いなりずし

冷ます時間が
いなりずしをおいしくします

油揚げを煮たり、酢飯をつくったり、そして包んだり……いなりずしはとても手間のかかる料理です。油揚げを煮た後は冷ます工程も時間がかかります。でも、冷めていく間に油揚げにしっかり味がしみこんだり、硬くなって破れにくくなったりするのです。「冷ます時間も大切な調理工程」と心得ておきましょう。

料理には「大量に煮るから引き出せる味わい」があります。いなりの油揚げはその影響が大きい料理です。家庭では大鍋で大量に、とはいかないので、その味に近づけるために、油揚げは2回「煮る・冷ます」を繰り返します。シンプルな味つけでも専門店のような深い味わいに近づくポイントがここです。油揚げにしっかり味をしみこませるためには、油抜きをしっかりしておくことも大切です。

味のベースは佃煮や乾物の煮物などと同じく、しょうゆ:みりん:砂糖=1:1:1が基本。そこから好みの味のバランスを考えていきましょう(今回は少ししょうゆを控えめにしたレシピです。お好みで調整を)。こってりと味のしみた油揚げと、さっぱり仕上げた酢飯。2つの素材の味に差をつけるのもおいしさのカギです。また、つくってから置いておくことで油揚げの味わいが酢飯に自然と移って絶妙な味のバランスが生まれます。

  • ●冷ます時間を大切に
  • ●油揚げは油抜きをしっかりする
  • ●しょうゆ、みりん、砂糖は1:1:1を基本として調節

この3つのポイントを押さえながら、調理していきましょう。それぞれの工程がなぜ必要なのか、理由も解説していきます。

材料・12個分

油揚げ…6枚
米…2合
水…350ml
昆布…5×5cmくらい
〈A〉
マンジョウ 国産米こだわり仕込み 本みりん…大さじ4
三温糖または砂糖…大さじ4
キッコーマン 特選 丸大豆しょうゆ…大さじ3
水…400ml
〈B〉すし酢
米酢または穀物酢…大さじ4
砂糖…大さじ1
塩…小さじ1/2
〈C〉
しょうが(みじん切り)…2かけ分
白いりごま…大さじ1

つくり方

1. 油揚げを切り、開いて袋にする

油揚げの上で菜箸を転がす。半分に切って袋状に開く。

繊維をつぶして開きやすくします

菜箸を転がすのは、揚げの繊維をつぶして袋状に開きやすくするためです。菜箸は丸くても角ばっていても構いません。身の厚い油揚げよりも、薄めの油揚げの方が開きやすいことも覚えておきましょう。半分に切ったら、破れないように気をつけながら、すべてを袋状に開けます。

2. ゆでる

沸騰した湯で油揚げを5分ゆでる。冷水に取ってもみ洗いし、水気をきる。

油揚げを破かないように菜箸の頭を使います

口の広い鍋、またはフライパンに6~7カップの湯を沸かし、油揚げを5分ゆでます。油揚げは浮いてくるので、菜箸で押さえたり上下を返したりします。このとき、油揚げを破かないように菜箸の頭(箸先の反対側)を使って、つつかずやさしく扱いましょう。ざるに上げ、冷水にとったら、やさしくもみ洗いします。これは油を落とすためです。水ににごりがなくなるまで洗います。最後に2~3枚を手ではさみ、拝むようにして水をきります

3. 煮る

鍋に〈A〉を入れ1~2分煮立て、油揚げを並べ入れる。濡らしたペーパータオルをかぶせ、ふたをしないで弱火で20分煮たら火を止める。

ペーパータオルは濡らしてから

煮汁を一度煮立てることを忘れずに。みりんのアルコール分を飛ばし、砂糖を溶かすために必要な工程です。油揚げは輪を描くように並べ、中央をあけておきます。中央から熱を逃がすことで煮立ちがほどよくなるだけでなく、煮汁が対流しやすくなり、味が全体にまわります。濡らしたペーパータオルをかぶせる理由も、味を均一にいきわたらせたいから。あらかじめ濡らしておくことでペーパーが煮汁を吸い上げません。油揚げが煮汁に少し浸っているくらいで火を止めましょう。

