茶碗蒸し
茶碗蒸しは
だし汁と卵を味わう「汁物」です
茶碗蒸しは、和食では「汁物」に分類されます。卵とだしの王道の比率は1:3で、大部分がだし汁です。だしが上手にとれれば、塩だけでも十分おいしくなります。また、卵と混ぜるときのだし汁の温度を、常温~人肌の温かさにしておくと、卵の弾力を引き出ししっとりまろやかな食感に仕上がります。
具はさまざまありますが、共通するのは水気を出さないもの。かまぼこ、銀杏、えびなどが多いのもそのためです。加熱によって水分が出てしまう具材は卵液の水分量が変わってしまい、味わいや火の通りのバランスが崩れてしまうので、具材をアレンジするときには注意しましょう。
今回は、蒸し器を使わず、いつもの鍋を使って蒸す「地獄蒸し」でつくります。鍋のふたを閉じたり、ずらしたりしながら、蒸気をコントロールして、鍋の中を80℃以上にしないことが成功の秘訣です。
- ●おいしいだしをとる
- ●卵:だし汁=1:3
- ●鍋の中を80℃以上にしない
この3つのポイントを押さえながら、調理していきましょう。それぞれの工程がなぜ必要なのか、理由も解説していきます。
材料
- 鶏もも肉…40g
- 塩…少々
- マンジョウ 国産米こだわり仕込み 料理の清酒…小さじ1
- しいたけ…1枚
- かまぼこ…4枚(厚さ8mm)
- 柚子の皮…あれば
- 三つ葉…適宜
- 〈A〉だし汁の材料(つくりやすい分量)
- 水…5~6カップ
- 昆布…5~10g(5×10cmくらい)
- かつお節(けずり)…20~30g
- 〈B〉卵液の材料
- 卵…2個(100g)
- だし汁…1と1/2カップ
- マンジョウ 米麹こだわり仕込み 本みりん…小さじ1
- 塩…小さじ1/2~1/3
つくり方
下準備:だし汁をつくる
〈A〉の材料を用意する。鍋に水を入れ、昆布を30分ほど浸す。弱火で10~12分ほど加熱したら、昆布を取り出す。強火にして2~3分加熱し、かつお節を入れる。火を止めて2分ほど置く。かつお節が沈んだら、ペーパータオルでこす。
一度も沸騰させません
昆布を煮出しているときは、全体に細かい泡が浮くくらいを保ちます。かつお節を煮出すときも沸騰させません。昆布は60℃(上記の工程で弱火で10~12分加熱したときの温度)、かつお節は80℃(上記の工程で強火で2~3分加熱したときの温度)で十分旨みが出ると覚えておきましょう。どちらも目安の時間になったら入れっぱなしにせず、すぐに取り出します。かつお節は絞らず、軽く押さえる程度にします。
1. 鶏肉を切る
鶏肉は脂肪を除いて2~3㎝角に切る。塩と酒を絡める。
鶏肉の大きさが仕上がりに響きます
黄色みを帯びた余分な脂を取り除きます。鶏肉は大きすぎると火が通りにくいので、2~3cm大の10gほどに切りましょう。塩は下味つけだけでなく、卵液と鶏肉のなじみをよくする役目もあります。
2. 具材を切る
三つ葉はザク切りに、柚子はせん切りに、しいたけは厚さ8mmに、かまぼこは厚さ8mmに切る。
これらの具材は最後のトッピングになります
仕上げの飾りになるこれらの具材は、器の大きさも考えながらきれいに切りましょう。しいたけも、だしのためではなくトッピングです。
3. だし汁を用意する
〈A〉のだし汁に、塩、みりんを加える。
だし汁は常温または人肌にしてから使います
しっとり食感の茶碗蒸しに仕上げるために、だし汁は常温または人肌に温めます。塩は味つけのため、みりんは具材と卵液のまとまりをよくするために加えます。塩が溶けるよう軽く混ぜておきましょう。
4. 卵液をつくる
卵を泡立てないようにして混ぜ、だし汁を少しずつ加えて混ぜる。万能こし器でこす。卵液を大さじ2~3ほど取り分けておく。
泡立てずしっかり混ぜ合わせてなめらかに
