豚の角煮

脂をしっかり抜いてから
味をしみ込ませます

じっくり時間をかけて、味のしみ込んだ、やわらかな豚の角煮をつくります。角煮づくりは「肉の脂を抜く」前半と「肉に味を入れる」後半に分けられます。また、豚のかたまり肉の繊維がほぐれるまでには、約2時間の加熱が必要なので、前半の「ゆで」と後半の「煮込み」で各1時間ほど、じっくり肉に熱を加えていきます。

前半で肉から脂を出して抜く理由は、味のなじみにくい脂身の部分に十分味をしみ込ませるためです。焼く、ゆでる、この2工程で行います。ゆでるときに大事なのは、米を加えること。これでゆで汁が粘性をもち、熱の当たりがマイルドになって、肉がやわらかくなります。また、米のとろみにはくさみや脂肪分を吸着してくれる役割もあります。前半のこの1時間のゆでる工程で、加熱で溶け出す脂の7~8割が肉の外に溶け出します。

後半で大事なのは、煮込む前に調味料を煮絡めておくことです。糖度の高い合わせ調味料は浸透性が高く、味がよくしみ込みます。しっかりと煮絡めると砂糖を多く含んだ調味料は香ばしく焦げ色がついて、キャラメリゼされたようになり、複雑な味わいにもなるのです。また、砂糖は肉の繊維に入り込んで保水性を高めるので、赤身の部分もやわらかくなります。そして、沸点が低い酒をたっぷり加えることで、煮汁が100℃にならず、ほどよい温度で長く煮込むことができます。

豚の角煮をつくるときは、ぜひ1kgくらい仕込んでください。大量に煮込むことで、煮汁の温度がゆっくり上がり、また冷ますときにもゆっくりと温度が下がります。これでシンプルな調味料でも味わい深く、やわからく仕上がります。

  • ●前半で肉の脂を抜く
  • ●後半で肉に味を入れる
  • ●豚肉1kg以上で大量に調理をする

この3つのポイントを押さえながら、調理していきましょう。それぞれの工程がなぜ必要なのか、理由も解説していきます。

材料・6人分

  • 豚バラ肉(かたまり)…2~3本分(900~1200g)
  • 米…大さじ5
  • 水…2と1/2カップ
  • にんにく…2かけ
  • しょうが…2かけ
  • 〈A〉
  • キッコーマン 特選 丸大豆しょうゆ…1/3カップ
  • マンジョウ 国産米こだわり仕込み 料理の清酒…1/2カップ
  • 砂糖…大さじ6~7

つくり方

1. 肉を常温に置く

豚肉は常温で30分置き、表面の水分をふき取る。

赤身の部分から出てくる水分をふき取るひと手間も大事です

調理の前半は肉に味を入れるために脂を抜いていく作業です。常温に戻し、脂が溶け出しやすい状態にしておきます。また、肉は赤身の部分に水分が多く、置いておくと自重によって水分が表面に出てきます。この水分が残っていると、くさみの原因にもなり、焼くときに温度が上がりにくくなるうえ、焼いたときに脂がパチパチと跳ねてしまうので、ていねいにふき取っておきます。

2. 肉を焼く

フライパンを熱し、脂身の面を2分、脂身のある側面を1分ずつ転がして、焼く。

焼いて脂を溶け出させるのは短時間で

大きなかたまりのまま肉を入れ、脂の面を焼いて脂を出しながら、こげ色をつけ、香ばしさを引き出していきます。ここでは赤身の面は焼きません。豚の脂肪分(ラード)が溶け出す融点は60℃前後ですが、焼くことで100℃以上になり、脂がより出やすくなります。焼いて脂を出し続けたいところですが、長時間焼くと身が縮まってしまうため、必要な面を短時間で焼き、ゆでる工程に移ります。

3. 肉をゆでる

水(分量外・10カップ)を入れた鍋に(2)を入れ、米を加えて中火にかける。煮立てて、あくをとる。ふたをずらし、弱火で60分ゆでる。火を止め、そのまま90~120分粗熱をとる。

