トリュフ×しょうゆ=
オムライス?
「おいしいもの」を考える時、これまでの常識をくつがえしてもいい。
素材のちからとは
素材の生産者や輸入者のそれぞれの製品に対する思い入れや育てる愛情、漁獲・収穫の苦労、生産・加工の難しさ、そうした努力のすべてを“素材のちから”と捉え、メーカー・商社・生産者の商品情報を直接取材して使い手である調理の現場へお届けするフリーマガジンです。
今回は、『素材のちから』第44号(2022年春号)より「キッコーマン ステーキしょうゆ シリーズ」特集記事を抜粋してご紹介します。
「ステーキしょうゆ」シリーズが
〝贅沢〟の要素を加えて進化した
「ステーキしょうゆ」シリーズは26年前、〝肉を「しょうゆ」でおいしく食べて欲しい〟というキッコーマンのこだわりから生まれた。その味わいは時代に合わせて進化し、今では肉に限らずドレッシングやソースをはじめ、あらゆるメニューに使われている。今回こうした歴史の延長線上に「ステーキしょうゆ」シリーズはさらに進化した。
「ステーキしょうゆ」シリーズをそれぞれ試食してみると、どの商品にも外食店で提供されるメニューに価値を加えようとする強いアプローチを感じる。
たとえば冒頭のオムライス、この香りを皆さんにお届けできないのがとても残念だが、テーブルに置いた途端に立ち上るのは〝トリュフ〟の香り。「ステーキしょうゆ 贅沢香る トリュフ風味」に少しだけチキンブイヨンを加えてのばしてオムライスにかけてみた。トリュフと卵の相性のよさは言わずと知れたことだが、このとろとろのオムライスがまとう鮮烈な香りは印象的だ。
通常、オムライスにはトマトケチャップやデミグラスソースを添えることが多いが、おいしいメニューを考える時には、これまでの常識に縛られることはない。「ステーキしょうゆ」を使うことでメニューの価値がぐっと上がった。また、「ステーキしょうゆ」は人気の燻製風味も素早く取り入れている。「ステーキしょうゆ 贅沢香る 燻製しょうゆ仕立て」は燻製しょうゆをつくるところからはじめ、ナチュラルな燻香をメニューに添える。
さらに「ステーキしょうゆ たまねぎ風味」は、なんと50%を超える具材入りで、手づくり感のあるたまねぎのカットにもこだわっている。
このように「ステーキしょうゆ」シリーズは、すべての商品が外食メニューの価値を上げることのできるこだわりの〝贅沢〟を持っているのだ。
しかし、こうした〝贅沢〟つまり高級感は、これまでは厨房の中でつくり出されるものだったはずだ。いったいこの価値ある〝贅沢〟はどのように生み出されるのだろう。商品開発者を訪ねてみよう。
しょうゆメーカーだからこそできる唯一無二の〝贅沢〟をつくり出す。
「キッコーマン食品株式会社」商品開発本部 調味料開発部梅澤 洋貴さん 佐野 晴美さん
「ステーキしょうゆ」という
ネーミングの意味
梅澤 「ステーキしょうゆ」は1996年に、それまでの「ステーキソース」から名前を変えました。これはしょうゆメーカーにしかできないものをつくろうという強い信念からです。
しょうゆはそれぞれに特徴があり、商品開発する際には合わせる素材に適したものを選ぶことにより味や香りを引き立て、逆に言えば選択を間違えると足を引っ張ってしまうことになります。それだけ味に影響力が強いのがしょうゆなのです。
弊社は100種以上のしょうゆの中から選んで味わいをつくり出します。それぞれの「ステーキしょうゆ」は、どれも違う表情をしていますね。色、コク、うまみ、香り、合わせる素材によってしょうゆを選ぶということは、他にはできない〝贅沢〟の要素と言えます。
市場から〝贅沢〟の要素を探し出す
佐野 商品開発では今、何が注目されているかを意識することは欠かせません。そのテーマの一つに〝燻製〟がありました。
苦労したのは自然な燻製の香りを出すことです。「ステーキしょうゆ 贅沢香る 燻製しょうゆ仕立て」には、日本人のDNAに刺さるような燻製の香りを出したかったのです。
燻製のエキスやパウダーを使うと、どうしてもわざとらしい独特な風味がします。そこで燻製したしょうゆをつくるところからはじめ、楢のチップの燻煙で半日以上しょうゆをバブリングすることで香りを移しました。
梅澤 燻香を移すしょうゆには、大豆の旨みを丸ごと引き出したコクのある特選丸大豆しょうゆを選びました。
佐野 さらに外食店のお客様は、普段家では食べられない味を求めていると言うことがありましたので、〝トリュフ〟にチャレンジしてみました。食べた時に初めから終わりまで香りが続くようにトリュフ原料には、凍結乾燥させた黒トリュフを使ったトリュフソルトをはじめ、3種類を使っています。
梅澤 しょうゆは2種の丸大豆しょうゆをブレンドして使います。うまみが強いものと淡色系のおだやかな香りで素材を活かすものです。この二つのバランスをとることによってトリュフの強い個性にも負けずに、しょうゆの風味も立ち上がることでトリュフの香りをさらに押し上げるのです。
