素材のちからとは
素材の生産者や輸入者のそれぞれの製品に対する思い入れや育てる愛情、漁獲・収穫の苦労、生産・加工の難しさ、そうした努力のすべてを“素材のちから”と捉え、メーカー・商社・生産者の商品情報を直接取材して使い手である調理の現場へお届けするフリーマガジンです。
今回は、『素材のちから』第41号(2021年夏号)より「デルモンテ リコピンリッチ トマトケチャップPRO」特集記事を抜粋してご紹介します。
トマト量1.5倍でつくる
濃厚ケチャップ。
赤色は深く鮮やか、うまみと甘みは濃厚、酸味はフルーティーでさわやか。食べた瞬間に違いはすぐに分かる。
そもそも〝リコピンリッチ〟って、どういうことなのだろう?
トマトを1.5倍、リコピンも1.5倍
「デルモンテ リコピンリッチ トマトケチャップPRO」は2021年2月、外食店向けに〝プロのケチャップ〟として発売された。
今までトマトケチャップは家庭用も業務用も中身は同じものが使われることが一般的で、容量やパッキング形態によって使い分けられていたように思う。このため過去に 〝PRO〟を商品名にうたったトマトケチャップはおそらくなく、「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」があえて商品名に〝PRO〟と表示するには今までのものとは明確な違いがあるに違いない。
商品名にある〝リコピンリッチ〟という言葉はテレビCMでもよく見かけるが、それにしても 〝リコピンリッチ〟とは、どういうことなのだろう? 通常トマトではなく高リコピン品種のトマトだけを使用しているのだろうか。どうやらそうではなく「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」は、通常のケチャップに比べ1.5倍のトマト量を使ってつくるという。このためリコピンの量も1.5倍とたっぷり含まれているのだ。
味の違いは歴然としている
「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」の赤色は鮮やかで、トマトのうまみには濃厚感があり、甘みにも深みを感じる。通常のトマトケチャップのツンとくるような強い酸味はなく、フルーティーでさわやかな酸味を持っている。なるほど、トマトの大幅な増量がこの味わいを実現しているのだと納得できる。通常のトマトケチャップとの違いは歴然としている。
トマトケチャップはアメリカから伝わった調味料で、ハンバーガーやポテト、ナポリタンやオムライスには欠かせない。その味は記憶にすり込まれるほど馴染みのある味で、トマトケチャップの味を変えてみたいと思ったことは今まで一度もない。
しかし、「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」をテイスティングしてみると、このトマトケチャップを使ったメニューをぜひ食べてみたいと思う。フルーティーなこのケチャップをたっぷりとオムライスにかけてみたいし、このケチャップのうまみと酸味がしっかりと絡まったナポリタンにチーズをかけてみたい。
それにしても腑に落ちないことがある。1.5倍量ものトマトを使いながら、従来のものと同じ粘度に仕上がっているのはどういうことだろう。固形量を増やせばケチャップの粘度は硬くなるはずだ。なぜだろう?おそらくそこに「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」の秘密が隠されているのだと思う。
さらに、〝PRO〟をうたうトマトケチャップには、プロユースのためにもっと計算された組み立てがあるに違いない。そこが分かれば分かるほど、おいしいメニューができあがるのではないだろうか?
そこで、「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」の開発担当者に話をお伺いして、この疑問を解決してみることにした。
プロが求めるのは〝濃くて〟〝赤くて〟〝フレッシュ〟な
トマトケチャップ。
商品技術開発部 食品開発グループ
國武 悟さん
プロが求めるのは〝濃くて〟〝赤くて〟〝フレッシュ〟なトマトケチャップ。
「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」に感じるフレッシュなトマトの濃厚感には、やはり製造上の変革があった。おいしさのために何を変えるか。
従来の概念にこだわらない新たな味づくりは、トマトケチャップに新しいコンセプトを確立した。こだわりを持つプロになら、そのおいしさはきっと分かるはずだ。
〝濃くて〟〝赤くて〟
〝フレッシュ〟な秘密
「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」が〝濃くて〟〝赤くて〟〝フレッシュ〟な秘密は、まず使用する原料にあります。
ほとんどのトマトケチャップは、トマトを砕いて高温で加熱したペーストを使うため、トマトに含まれる酵素の働きが抑制されて、繊維の分解が抑制されてペーストの粘度が硬くなります。
それに比べて「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」は、トマトを砕いてそれほど高くない緩慢な温度で加熱したペーストを使います。
穏やかな温度のためトマトの持つ酵素をしっかりと働かせ、トマトの繊維をどんどん細かくするため粘度が下がります。状態がサラサラしているのでケチャップには向かないとされ、一般的にはトマトソースなどに使われ、ケチャップの原料としては使われてきませんでした。
「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」にはあえてこの低粘度のトマトペーストを使いました。
熱があまりかかっていないためにトマトのフレッシュ感が残り、トマトの味がいきています。