4. 常温で置く

油揚げの上下を返し、ふたをして1時間置く。

じっくり冷ますという調理です

ふたをするのは煮汁を閉じ込めながら、ゆっくりと冷めていってほしいからです。冷えていく時間によって、味がしみこみます。

5. 再び煮る

ふたをしたまま中火にかける。煮立ったら、ふたをとって弱火で約10分煮る。

火を止めるタイミングは煮汁が教えてくれます

ふたをしたまま再び中火にかけ、煮立ったらふたをとって弱火にして約10分煮ます。煮汁が減って油揚げの縁に残る程度になり、鍋底が見えてきたら火を止めます。

6. 冷蔵庫で寝かす

保存容器に入れ、半日~1日冷蔵庫に置く。

寝かすことで油揚げが強くなります

粗熱をとり、保存容器に移して、半日または1日ほど冷蔵庫で寝かしましょう。調味料で煮込んだ後に時間を置くことで、味がなじむだけでなく、破れやすかった油揚げは調味料を吸って厚みが増し、硬くしまるのです。

7. 米を炊く

昆布を加えて、米を炊く。

一片の昆布が味を底上げします

米は研いでざるにあげ、30分~1時間おいて米についた水分を含ませてから炊飯器に入れて、分量の水と昆布を加えて炊きます。昆布のうま味を含んだごはんは、全体の味を底上げしてくれます

8. すし酢をつくる

小鍋に〈B〉を入れ、弱火にかける。

火にかけるひと手間でまろやかに

すし酢は、調味料をただ混ぜ合わせるのではなく、火を通すひと手間を。酢の強い酸味の角を丸くすることができ、砂糖も溶けやすくなります。ただし、煮立たせないように注意します。

9. 酢飯をつくる

ごはんにすし酢と〈C〉を加え、1分おく。切るように混ぜながら、粗熱を取る。

粘りを出さずに水分を飛ばし粗熱を取る

昆布を取り除き、ごはんを飯台、または、大きめのボウルにあけ、熱いうちにすし酢、しょうが、白ごまを全体にかけます。すし酢がなじむよう、そのまま1分置いたら、うちわなどで扇いで冷ましながら混ぜ合わせます。目指すは、粘りを出さずに水分を飛ばすこと。木製の飯台やしゃもじがいいのは、木がほどよく水分を吸ってくれるからです。しゃもじでごはんを切るようにして、合わせていきます。粗熱が取れたら、12等分して丸めます。

10. 油揚げの汁気をきる

油揚げの汁気を軽くきる。汁は取っておく。

絞りすぎない程度に汁気をきります

油揚げを2~3枚手ではさみ、拝むようにして軽く汁気をきります。絞りすぎないようにしましょう。このときの煮汁は、手水になるので取っておきます。油揚げの煮物は日持ちするので、この状態で保存しておけば常備菜にもなります。

11. 酢飯を詰める

1個分の半量を油揚げに入れ、端まで詰める。残りの半量を詰める。口を折りたたむ。

酢飯は2回に分けて端までしっかり

1個分の酢飯の半量を軽く握り、油揚げの角までつめていきます。油揚げが破れないよう、ゆっくり押すように詰めます。酢飯が手につくようならとっておいた煮汁を手につけて作業します。残りの半量もさらに詰め、油揚げの口を織り込んで上下を返します。

12. 味をなじませる

形を整え、1時間以上置く。

最後に1時間寝かせて完成です

煮汁を手に取り、油揚げになじませながら形を整え、畳み口を下にして置きます。1時間以上寝かせて味をなじませたら、完成です。冷蔵庫で保存しても油揚げの糖分と水分の効果で硬くなりません。冬場なら常温で翌日もおいしく食べられます。

(1人分・3個で熱量528kcal/塩分2.2g/調理時間約70分※炊飯時間、冷ます時間を含まず)

いなりずしのレシピだけ見る

ヘルシーポイント

酢飯の代わりに白ごはんにすれば、塩と砂糖をカットできます。酢飯にしょうが、にんじん、しいたけなどの具を入れかさ増しして、ごはん分のカロリーを減らすこともできます。また、油揚げを袋にせず、細い帯のようにして酢飯に巻いて油揚げの量を少なくして、ぐっとカロリーを減らすという方法もあります。

料理/小田真規子 
撮影/高杉 純 文/峯田亜季 デザイン・コーディング/高橋裕子・長瀬佳奈江(Concent, inc.)編集担当/杉森一広 市川真規(キッコーマン)
※商品情報は本ページ公開時(2022年4月)のものです。公開後にリニューアル、販売終了等になることがありますので詳しくは当社サイトの商品情報をご確認ください。