米を加えて低温でじっくりゆでます

鍋は肉がぴったり収まる口径22~24cmほどの小さめのものがおすすめです。火に当たる鍋底が狭いほうが、熱がゆるやかに当たり、水分の蒸発を防ぐことができます。アクは十分に煮立たせたほうがしっかり出ます。出てきたアクは寄せてすくいとります。米を入れているおかげで、ポコポコと泡がでている状態でも温度は80℃前後です。粗熱を取るのは、手で肉を触れられるようになるくらいになれば完了。完全に冷えていなくても大丈夫です。

4. 具材を切る

豚肉は湯に取って表面のぬめりを流して、幅4cmに切る。しょうがは5mmの薄切りにする。にんにくは外側の皮を取る。

しょうがやにんにくの大きさにも意味があります

お湯の中で豚肉を洗うようにして、表面のぬめりを取ります。肉はやや大きめに切ります。しょうがは香りを出したいので、皮ごと使います。小さく切りすぎるとすぐに香りが出きってしまうので、やや大きめに切るのがポイント。にんにくは切ると風味が強く出てしまうので丸ごと使うようにして、具としても食べられるようにします。

5. 煮汁を絡める

鍋に〈A〉を加え、中火で1~2分煮立てる。豚肉を入れ、煮汁を全体に4~5分絡める。

先に濃い味を絡めて、煮込む前に味をしみ込ませます

先ほど使った鍋を洗う、または、別の小さめの鍋を使います。調味料を入れたらひと煮立ちさせ、アルコール分を飛ばします。肉を入れたら、煮込み始める前に、照り焼きをつくるように煮汁を全体に絡めます。ここが味をしみ込ませる大切なステップです。

6. 煮込む

水を加え、にんにく、しょうがを加えて中火で煮立てる。弱火にして、濡らしたキッチンペーパーをかぶせ、ふたをずらしてのせ、40~50分煮る。途中で肉の上下を返す。

煮汁が高温にならないように

キッチンペーパーは濡らしておくと煮汁を吸いにくくなります。温度が高くなりすぎないよう、ふたをずらしておくことをお忘れなく。じっくり火を加えることが肉をやわらかくする秘訣です。途中で肉の上下を返すのが難しければ、スプーンで煮汁をかけるだけでも大丈夫です。

7. 蒸らす

火を止めて、キッチンペーパーをかぶせた状態でふたをしたまま20分以上蒸らす。

蒸らしながら最後の味入れ

味を入れるために、キッチンペーパーを再びかぶせてふたをして蒸らします。全体が煮汁に浸るようにしておくと、より味が入ります。ゆで卵を加えたい場合は、このタイミングで鍋に入れます。

8. 白髪ねぎをつくる

幅5cmに切る。切り込みを入れ、外側の白い部分だけを広げて重ねて細く切る。水にさらす。

美しさや食感にこだわりましょう

和食は仕上がりの美しさも味のうち。付け合わせの白髪ねぎをつくります。ねぎの外側の白い部分だけを使います。水にさらしてシャキシャキとした食感を保ち、盛り付ける直前に水気をふき取ります。

(1人分熱量621kcal/塩分1.1g/調理時間約140分)栄養計算値は煮汁を50%摂取した場合の値です。調理時間に豚肉を常温でおく時間、粗熱を取る時間は含まれません。

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ヘルシーポイント

肉をゆでて粗熱を取ったあと、さらに冷蔵庫に入れて一晩置くと、脂をより十分に取り除けます。肉のほかに、玉ねぎ(半切り)、長ネギ(ぶつ切り)、きのこ、ゆで卵などを加えれば、栄養バランスのいいメインディッシュに。

料理/小田真規子 
撮影/高杉 純 文/峯田亜季 デザイン・コーディング/高橋裕子・長瀬佳奈江(Concent, Inc.)編集担当/杉森一広 市川真規(キッコーマン)
※商品情報は本ページ公開時のものです。公開後にリニューアル、販売終了等になることがありますので詳しくは当社サイトの商品情報をご確認ください。
公開:2022年12月1日