キッコーマン食文化講座

しょうゆの話 ~日本の食生活を支える発酵食品~

日程 2011年2月23日
場所 野田本社
講師 舘博先生
主催 キッコーマン国際食文化研究センター

醤油は伝統的発酵調味料で、強い旨味のほか酸味、甘味を持った鹹味(塩辛味)調味料である。近年、醤油は海外でも非常に優れた調味料として認知されるようになり、その使用量は増加している。しかし、日本国内においては、輸出用醤油の海外工場での生産や食生活の変化から年々生産量は減少している。醤油は日本人にとって無くてはならない調味料であるが、あって当たり前の空気の様な存在で、醤油の原料が大豆と小麦であるという事や、その種類が5種類もあること等、醤油のことは余り知られていない。昨今、食育運動が展開され日本食が見直されていることから、醤油の価値は徐々に高まってくると思われるが、もっと醤油の素晴らしさを認知してもらいたい。

醸造とは、麹菌を穀物に生やした麹を使って伝統的な発酵食品を造ることであり、醸造物には味噌、醤油、清酒、焼酎、泡盛、食酢、味醂などがある。我国の気候風土から麹菌を使う技術が発達したと考えている。麹菌は、我国の豊かな食文化に貢献し、今後ますます産業的に重要な菌となることから、平成18年に日本醸造学会から「国菌」に認定された。醤油醸造においては、「一麹、ニ櫂、三火入れ」と言われる様に、一番大切なのは醤油麹造りとされている。

醤油には多くの機能性物質が含有されていることが明らかにされている。HEMFによる坑腫瘍性、ニコチアナミンによるACE阻害、褐色色素(メラノイジン)による抗酸化、しょうゆフラボンによる骨粗鬆症予防などがある。最近、醤油醸造過程において、小麦や大豆のアレルゲンが分解されて、醤油にはアレルゲンが存在しないことも明らかになってきた。また、醤油に含まれる多糖類がアレルギーを抑える効果や鉄分の吸収を促進する効果も見出されている。直接醤油とは関係ないが、醤油乳酸菌が免疫調節作用を有し、アレルギーを抑える働きを持つ事も認められている。

醤油は、麹菌、乳酸菌および酵母などの微生物の発酵作用により醸造されることから、多くの物質を含む複雑な調味料である。醤油については多くの研究があり、すでに研究し尽された感があるが、まだまだ、新しい機能や新しい知見の発見が秘められていると考えている。

醤油には、多くの機能性が有ることも明らかにされてきたが、醤油は調味料である事からその美味しさを評価して欲しいと思う。日本人にとって醤油を使う日本食が、健康に良いと考えている。