〝具材50%以上〟という
途方もないテーマ
佐野 「ステーキしょうゆ たまねぎ風味」はテーマとして〝具材50%以上〟を掲げましたが、それだけ具材を入れるとボトルからうまく出ませんし、液体だけ出てしまって具材が中で止まってしまったり、そもそも具材を50%も入れること自体が難しすぎましたね。
さらに、既製品にありがちな均一すぎる具材感ではなく、まるでシェフがつくるような自然なたまねぎの具材感を出したいと思いました。そのためにソテーオニオンやカットサイズの違うたまねぎなど3種類のたまねぎを使うことで手作り感を実現しながら、具がたっぷりで自然に流れるようにするという点もクリアしました。
梅澤 しょうゆはたまねぎ本来の風味を活かすために、しっかりとしたうまみがある〝高窒素タイプのこいくちしょうゆ〟と、おだやかな香りとまろやかな口あたりでコク深い〝特選丸大豆しょうゆ〟を合わせて使います。たまねぎの優しい甘みを残しながらねぎ臭さも抑えつつ、全体がまろやかに仕上がります。
このように「ステーキしょうゆ」シリーズは素材を深く追求することと、合わせるしょうゆを吟味することで、どの商品もが外食店のメニューの価値を上げる〝贅沢〟を持っています。
ぜひお試しいただきたいと思います。
さて、こうしてつくられた「ステーキしょうゆ」シリーズは外食店でどのように評価されるだろうか。洋風肉バル、カフェ、洋食店で取材した。ご覧いただきたい。
メニューをグレードアップする①
洋風肉バル
「ステーキしょうゆ」を使えば、肉料理に添えるソースを次々に展開できる。
同じ肉の部位でもソースを変化させることで、お客様を飽きさせない多彩なメニューになる。
-
代表取締役 米田 勝栄 さん
-
肉バル×ワイン酒場 東京食堂 五反田桜小路
東京都品川区西五反田2013年2月オープン。肉は地元にある老舗精肉店のものを使いワインと一緒に提供する。フランス産、イタリア産のワインは一切置かず、日本で入手しにくい約50か国のワインを150種類、600本ほどを在庫して、併設するワインショップでも販売。多くの焼き肉店や肉バルがしのぎを削る〝肉の街〟五反田で異彩を放つ肉バルである。
事例を見る
たっぷりと入っているたまねぎの量に驚きました
「ステーキしょうゆ たまねぎ風味」のたまねぎの量を見て、牛のハラミに添える赤ワインベリーソースを思いつきました。それにしても、たまねぎがたっぷり入っていますね。キッチンでつくったような手づくり感がありますから、赤ワインを少し詰めて5種類のベリーを合わせるだけでおいしいソースができあがります。
ソースをつけて食べると言うよりは、グリルした牛のハラミの上にのせてソースの具材と一緒に食べてもらうような感じです。牛のハラミの脂にベリーのフレッシュな甘みとたまねぎの深みのある甘みが重なるおいしさには、思わずワインがすすみますね。
牛ハラミのグリル
赤ワインベリーソース
- 使用商品 ▶
- ステーキしょうゆ
たまねぎ風味
燻製の香りが自然なところがとてもいいと思います
もう一品は、鶏モモ肉を真空してコンフィしたものを、もう一度オーブンでローズマリーと一緒に表面をローストしました。そこに「ステーキしょうゆ 贅沢香る 燻製しょうゆ仕立て」を添えました。ワインを加えようと思いましたが、スモーク感にパンチがありますから何かを加えてバランスを崩すのが惜しいし、とろみもちょうどいいと思います。
燻製の香りが凄くきいているのですが、そこに嫌味や安っぽさはまったくなく、自然のスモーク感が楽しめます。燻製のしょうゆをつくるところからはじめたと伺って納得がいきました。ソースは今まで自分のところで時間をかけてつくっていますが、どうしてもスタッフの人数が限られていますから、これだけ完成度が高いものがあると助かりますね。正直に言って驚きました。
チキンコンフィの燻製ソース添え
表面がパリッと焼けたチキンコンフィは中がやわらかくジューシー。そこに燻製の香りが華やかなコクのある燻製ソースを添えてはどうだろうか。淡白なチキンコンフィが大きく変わる。
- 使用商品 ▶
- ステーキしょうゆ
贅沢香る 燻製しょうゆ仕立て
事例を見る
メニューをグレードアップする②
カフェ
「ステーキしょうゆ」を使えば、洗練されたカフェメニューがもっと提供できる。
〝スパイシー〟な魚料理や〝トリュフの風味〟のパスタなど、香りの要素を巧みに取り入れる。
-
シニアシェフ 長澤 宜久 さん
-
SESSiON
東京都中央区日本橋浜町「SESSiON」は2019年の開店。昔ながらの下町らしさと新しさが入り混じった浜町の街にぴったりと寄り添う街のダイニングだ。ホテルの一階にあるこの店には、ホテルのゲストをはじめ、なじみのご近所さん、小さな子供連れのママや仕事中のビジネスマンも来店する。誰もが気軽に使えて賑わう浜町の街と人に根づく店だ。