粘度を出すためには通常のトマトケチャップの1.5倍量のトマトを使いますが、このことが凝縮された濃厚なうまみと甘みを生み出すことになりました。
リコピンはもちろん1.5倍、深みのある赤が鮮やかです。ナポリタンをおつくりいただければ、通常のトマトケチャップとの違いがすぐにお分かりいただけます。
自家醸造のパイナップルビネガーを
使用
次は「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」の酸味の違いについてご説明します。
通常のトマトケチャップに使用されている醸造酢は結構ツンとします。それがお好きな方もいらっしゃいますが、苦手な方も結構いらっしゃいます。
ホットドッグやハンバーガーなどには、こうした強い酸味が好まれることもありますが、調理の面から考えると強い酸味で味が方向づけされてしまうことは、メニューの広がりを制限することになってしまいます。
そこで、酸味を和らげまろやかに仕上げるために、弊社の群馬工場で醸造しているパイナップルビネガーを使いました。
弊社のパイナップルビネガーは発酵を重ねているために香気成分と甘みが強く、さらにトマト量を1.5倍にしたことによってたっぷり得られるトマト由来のクエン酸と合わせることで、穏やかでさわやかな酸味の味わいに仕上がります。
最初の一口がとてもフルーティーなのは、ここに秘密があります。
フレッシュ感を守るために
極力熱履歴を抑える新たな製造工程を導入
こうして調合されることで生まれる、トマトのフレッシュな風味やパイナップルビネガーの芳醇な香りをいかすために、製造工程の上で、熱が極力かからないように独自の方法を採用しています。
通常の工程では調合後、殺菌をかけ、液体にまだ熱のあるまま容器に充填し冷却します。冷水のシャワーで冷やしますが容器に入った液の中心部まで冷却するには長い時間がかかりますから、熱履歴がかかってしまうのです。
そこで従来の製造工程ではなく、社外秘となりますので詳細は伝えられませんが工程上で液に最低限の熱しかかからないよう工夫し、最後まで熱履歴を抑え、濃厚なフレッシュ感を実現しています。
プロの皆さんがメニューをつくりやすい
味の組み立てに
「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」の味の組み立ては、その他の点にも細かく配慮しました。
食塩分は通常のトマトケチャップが3.2%であるのに比べて2.1%と少し控えめにして、調理に適した塩分濃度に調整しました。これによってメニューへの応用性も広がると思います。
さらに塩味のまろやかな〝赤穂の天塩〟を使い、適度に香辛料を配合することで、味全体にやさしい輪郭を持たせました。こうしたこだわりを一つ一つ実現させることで、プロの皆さんに進んでお使いいただけるトマトケチャップができたと思っています。
――こうしてできたプロユースのための「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」。さて、プロの皆さんはこれをどう評価するだろうか? どうぞ、ご覧いただきたい。
今までのケチャップに慣れていると、その違いにびっくりします。
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シェフ 榊原 大輔 さん
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レストラン サカキ
東京都中央区京橋開店は1956年という老舗洋食店。榊原シェフで四代目、昼は洋食を、夜はフランス料理を提供。代々続いてきた洋食店のメニューに四谷の北島亭で修業した榊原シェフが、夜はフランス料理をはじめた。人気はポークジンジャー、ハンバーグ、エビフライ。誰もがおいしさを楽しめるアベレージの高いメニューだ。11時半にはお客様の列ができる人気店。
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さわやかな酸味とトマト感の強さが
際立つ
新しいトマトケチャップ
鶏ひき肉と野菜を炒めて、そこにバターライスを入れ、「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」を加えてチキンライスを仕上げてみると、トマトが濃くて味がしっかりしているので、ことさらに塩、胡椒などはしなくてもすぐに味が決まりました。
通常のトマトケチャップってツンと酸味が立ちますよね。それが嫌なので前もってフライパンでケチャップを煮詰めて酸味を飛ばしますが、このケチャップならそういった作業がいらないですね。
トマトとパイナップルビネガーの酸味にはフレッシュ感がありますから、逆にそのフルーティーな酸味と甘みをいかしたオムライスができたと思います。「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」は赤の色が濃いですね、まるでトマトペーストのようです。なるべく熱をかけないようにつくられていると伺いましたが、分かるような気がします。
私どもでは、数日分のナポリタンのソースを一度に仕込みます。玉ねぎとマッシュルームを炒めて白ワインを加え、そこにケチャップを加えて全体が3分の2くらいになるまで煮詰めます。
煮詰めるのはツンとした酸味を取るためと、ケチャップの赤色が薄いからです。そのままスパゲッティに絡めても色が出ませんから。
「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」でやってみると、煮詰めるのは4分の3くらいでいいし、それほど量を使わなくてもナポリタンに色が出ますね。使う量を抑えられるというのは凄いです。
