キッコーマン食文化講座

トマトの加工方法と料理レシピ ~トマト加工品を上手に使おう!~

日程 2012年6月28日
場所 野田本社
講師 高田式久先生
主催 キッコーマン国際食文化研究センター

加熱調理は生食材の酵素たんぱく質の作用を止めることで生食材の美味しさを保持し、さらに消化をしやすくします。生トマトを砕いてそのままにしておきますと、①ビタミンCが減る、②香りが変化する、③酸味が高まる、④微生物が増え腐敗する、⑤酸化が進むなどの現象が進みます。調理は、これらのことを止め、豊かな食生活を作り上げています。

一般的なトマト製品の加工はまず、生トマトからジュースやピューレなどの1次素材にして、それらからトマトケチャップ、トマトソース、トマトペーストなどを作ります。

トマトの加工で一番注意することはトマトに含まれるペクチン質という成分の活かし方です。ペクチン質はジャムを作る時に使う市販ペクチンと類似の成分です。このペクチン質は粘度を出せる成分ですが、生トマトに含まれる分解酵素で細かく切られやすいので、ケチャップなどのような粘度の高い製品を作るには、この酵素の作用を止める必要があります。一方トマトジュースのようなさらっとしたジュースを作るには、このペクチンを細かくした方が良いのです。ご家庭では、ケチャップのような加工品を作りたい時は、生トマトを8分の1カット位に切り、直接鍋でできるだけ早く沸騰まで加熱し、加熱を十分行ってから裏ごしし種皮を除くとよいでしょう。一方ジュースを作るには、細かく砕きゆっくり加熱し裏ごしするとよいでしょう。この原理は家庭でも、工業的な場合でも同じです。

日本デルモンテは、生トマトの生産を全農各県本部と契約し、全農―JA-農家という連携した契約栽培によりトマトを生産しています。これは企業も農家も安定して生トマトを生産調達できる仕組みです。日本デルモンテはトマト品種、栽培方法、収穫方法など直接・間接的に農家の皆さんに情報を提供し、一緒に美味しいトマトを栽培しています。現在栽培している独自品種は、日本の高温多湿の中でも糖度やリコピンが高く、美味しいトマトを高収量採れるものです。岩手県、福島県、群馬県、長野県で栽培を行っています。

海外でも農家の皆さんとの連携は大切で、米国、中国、トルコ、イタリア、ポルトガル、チリなどの加工協力工場を通して品種選定、栽培指導、収穫、加工方法、品質管理まで全般に亘って指導を行っています。そのために国内外に日本デルモンテの技術者が適宜現地に赴き指導をしています。

海外からトマトペーストという濃縮物の形で輸入したものに関しては、二次加工を国内で行っています。その際、ペーストは高温短時間殺菌され、ただちに冷却され、無菌容器に詰められます。これは常温においても高品質を維持できる仕組みで、冷凍を使わずに保管できるため、エネルギー節約容器と位置付けています。

還元トマトジュース作る原料の一部は海外から輸入されていますが、トマトジュースは何も添加できず、トマトからしか作れない製品ですので、ごまかしが利きません。そのため高品質を作り出すために、生原料から商品までの工程で独自で開発してきた加工技術を使いこなしています。その一例は、①デリシャスレッド品種の活用、②ジュースの酵素活用独自搾汁法、③ジュース専用のトマトソフトスクィーズ法、④低温濃縮法、⑤高温短時間殺菌技術、⑥ブレンド技術と、⑦フレッシュアロマ製法です。フレッシュアロマ製法は、酸素を極力除き風味を劣化させない特許製法で、風味・色調の改善、ビタミンCの維持効果が高い製法です。

デルモンテでは、新たに紙容器のカットトマト、荒ごしトマト、完熟トマトを導入しました。これらは持続可能な木材資源を使った容器で、エコ容器として地球環境に配慮した製品です。また、有機製品、自社製ビネガーなど素材にこだわりを持っています。

レシピはいろいろと入手できますが、インターネット上で利用できる①キッコーマンホームクッキング、②トマト工業会レシピ集、③クックパッドなど多彩です。キッコーマンホームクッキングでトマトをキ―ワードで検索しますと、約900件のレシピが検索でき、それぞれのレシピの材料、作り方、カロリー数など分かりやすくご覧になれます。