しょうゆの「色」「味」「香り」「効果」

しょうゆは、日本の食文化を支えてきた調味料の1つで、今では世界各国で広く使われるようになりました。
日本人の食生活に深く浸透し、また世界に普及している理由は、しょうゆの持つ「おいしさ」にあるのでしょう。
では、そのおいしさとは一体どのようなものなのでしょうか。

そこで、視覚、味覚、嗅覚に関係する「色」「味」「香り」や「しょうゆの効果」について紹介します。


しょうゆの色

新鮮なこいくちしょうゆの色は、透明感のある明るい赤橙色をしています。
小皿などにしょうゆを入れ、よく見てみると、その色は一般的な印象以上に赤い色をしています。

しょうゆの色が生まれるまで

しょうゆらしい色の生成に重要な役割を果たしていると考えられているのは、アミノ・カルボニル反応です。しょうゆの発酵・熟成中、もしくは火入れの段階で、原料に由来するアミノ酸と糖が反応を起こし、メラノイジンという褐色の色素が生成されます。

いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ やわらか密封ボトル

火入れをせず、鮮やかな色の
生しょうゆ
いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ

「いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」は、鮮やかな色、さらりとしたうま味、穏やかな香りが特徴です。「やわらか密封ボトル」という、しょうゆが空気に触れない構造の容器を使用しているため、しょうゆの酸化による色の変化を防ぎ、開栓したての鮮やかな色や風味を保つことができます。


基本の「五味」

基本の五味 基本の五味

生理学的に、人間の味覚には五味があるといわれています。
砂糖などの「甘味」、酢などの「酸味」、食塩などの「塩味」、緑茶やコーヒーなどの「苦味」、そして、昆布やかつお節など、だしの「うま味」の基本の五味です。
しょうゆはこの五味をバランスよく含んでいる調味料です。
ここでは基本の五味それぞれについて、こいくちしょうゆを代表例として説明します。

※辛味、渋味、エグ味などは、「味覚に熱感、痛感、圧感、触感、収縮感などが加わったもの」として現在は区別されています。

甘味

甘味

しょうゆには、およそ15種類にも及ぶ糖分が3~5%含まれています。なかでも最も多く含まれているのがぶどう糖です。このほかにグリセリンをはじめとする糖アルコール、甘味を持つグリシン等のアミノ酸などがしょうゆの甘味を形成しています。

酸味

酸味

しょうゆにおける酸味の主な成分は乳酸、酢酸などで、さまざまな酸(有機酸)が含まれています。
これらにより、しょうゆはpH4.7~5.0くらいの弱酸性となっています。なかでも塩味をやわらげて、まろやかにする乳酸が0.5~2.0%と最も多く含まれ、しょうゆの味をバランスの良いものにしています。

※人が最もおいしさを感じるのは、弱酸性(pH4~5)といわれています。

塩味

塩味

しょうゆの塩分は約16%です。しょうゆを醸造する過程で雑菌の繁殖や腐敗を防ぐために必要な塩分です。
アミノ酸や乳酸をはじめとしたさまざまな成分が、塩味をやわらげてまろやかにします。

苦味

苦味

しょうゆには、苦味を持ったアミノ酸やペプチド類がわずかに含まれています。直接苦味を与えるというより、塩味や酸味と一緒になって、しょうゆに「コク」を与える働きをします。

うま味

うま味

しょうゆのうま味は、原料の大豆、小麦に含まれているたんぱく質からつくられています。これらが麹菌の酵素によって分解され、生成される約20種類のアミノ酸がうま味をつくり出しています。
しょうゆのアミノ酸には、グルタミン酸、グリシン、リジン、アラニン、アスパラギン酸などが含まれ、なかでもグルタミン酸が最も多く含まれています。


香りの成分

しょうゆに含まれる香りの成分は、現在確認されているだけでも約300種類あります。
その代表的なものは、フラノン化合物(HEMF)で、本醸造しょうゆの香りの主成分です。