卵は、脂肪の多い卵黄と水分の多い卵白という異なる性質の2つからできています。卵黄と卵白をむらなく混ぜるために、卵黄を先にくずして、よく混ぜ合わせます。泡立ててしまうと空気が入り、「す」が立ちやすくなるので、菜箸の先端をボウルの底から離さずに混ぜましょう。だし汁を加えたら必ずこします。これで、なめらかな卵液になります。最後に取り分けておく卵液は、仕上げに使います。忘れずに取っておいてください。
5. 器に注ぐ
器に鶏肉を分け入れ、それぞれに卵液を注ぐ。
鍋と器のサイズを確認しておきます
鍋に収まる器を用意します。磁器よりも陶器のほうが具への熱の伝わりがマイルドで保温が効くのでおすすめです。器にふたは必要ありません。先に空の器を鍋の中に並べて、収まり具合を確かめておきましょう。途中で卵の固まり具合を確認しやすいため、鍋のふたは透明のものが適しています。
6. 鍋にセットする
鍋の底に薄手のふきんを敷き、器を入れる。鍋に水を3カップほど注ぐ。ふたをせず、やや強めの中火にかける。
器が揺れないように布を敷きます
お湯が沸騰してきても器がガタガタ揺れないために布巾を敷きます。厚めのペーパータオルでも代用できます。蒸気をしっかり出したいので、水は鍋底から2cmほどが目安。沸騰したお湯が器の中に入らないよう、水位と器の高さを確認しておきましょう。はじめから火加減をやや強めにするのは、器と卵液、どちらの温度も上げたいからです。
7. 蒸す
沸騰したら、ふたをする。強めの中火のまま3~4分蒸す。表面が全体に白っぽくなっていることを確認する。ふたをずらして弱火で5~6分ほど蒸す。
途中でふたをずらして蒸気を逃します
ボコボコと大きな音をたて湯が沸いていることを確認したら、ふたをします。卵液が白くなるのは、蒸気が回って温まり始めたサイン。この3~4分で「す」が立つことはありません。ふたの内側の水滴を茶碗蒸しの表面に落とさないように、ふたの扱いには注意をしてください。弱火にしたら、箸をはさんでふたをずらし蒸気を逃がすようにします。このようにすることで鍋の中が100℃以上にはならず「す」が立ちません。湯の泡の音がポコポコと小さくなっていることを確認すると良いでしょう。
8. 具材をのせて蒸す
器を揺らして中央がたわむ程度に固まっていることを確認してから、かまぼこ、しいたけをのせる。取り分けておいた卵液をかける。ふたをして、強めの中火で2~3分蒸す。器を取り出し、余熱で火を通す。最後に三つ葉、柚子を飾る。
蒸気の熱でしいたけと卵液に火を通します
器をゆらしてみて、たわむ程度にゆれたら、卵液は余熱でも火が通るくらいになっています。かまぼことしいたけをのせて沈みそうなら、もう少し蒸します。仕上げの卵液は具材にかかっても構いません。再びふたをして火を強めることで全体に蒸気が行き渡り、後から加えたしいたけとかまぼこと卵液に火が通ります。上面が白くなり器をゆらしても具材が動かないようなら出来上がり。器を取り出し余熱で火を通します。
(1人分熱量193kcal/塩分2.5g/調理時間約40分)※調理時間に昆布を水に浸す時間は含まず。
ヘルシーポイント
具材をまったく入れずに、卵液だけを蒸して、たたき梅やわさびを添えていただくとカロリーを大幅に抑えられます。食欲がなかったり、胃腸が弱っていたりするときにもおすすめです。
料理/小田真規子
撮影/高杉 純 文/峯田亜季 デザイン・コーディング/高橋裕子・長瀬佳奈江(Concent, Inc.)編集担当/杉森一広 市川真規(キッコーマン)
※商品情報は本ページ公開時のものです。公開後にリニューアル、販売終了等になることがありますので詳しくは当社サイトの商品情報をご確認ください。
公開:2022年12月1日