「日本No.1バーテンダー 本直しを語る」
江戸時代には、女性やお酒が得意ではない人にも親しまれた『本直し』。米から引き出された繊細な甘さはさまざまな素材との相性がよく、カクテルベースとして楽しむことができます。今回は、西麻布にある会員制Bar「Cocktailante Oboro」のオーナー山川さんに、「万上 流山本直し」(以下、流山本直し)の魅力と、ご自宅でも楽しめるカクテルのレシピをお伺いしました。
僕がカクテルをつくる上で大切にしているのは、素材を大事にすることです。出来る限り手を加えず、美味しさを最大限に引き立たせる組み合わせを考えます。引き算のようにできるだけ余計なものは加えず、素材の良い部分を引き出せるか。そのために素材の魅力を見極め適切な手を加えるのが技術だと思っています。元々料理をやっていて、そこで素材を使うということを学んで体に染みついた感覚や技術を、バーの方に持ってきているような感じですね。
あとは、全国の農家さんや生産者さんのところを訪れて、話を直に聞くということも大事にしています。果物であれば、その土地の土の香りとか木が生えている環境とか、農家の方と時間を共にすることで、見えてくるものがあるんですね。素材のバックグラウンドを把握すると、カクテルのインスピレーションや方向性が見えてきます。例えばみかんひとつとっても、産地や栽培方法で同じ品種でも味が全然違ってきますから。
流山本直しを飲んでみて、まずは純粋にクオリティの高さに驚きました。雑味や引っ掛かりがなく、甘さがきれいに抜けていくようなバランス感。酒精の良さは、もうみりんの枠は飛び越えていると思うんですよね。
糖の質がすごく良いので、果物に含まれる果糖にも合う。どんな果物にも馴染むと思いますが、特に柑橘類とは好相性。甘さと酸味を活かし、風味を殺さず良いところを引き出してくれる存在です。今回作ったカクテルは、これからの季節ご家庭で手に取りやすいみかんを使いました。
水割りやロックでは甘さがやや重く感じられることがあるため、炭酸を加えて軽やかさを演出しました。さらに、みかんの爽やかな香りを引き立てることで、より飲みやすく。流山本直しの特徴である、繊細で柔らかな甘さを存分に楽しんでいただけるようなカクテルに仕上げました。後味が柔らかで甘みが抜けるように長く続くのは、流山本直しの糖が上質だからこそですね。
ミントなどのハーブやミルクとも良く合いますし、カクテルにすると飲みやすく、美味しいなと感じてもらえると思うので、流山本直しを手に取られたら、試していただきたいと思います。
僕はカクテルにしましたが、お酒という括りに縛られないで、自由に色々なものと組み合わせても楽しいんじゃないかなと思います。たとえば、バニラアイスの上にかけて食べるだけでも美味しいだろうし、ブルーチーズなどの上に蜂蜜の代わりとしてかけても良いと思います。ワインにも合いますし。単純に「美味しい!」と言えるかどうか。シンプルだけど、結局それがすべてなんじゃないかと。
自分が普段、生活して口に入れるものに対して、柔軟に、自由度高く使える器量が流山本直しには備わっていると思います。