発酵によって生まれる香り

発酵によって生まれる香り

しょうゆの香りは、酵母などの微生物の働きによる発酵によって生まれます。
大豆の主成分はたんぱく質です。小麦の主成分はでんぷんです。麹菌がつくり出した酵素の働きにより、たんぱく質がアミノ酸に変わり、でんぷんがぶどう糖に変わります。
これらのアミノ酸・ぶとう糖は、酵母の働きにより、しょうゆ独特のさまざまな香りを生成します。

しょうゆの香りの中には、りんごや桃、パイナップルなどの果物や、バラ、ヒヤシンスといった花などの香りの主成分が含まれています。また、ウイスキーやハム、ソーセージ、コーヒーなどの香り(フェノール化合物類など)も含まれています。

フレーバーホイール 
しょうゆの香りや味の特徴を体系化

「フレーバーホイール」とは、ある食品から感じられる香りや味の特徴を、類似性や専門性を考慮して円状かつ層状に並べたものです。
しょうゆにはさまざまな種類があり、その特性の違いを伝えようとするとき、人によってその表現が異なるために必要な情報が十分に伝わらないことが多くありました。
そこでキッコーマンは、日本各地で使用されているしょうゆや、近年人気の「生しょうゆ」など138銘柄を評価、しょうゆの香りはもちろん、味、風味、食感など91の特徴を言葉で表現し体系化した、日本のしょうゆの「フレーバーホイール」を作成しました。
またアメリカ、中国、フランスなど、世界100カ国以上で親しまれている149銘柄のしょうゆから88種類の特徴を反映した「フレーバーホイール」も作成、しょうゆの魅力を世界へ伝えるツールとして活用しています。


しょうゆの効果

しょうゆには、食材保存や料理の味や香りを引き立てるなどの働きがあります。

消臭効果

消臭効果

さばやいわしなど、生臭みのある青魚の調理にとって、しょうゆは欠かせない調味料です。これはしょうゆに含まれている香りや有機酸、色の成分であるメラノイジンなどが、食材の生臭みを取ったり、覆いかくしたりする働きがあるためです。しょうゆの消臭効果は、食材をよりおいしく仕上げる働きを持っています。

加熱効果

加熱効果

すき焼きに照り焼き、せんべい、焼きおにぎりなど、しょうゆに熱を加えると、食欲をそそる、良い香りがします。これは熱によってしょうゆの中のアミノ酸と糖分が反応、メラノイジンなどの成分をつくり出すことによるものです。加熱することで生じる香ばしさもしょうゆの効果の一つです。

静菌(殺菌)効果

静菌(殺菌)効果

しょうゆには塩分やアルコール、有機酸が含まれており、細菌の増殖を止める静菌効果や、死滅させる殺菌効果があります。
しょうゆの静菌力・殺菌力は、乳酸と食塩やアルコール等が作用して効果が生まれています。
江戸前ずしの「づけ」のように魚や肉をしょうゆに浸して保存する調理法は、人々がしょうゆの強い殺菌力を体験的に知っていた良い例といえます。

緩衝効果

緩衝効果

しょうゆはpH4.7~5.0と弱酸性ですが、「緩衝効果」といって、急激なpHの変化を抑えて、食べ物をおいしい弱酸性の範囲に保つ働きがあります。この作用により、料理を調和のとれた味つけにする効果があります。

対比効果

対比効果

すいかに、食塩をひとつまみ振りかけると甘さが引き立つように、主体の味に異なる味をごくわずかに加えることで、主体の味をいっそう強く感じることができる効果を対比効果といいます。
バニラアイスにしょうゆをたらすと甘みが引き立ちアイスの味をよりはっきり感じることができます。

抑制効果

抑制効果

漬け物や塩鮭などに、ほんの少ししょうゆをたらすと塩辛さを抑えることができます。これを抑制効果といいます。
しょうゆに含まれているうま味と有機酸に塩味をやわらげる働きがあるためです。

相乗効果

相乗効果

そばつゆや天つゆなどのコク深いうま味は、しょうゆの中のグルタミン酸とだしのかつお節に含まれているイノシン酸が働きあって生まれます。
このように異なる成分を合わせることによって、両方の味がともに強まることを相乗効果といいます。

ページの先頭に戻る