1.原料
現在のようなこいくちしょうゆをつくるようになったのは江戸時代です。
以来、しょうゆづくりの基本は、今日までほとんど変わっていません。
しょうゆの主原料は大豆、小麦、そして食塩(塩)です。
常に良い品質の原料を厳選してしょうゆづくりを行っています。
主な原料は大豆、小麦、食塩。
そして主役は“微生物”
しょうゆは、微生物の働きによる発酵によってつくり出されます。
キッコーマンのこだわり
しょうゆづくりのための麹菌
「キッコーマン菌」
しょうゆづくりに関わる微生物の中で最も大切な働きをするのが麹菌(こうじきん)。
これはキッコーマンが長年にわたり受け継ぎ育ててきた麹菌の1つ、「キッコーマン菌」です。
原料処理
大豆を蒸す
選り分けられた大豆は、まず高温で蒸します。大豆は蒸すとたんぱく質の性質が変わり、麹菌の酵素の働きを受けやすくなります。また、大豆の殺菌という目的もあります。
小麦を炒り、砕く
選り分けられた小麦は、高温で炒ってから砕きます。小麦は炒ると、でんぷんが麹菌のつくり出した酵素の働きを受けやすくなります。また、炒った小麦を砕くことで、麹菌の作用する面積が増えることにもなります。
2.製麹(せいきく)
蒸した大豆と、炒って細かく砕いた小麦に麹菌を加え、しょうゆ麹をつくる工程を「製麹(せいきく)」といいます。
製麹では、しょうゆ麹づくりに適した温度や湿度になるように注意を払いながら、良質のしょうゆ麹をつくりあげることが重要です。
長い経験から得た適温適湿の知恵を、現在の機械を使った生産に生かしています。
詳しいつくり方
大豆と小麦を混ぜ合わせ、
麹菌「キッコーマン菌」を加える
蒸した大豆と炒って砕いた小麦を混ぜ合わせ、麹菌「キッコーマン菌」を加えます。これがしょうゆ麹のもとになります 。これを、しょうゆ麹をつくる部屋「製麹室(せいきくしつ)」に運びます。
製麹室でしょうゆ麹をつくる
麹菌を加えた大豆と小麦を、製麹室で円盤状の台の上に、均等の厚さになるようにのせていきます。この台には小さな穴がたくさん開いていて、温度や湿度を調整した空気が送り込まれています。室内は麹菌を繁殖させるため、人間にはかなり蒸し暑く感じる環境になっています。
約3日間かけて、しょうゆ麹が完成
砕いた小麦が水分を含んだ大豆を包み、さらに麹菌がこれを覆います。麹菌が増えるとしょうゆ麹の温度は高くなっていきます。そこで、時々しょうゆ麹の塊をほぐして熱くなり過ぎることを防ぎ、麹菌の生育に適切な温度を保ちます。
約3日間でしょうゆ麹ができあがります。
3.仕込み
しょうゆ麹を製麹室より取り出し、食塩水を加えます。これを「もろみ」といいます。「もろみ」は直ちに大型タンクに入れて発酵・熟成させます。この工程を「仕込み」といいます。
品質の良い「もろみ」をつくるためには、空気の供給や温度のコントロールなど、微生物が働きやすい環境づくりに常に気を配ることが必要です。
詳しいつくり方
仕込み
しょうゆ麹に食塩水を加えて「もろみ」にすると麹菌の繁殖が止まり、麹菌のつくり出した酵素が働き始めます。
「もろみ」をタンクに入れて1週間ほどたつと、酵素の働きで大豆のたんぱく質はアミノ酸に、小麦のでんぷんはぶどう糖に変化していきます。これらのアミノ酸、ぶどう糖によって乳酸菌・酵母の働きが活発になります。
また、アミノ酸とぶどう糖の一部が結びついてしょうゆの「色」をつくり出します。
最初に乳酸菌が活動を始め、後を追うように酵母が働き出し、1~2カ月たつと、「もろみ」は泡立ち赤みを帯びていきます。こうして「もろみ」は、タンクの中でゆっくりと発酵・熟成していきます。
タンク内で「もろみ」を発酵させて数カ月たつと「熟成期」に入ります。活発だった微生物の働きはほとんどなくなり、「もろみ」全体が調和のとれた状態に仕上がっていきます。
しょうゆのおいしさが生まれる秘密
乳酸菌
乳酸菌は、原料から、麹菌の酵素によってつくり出されたぶどう糖を乳酸や酢酸など、さまざまな酸に変え、しょうゆの味に奥行きを出します。
酵母
酵母は、原料から、麹菌の酵素によってつくり出されたぶどう糖を栄養源とし、アルコールや、しょうゆ特有の香り成分をつくる働きがあります。
おいしさの決め手はきめ細かい管理
「もろみ」をタンクに仕込んだだけではおいしいしょうゆはできません。酸素の供給や温度のコントロールなど、人間の手で管理することで微生物はより活性化し、しょうゆはおいしくなります。発酵を順調にすすめる上で最も大切なことは、微生物が働きやすい環境を整えるため、「もろみ」をかき混ぜる「撹拌(かくはん)」という作業です。昔は人の力で、今では機械による空気の力で行っています。季節や気温などに応じたきめ細かい管理が決め手です。
4.圧搾・清澄
発酵・熟成が終わった「もろみ」を布で包み、しょうゆを搾り出す工程が「圧搾(あっさく)」です。
搾ったしょうゆを美しく澄んだ状態にする工程を「清澄(せいちょう)」といいます。
詳しいつくり方
圧搾
「もろみ」を搾る工程では、まず熟成した「もろみ」を、3つに折った長い布に連続して詰めるところから始まります。「もろみ」を包んだ布を積み重ねると、最初は「もろみ」自体の重さでしょうゆがにじみ出てきます。
その後、積み重ねた「もろみ」にプレス機で圧力をかけて、ゆっくりとしょうゆを搾ります。
しょうゆ粕の再生利用
「もろみ」を搾った後に残るものを「しょうゆ粕」といいます。
しょうゆ粕は、飼料や再生紙の原料として再利用されています。しょうゆ粕をすき込んだ紙は、キッコーマン社員の名刺などに使われています。
清澄
「もろみ」から搾られたままのしょうゆを「生揚げ(きあげ)しょうゆ」といいます。生揚げしょうゆは、数日間タンクの中で静かに休ませます。この間に、表面の油や底に沈んだおりを分離させます。この工程を「清澄(せいちょう)」といいます。
5.火入れ・ろ過
火入れ
生揚げしょうゆに熱を加える工程を「火入れ」といいます。「火入れ」により、しょうゆの色・味・香りを整え、そして、しょうゆの中に残存する微生物の殺菌、酵素の失活化、酵素たんぱく質の凝固・除去を図ります。
ろ過
火入れを行わずに、生揚げしょうゆより、醸造に使用した微生物を精密な膜により除去する工程を「ろ過」といいます。
「火入れ」を行わずに、「ろ過」したものを「生(なま)しょうゆ」といいます。
6.詰め
火入れ・ろ過の終わったしょうゆを、さまざまな容器に詰めます。
容器に詰められたしょうゆは、その後キャップを締め、ラベルを貼り、賞味期限等を印字し、詰める前だけではなく、詰めた後も、さまざまな検査を行い、出荷します。