世界各地での広がり

地域ごとのしょうゆの特性
地域ごとのしょうゆの特性 北海道 東北 関東 北陸 中部 近畿 中国 四国 九州

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しょうゆづくりとその流通の歴史をたどると、それぞれの地域のしょうゆの味の特徴や嗜好が見えてきます。
ここでは地域特有の風土や歴史、食文化を反映したしょうゆと、その味や特徴、使われ方について、日本各地を9つに分類して紹介します。


北海道

北海道限定販売で、道内で広く使われている濃縮つゆ「めんみ」

北海道産真昆布を使用した「真昆布しょうゆ」

明治時代に入ると、官営工場主導により、大手メーカーのこいくちしょうゆを手本にした関東風のしょうゆをつくるようになりました。
昭和30年代に濃縮つゆが発売されると、つけかけ用として道内で広がり普及しました。北海道の農地開拓は夫婦一緒に働く共働きであったことから、調理に時間をかけない習慣が根付き、簡便で手軽な調味料が受け入れられる素地となったと考えられています。また、平成時代に入ると、北海道産の昆布を使用した昆布しょうゆが登場し、いまでは全国へ市場を広げています。


東北

東北地方で販売されている「まろやかしょうゆ」

東北では混合しょうゆが多くつくられ、沿岸部を中心にやや甘いしょうゆが好まれています。
昭和50年代に多用途に使える濃縮つゆやだししょうゆが発売されると、秋田県、山形県および宮城県北部では、しょうゆの代わりとしての使用が広がったとされています。
また、秋田県では、ハタハタやイワシを使った魚醬「しょっつる」がつくられています。


関東

江戸時代中期、関東で生まれたこいくちしょうゆは、原料や製品の水運に便利な利根川水系に沿って一大産地を形成しました。こいくちしょうゆが江戸で広がると、そば、天ぷら、うなぎの蒲焼き、にぎりずしなどの江戸料理が生まれたとされています。
この地域は、本醸造のこいくちしょうゆの生産がほとんどで、甘味料を添加しない、すっきりした味わいが特徴です。主な生産地は千葉県野田、銚子です。

野田・銚子

千葉県・野田

利根川と江戸川に挟まれた野田では、江戸時代中期頃より、関東で収穫された大豆や小麦、行徳でとれた塩を、水運を利用して野田に運び、しょうゆづくりが行われていました。
また、水運は原料の調達のためだけではなく、出来上がったしょうゆを江戸に運ぶのにも便利でした。

千葉県・銚子

野田と同様に水運を活用し、関東で収穫された大豆と小麦、行徳でとれた塩を、江戸川や利根川を通じて運び、しょうゆづくりが行われていました。


北陸

いかのいしり貝焼き

しょうゆの産地として江戸時代から栄えた金沢市大野町は、大豆や小麦、食塩の産地が近くにあった上、さらに大豆が海運で北海道や新潟から大野港へ運ばれていました。この地方は、九州と並び甘い混合しょうゆの産地として知られています。
また、石川県ではイカの内臓やイワシを使った魚醬「いしる」をつくっています。


中部

ひつまぶし

伊勢うどん

愛知県、岐阜県、三重県を中心とする地方では、こいくちしょうゆの他に豆みその製造過程で生まれた色の濃いたまりしょうゆと、小麦を主原料とする色の淡いしろしょうゆをつくっています。
たまりしょうゆは、「ひつまぶし」のたれや、「きしめん」「伊勢うどん」のつゆなどの郷土料理に使われています。しろしょうゆは、「吸い物」「茶碗蒸し」など、素材の色を生かしながら、しょうゆで味つけする料理に使われています。


近畿

江戸とその周辺に巨大な市場が形成されるまで、京都・大坂は日本最大の市場でもあり、しょうゆの流通も上方から始まりました。紀州(和歌山)の湯浅、播州(兵庫)の龍野、泉州(大阪)の堺が産地として知られています。うすくちしょうゆは江戸時代に龍野で生まれたとされています。
この地域はうすくちしょうゆが広まっていますが、本醸造のこいくちしょうゆの消費も多く、料理によって特徴の異なるしょうゆが使い分けられている地域でもあります。

龍野

兵庫県・龍野

うすくちしょうゆは、江戸時代に龍野で生まれたとされています。播州平野の小麦、佐用の大豆、赤穂の塩、と龍野はしょうゆの原料の入手に恵まれていました。そして、町の中心を流れる揖保川の水を仕込みに使う事ができました。また、清酒の産地でもあり、醸造技術の発達および清酒醸造に使用する桶や器具の転用も可能で、しょうゆ醸造の発展に寄与しました。


中国

広島県産牡蠣エキスを使用した「いつでも新鮮 旨みあふれる牡蠣しょうゆ」

さいしこみしょうゆは、江戸時代に山口県柳井地方で生まれたといわれています。柳井は瀬戸内海の港町で、近世に入ると瀬戸内海交易によって発展しました。原料の大豆や小麦は、柳井津から出荷していた木綿や塩の帰り船で、九州地方(大分県、熊本県など)から運ばれていたとされています。
中国地方は、九州北部の甘いしょうゆが移入したことにより、やや甘い混合しょうゆが多く使われますが、瀬戸内に比べて日本海に面した萩地方のしょうゆはより甘いといわれています。また、地元産の牡蠣エキスを使用した牡蠣しょうゆなど、しょうゆ加工品もつくっています。


四国

四国は地域によってしょうゆの特徴が分かれています。豊後水道を挟んで九州の大分県と向かい合う高知県や愛媛県は、九州のしょうゆの影響を受けて、甘味の強い混合しょうゆが好まれています。一方、江戸時代からしょうゆの産地として知られている香川県小豆島では、関東と同様に甘味料を使用しない本醸造のこいくちしょうゆが使われ、讃岐うどんのつゆには混合のうすくちしょうゆが使われています。また、香川県では、いかなごを使った「いかなごしょうゆ」をつくっています。


九州

九州地方で販売している「いつでも新鮮 九州うまくちまろやかしょうゆ」

しょうゆメーカーの数が多く、それぞれの地域で特徴の異なるしょうゆをつくっていますが、甘味のある混合しょうゆが多くを占めます。
九州北部では、糖分あるいは甘味料を加えた本醸造しょうゆもつくっています。宮崎県や鹿児島県といった九州南部は、特に甘味の強い混合しょうゆが好まれている地域です。昭和30年代に甘味の強いしょうゆが広まったとされています。
九州は、うすくちしょうゆの生産も多く、料理によってうすくちしょうゆと甘味のあるこいくちしょうゆ、と2つのしょうゆが使い分けられている事も多いようです。

地域特性について、さらに詳しく知りたい方は

研究機関誌「FOOD CULTURE」No28・29 (キッコーマン国際食文化研究センター発行)

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