【第2回】柳原尚之先生が伝える<和食の魅力>
柳原 尚之 先生(近茶流宗家・柳原料理教室主宰)





「和食」のユネスコ無形文化遺産登録10周年を迎え、2023年10月に<和食の魅力>をテーマにしたパネルディスカッションを開催しました。そのパネリストを講師に迎え、料理講習会を4回にわたり開催。2024年2月3日の第2回は、近茶流宗家・柳原料理教室主宰 柳原尚之先生をお招きしました。
講習会のレポート
柳原先生は、大学卒業後、食品メーカーや海外の帆船にて勤務。近茶流宗家として、東京・赤坂の教室で日本料理、茶懐石の指導されています。醸造学の博士号を取得。江戸期の食文化の研究と継承を続け、テレビ番組の出演の他、大河ドラマなどの料理監修や所作指導なども務める。2015年には文化庁文化交流使に任命。「近茶流」は江戸時代に興ったとされる柳原家家伝の割烹道です。
今回は柳原先生が選んだ和食の魅力を伝えるご紹介いただきました。 和食の特長として、自然や季節を表現し、年中行事と密接に関わって育まれてきたということがあります。桃の節句・雛祭りにつくっていただきたい2品です。
- 近茶流追い込みちらし
近茶流のちらしずしです。混ぜ込む具を「追い込み煮」します。「追い込み煮」とは、薄味で煮る具から煮ていき、煮上がったら取り出し、残った煮汁に調味料を足し、次の具を煮ていくことを言います。それぞれの具を生かしながらも、足していくことでうま味が増します。汁も無駄にしない調理法です。すしの上には、絹さやの緑、紅しょうがの赤、れんこんの白、浅草のりの黒、錦糸卵の黄色の五色を飾ります。これは、青春(せいしゅん)・朱夏(しゅか)・白秋(はくしゅう)・玄冬(げんとう)・黄道(おうどう)の四季と季節の境目を表わしています。ご飯は必ず炊き立ての温かいご飯を使うこと。ご飯とすし酢がよく混ざり合います。混ぜる具にしっかりと甘味がついているので、すし酢には甘味は加えず、酢とうすくちしょうだけでさっぱりと仕上げます。
- はまぐりの潮汁
雛祭りの膳には、はまぐりなどの貝料理を供える習慣があります。はまぐりと昆布で味わい深い、品の良いだしが取れます。はまぐりは長く煮ると固くなるので、口が開いたら取り出します。緑鮮やかな菜の花と白い東京うどを添えました。菜の花は下ゆでしたら、はまぐりの汁とうすくちしょうゆとみりんで下味をつけます。仕上げに木の芽も添えて。和食ならではの春の汁の出来上がりです。
和食と年中行事。季節感とともに受け継がれる行事食の文化を、改めて見直したいと思った講習会でした。
講習会のレシピ
近茶流追い込みちらし
米 | 3カップ(600cc) |
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水 | 690ml |
【合わせ酢】 | |
米酢 | 60ml |
キッコーマン いつでも新鮮 しぼりたてうすくち生しょうゆ | 小さじ1と1/2 |
にんじん | 4cm長さ(150g) |
【A】 | |
だし | 200ml |
砂糖 | 大さじ2 |
キッコーマン いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ | 大さじ4 |
干ししいたけ | 4~5枚 |
【B:Aの残り汁】 | |
砂糖 | 大さじ1 |
キッコーマン いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ | 大さじ1 |
油揚げ | 3枚 |
【C:Bの残り汁】 | |
砂糖 | 大さじ4 |
キッコーマン いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ | 大さじ1 |
れんこん | 80g |
【D】 | |
酢 | 50ml |
砂糖 | 大さじ1と1/2 |
塩 | 小さじ1/4 |
【薄焼き玉子】 | |
卵 | 2個 |
砂糖 | 小さじ2 |
絹さや | 60g |
紅しょうが | 60g |
浅草のり | 1枚 |
- 1にんじんはマッチ棒程の太さにせん切りにしてAで煮る。にんじんに火が通ったら、ザルに取り出す。
- 2干ししいたけは戻し、せん切りにしてBで煮る。煮汁が十分に含んだら、ザルに取り出す。
- 3油揚げは熱湯にくぐらせて油抜きし、縦半分に切って5mmのせん切りにしてCで煮る。
- 4れんこんはいちょう切りにし、酢少々(分量外)を入れた水に取り、そのままゆでる。ひと煮立ちさせ透明感が出たら、ザルに取ってDの甘酢に漬ける。
- 5卵と砂糖を混ぜ、薄焼き卵を2枚焼き、せん切りにする。
- 6絹さやは塩ひとつまみ(分量外)入れた熱湯でゆで、水に取った後、せん切りにする。
- 7浅草のりはあぶってもみのりにする。
- 8米は炊飯して約10分蒸らして飯台に取り、合わせ酢をかけて切るように混ぜ、すし飯をつくる。
- 9(8)のすし飯が温かいうちに(1)(2)(3)の具を混ぜ合わせ、うちわで冷ます。
- 10(9)を器に盛りつけ、(4)(5)(6)(7)と紅しょうがを飾る。
蛤の潮汁
はまぐり | 8個 |
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菜の花 | 4本 |
うど | 3cmを2本 |
木の芽 | 4枚 |
水 | 900ml |
昆布 | 15cm |
塩 | ひとつまみ+小さじ1弱 |
マンジョウ 国産米こだわり仕込み 料理の清酒 | 大さじ1 |
キッコーマン いつでも新鮮 しぼりたてうすくち生しょうゆ | 少々 |
マンジョウ 米麹こだわり仕込み 本みりん | 少々 |
- 1菜の花は水に浸けてしゃきっとさせてから、塩ひとつまみを入れた熱湯でゆでて、水に取る。うどは皮をむいて短冊切りにする。
- 2はまぐりは、流水でお互いにこすり合わせて洗い、鍋に水と昆布とともに入れ火にかける。沸いて、はまぐりの口が開いたら取り出し、汁は布巾で漉す。
- 3(2)の汁を再度鍋に入れて火にかけ、沸いたら塩小さじ1弱と酒を加えて、味をととのえる。
- 4別にお玉一杯の(3)の汁を取り、うすくちしょうゆ、みりんを加えて、水気をきった(1)の菜の花を入れて下味をつける。
- 5椀に(2)のはまぐりと(4)の菜の花、うどを入れて、熱く温めた(3)の汁を注ぎ、木の芽を天盛りにする。

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