事例を見る
「ステーキしょうゆ」を魚料理に
まず、「ステーキしょうゆ オニオン&ペッパー」を使ってカジキのパネをバスク風に仕上げてみました。バスク地方の伝統的な料理ピぺラードをつくり、ミキサーでペースト状にして「ステーキしょうゆ オニオン&ペッパー」と合わせてソースをつくります。「ステーキしょうゆ オニオン&ペッパー」は具材感もあっていい感じでスパイシーなので、アレンジするにはトマトソースなど味がまろやかになるものを加えたら合うと思います。それに色が淡いので、ピぺラードのソースの赤い色が出てインパクトがあります。カジキは前もってコンフィにしてありますのでパサつかずにしっとりとしています。肉料理だけでなく、こうした魚料理にもいいですね。
バスク風カジキマグロのパネ
- 使用商品 ▶
- ステーキしょうゆ
オニオン&ペッパー
トリュフの風味がこんなに簡単に使えるなんて
「ステーキしょうゆ 贅沢香る トリュフ風味」でカルボナーラをつくってみます。通常はベーコンを使いますが大きめの豚バラ肉を使います。豚バラ肉とスライスしたたまねぎを水と白ワインでゆっくりとやわらかくなるまで煮て、煮上がったら「ステーキしょうゆ 贅沢香る トリュフ風味」を加えてマリネしておきます。これを卵黄、生クリーム、パルミジャーノでつくったカルボナーラソースを絡めたパスタの上にどんと盛り付けます。肉を切りながらパスタと絡めて食べると、卵とトリュフの相性のよさを堪能できます。
香り方がお洒落ですよね。トリュフの風味がこんなに簡単に使えるなんて凄く便利です。黒トリュフを使ってこれだけの香りを出そうとすると、目が飛び出しそうなコストになりますから。
豚バラ肉のラグーのカルボナーラ
トリュフ風味
トリュフのソースでマリネした豚バラ肉を小さく切ってパスタに絡める。贅沢なトリュフの香りがなじんだカルボナーラソースは食べる人を虜にする。
- 使用商品 ▶
- ステーキしょうゆ
贅沢香る トリュフ風味
事例を見る
メニューをグレードアップする③
洋食店
「ステーキしょうゆ」を使えば、洋食店の懐かしい味がさらに心惹かれる味に。
丁寧につくり込まれたこの香りと味わいは、老舗に通うお客様にも認めてもらえるだろう。
-
料理長 金久保 智之 さん
-
ドンピエール
東京都中央区銀座ドンピエールは創業38年の銀座の老舗だ。長い歴史のあるこの店には、常連さんがとても多い。昔からサービスの店と言われ、料理はお客様に合わせた味付けと量でお出しするのがコンセプト。柔軟な味のセンスとたくさんの料理の引き出しを持っているからこそ、リピーターの好みに応えることができるのだ。
事例を見る
燻製の風味も加わり味が複雑になって
もう、おいしくなる要素しかありません
私どものオムライスは昔から黒毛和牛のサイコロステーキが中に入っているしょうゆベースのオムライスです。今回、「ステーキしょうゆ 贅沢香る 燻製しょうゆ仕立て」と煮切った酒、普通のしょうゆを1対1対1で合わせてソースをつくり、これを使ってご飯と肉を別に炒めて卵で巻きました。
いつもは甘露しょうゆを使いますが、「ステーキしょうゆ 贅沢香る 燻製しょうゆ仕立て」にも深い甘みがありますので創業の味と離れていませんし、そこに加えて自然な燻製の風味が加わってより深みが出ています。オムライスのおいしさがワンランク上がる感じがします。
黒毛和牛のオムライス(しょうゆ味)
- 使用商品 ▶
- ステーキしょうゆ
贅沢香る 燻製しょうゆ仕立て
お客様の誰もがこの手づくり感は
キッチンでつくったものだと思う
ハンバーグにかけた和風シャリアピンソースは、ハンバーグの肉汁に「ステーキしょうゆ たまねぎ風味」をそのまま加えてバターでちょっとコクをつけただけです。それだけでもの凄い完成度ですね。たっぷりと入っているたまねぎの量が凄くいいと思います。正直に言ってこの手づくり感はキッチンでつくったものだとお客様の誰もが思うでしょう。それくらい自然な感じです。ベイクドワインを使っている感じも分かります。たまねぎの甘みとしょうゆのまろやかなうまみをつないでいますね。
これからはお客様にして差し上げることにも限りが出てくるでしょう。ですから仕込みもやってもらえる事は他に任せてしまって、そこから先の料理のつくり込みをお店の愛情として表現していく時代がきているのだなと思います。
ハンバーグステーキ
和風シャリアピンソース
ジューシーなハンバーグに、まろやかで深い甘さとコクを持つ和風のシャリアピンソースが絡みつく。たっぷり入ったあめ色たまねぎが肉のうまさを何倍にもおいしく感じさせる。
- 使用商品 ▶
- ステーキしょうゆ
たまねぎ風味
事例を見る