立て、軒には菖蒲を掛け、内には冑や武者人形を飾る。「昔は端午のぼりの頭に種々のものを付けたり、のぼりも今世のように一対にして立つるはなく、幾本立つるも一本づつさまざまなり」(『嬉遊笑覧』―文政13年・1830年)。幟絵や武者人形に鐘馗が扱われるのは、唐の玄宗皇帝が病に伏したとき、夢に鐘馗が現れて悪鬼を退治し、平癒したとの故事による。端午の節句はもともと中国から伝わった疫病、災厄を祓う行事だが、邪気を断つ「菖蒲」は「尚武」に通じ、鐘馗の姿形から武張った風となり、いかにも男子の節句らしい。
山東京伝の『四季の交加』(寛政10年・1798年)に「端午に至れば人家みな粽、柏餅をつくり、菖蒲刀、上り冑を飾る。軒に葺く菖蒲は風に戦いで幟の立波より生いずるが如く、門に立つる毛槍はのうれん(のれん)の松林よりあらはれて宿人の行列に似たり」とあるが、粽については『嬉遊笑覧』に「チマキは種々に製すれども、世の常のは角黍の名似合はず、越後などにてつくる篠チマキ、また長崎にて作る竹の皮チマキ、三角なれどその形がなくなり」とあり、古くは米を包んで蒸していたのが、やがて餅や粉となった。柏餅は「三都ともその製は、米の粉を練りて団形、扁平となし二つ折となし、間に砂糖入赤豆餡を挟み、柏葉大なるは一枚を以て包み蒸す。江戸にては砂糖入味噌をも餡に代え交ぜるなり。赤豆餡には柏葉表を出し、味噌には裏を出して標とす」(『守貞謾稿』―嘉永6年・1853年)にとある。
柏餅/柏餅を作る
柏餅/柏餅を作る
端午の節句