キッコーマン食文化講座

ぶどう栽培とワイン醸造 ~ワイン造りは農業?工業?~

日程 2012年1月27日
場所 野田本社
講師 竹内潔先生
主催 キッコーマン国際食文化研究センター

1. ワイン造りにおけるぶどう栽培の重要性

ワインの品質の7割はぶどうで決まる、と言われるが、多くの酒は①糖化②発酵(③蒸留)といった大きな物質変化を伴う工程があるが、ワインの場合は糖化工程がなく、発酵工程のみである。(他の酒に比べて加工度の低い酒)
⇒それゆえ、原料の特徴が製品にかなり直接的にワインの特徴に反映されてくるためである。

ワインの特徴(性格)に及ぼすファクターとしては、ぶどう品種、畑の地勢・土壌、毎年の気象、熟度、収穫方法、醸造方法などが直接的に影響してくる。高品質なワイン造りのためには栽培・醸造のセクショナリズムをとりはらった一体化した考えが必要。

ぶどう栽培に適した気候条件

温帯の果樹であるぶどうの栽培適地としては一般的には北緯30~50度、南緯30~40度のゾーンで、寒冷地の限界は無霜期間180日以上、無霜期間中の平均気温の合計は2800度以上などの要素がある。暑い地方では休眠⇒寒さによる休眠打破⇒発芽のサイクルが気候的にはうまく進まないことと、ぶどうの病虫害対策が課題である。

2. ぶどうの品種

ぶどうの分類(ヨーロッパ系、アメリカ系とは?)

ヨーロッパ系(Vitis vinifera 種)はワイン用だが、アメリカ系には生食用(Vitis labrusca 種および交雑種)と果実を利用しない台木用のぶどうがある。

  • 接ぎ木の歴史的役割と現在の役割

    フィロキセラ(ブドウネアブラムシ)の蔓延が接ぎ木の発祥だが、現在の主目的は、台木の選定による土壌適応性の向上と樹勢調整にある。

  • 代表的な赤ワイン用/白ワイン用品種について紹介
  • 育種(選抜育種、交配育種)について

    優良個体(クローン)選抜による既存品種の生産性向上と交配育種による栽培性の良い新品種育成。

3. 栽培管理・収穫方法

  • ぶどうの病虫害と防除

    代表的なカビ病(ほぼ世界共通)としてはベト病、灰色カビ病、ウドンコ病がある。害虫は世界共通なものは少ない。病虫害対策としては耕種的防除と化学的防除がある。

  • 栽培方法(棚栽培と垣根栽培)

    外国では垣根栽培、日本では棚栽培が多い。

  • 収量調節の方法

    安定した品質の維持には収量を制限する必要がある。収量調節の方法としては剪定と摘房(グリーン・ハーベスト)が代表的なものである。

  • 収穫に際しては醸造担当者との連携が非常に重要
  • 特殊な収穫方法としては貴腐、アイスワインというお天気次第の収穫方法もある。