この鮮やかな赤色はどうだろう。トマトの濃さがダイレクトに伝わってくる。フルーティーな甘さは今までのナポリタンにはなかった味わいだ。さらに、このトマトの濃厚感はコストも抑える。
今までのトマトケチャップって、もう味のイメージができているじゃないですか。ずっとそれしか使ってこなかったのですが、このケチャップは濃いし、トマトの味が強いし、酸味もフルーツ系でさわやかだし、凄くいいですね。
通常のトマトケチャップに皆慣れていますから、このトマトケチャップを使うと「随分と違うじゃないか!」と、ちょっとびっくりしますよね。
使用量を抑えられコストがあまり変わらないのであれば、「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」に変えてしまおうかなと思います。
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自然なトマト感が、カルメックスのメニューによく合います。
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オーナーシェフ 高橋 路和 さん
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E・A・T
東京都渋谷区千駄ヶ谷1983年、22歳で渡米しフレンチシェフとしてビバリーヒルズの人気レストランやカリフォルニアの有名レストランで活躍の後、現地でオーナーシェフに。25年ぶりに帰国後、アメリカ人が毎日食べている料理を提供するため、2009年にカリフォルニア・メキシカン(カルメックス)の店“E・A・T”をオープン。店内はいつもたくさんの外国人で賑わう。
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トマトっぽくてフレッシュ感があり
甘ったるくなくて味が調整しやすい
カルメックス(CAL-MEX)は、とてもシンプルな料理の組み立てで、中に入っている具材が明確にビジュアルで分かるのが特徴です。基本的に化学調味料は一切使いません。
ハンバーガーならバンズと牛肉とチェダーチーズ、生の野菜とソースという感じで、目で見てシンプルに分かります。ハンバーガーパティは赤身のグラス・フェッド・ビーフと塩だけで、つなぎは一切入れません。
このハンバーガーは日本で暮らすアメリカ人に、カリフォルニアで日常的に楽しまれている料理を楽しんでもらうためにつくられた。さっぱりとフルーティーに仕上がったこのバーべキューソースは、それぞれの素材の味をやさしく包み込み、カルメックスのシンプルな素材の組み立てと健康感を際立たせる。
牛肉は一番大きな13ミリの穴でひき肉にしていますから、肉がゴロゴロ、噛みごたえがあります。
自然の環境で放牧され牧草だけで育ったグラス・フェッド・ビーフは、オメガ3脂肪酸などの栄養素が豊富で、今アメリカではとても人気があります。
その下にピクルスとフレッシュなトマトとレタス。野菜はたっぷりと牛肉と同じ量をサンドしています。
ソースはバーべキューソースです。「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」、リンゴ酢、ブラウンシュガー、はちみつ、ウスターソース、レモンジュース、あと燻液、それとそこにオリジナルの合わせスパイスを加えて30分ほど煮てつくりました。
このケチャップは本当に濃いですよね。見た目もトマトっぽくてフレッシュ感があります。甘ったるくなくて味が調整しやすい。
ちょうど、甘さを控えめにしようと思っていたところです。赤色が濃くて見た目もよくなるし、ケチャップに濃厚感があるので、加える砂糖の分量が減ります。バーべキューソースにさっぱり感が出ましたね。噛むほどに素朴なうまみが味わえるグラス・フェッド・ビーフのおいしさをたっぷりと味わえると思います。
チリチーズポテトには、フリホーレス・ネグロスという黒インゲン豆を使った私ども特製のチリソースをかけます。さらにハンバーガーに使うバーベキューソースをかけてチーズをのせますが、これも今までよりも甘さが抑えられて食べやすくなったと思います。
アメリカにこだわった店で日本製のケチャップを使うのはかなりの挑戦ですが、おいしいのでこのケチャップに切り替えます。
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トマトにこだわるイタリアンだからこそ、味のよさが分かります。
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オーナーシェフ 石崎 幸雄 さん
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ダ・イシザキ
東京都文京区千駄木16歳で料理の世界に飛び込み、1990年にイタリアへ渡る。2002年、イタリアプロフェッショナル協会よりイタリアマエストロの称号を授与される。2015年3月“ダ・イシザキ”を千駄木にオープン。隠れ家的な一軒家は自宅に招かれるような雰囲気。「お任せします。」の一言でおいしい旬の料理を食べさせてくれる。さらに数多くのレストランのコンサルタントもこなす
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トマト感あふれる穏やかな酸味が
料理の発想を自由にしてくれる
「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」は、酸味が穏やかで凄くフルーティーですね。一番にそれを感じました。
そこで、このケチャップのよさをいかしてイタリア風のナポリタンをつくってみました。
ソーセージとマッシュルーム、ピーマンを炒め、玉ねぎは1個分をスライスしてしっかりと別に炒めて加えます。そこに茹で上げたパスタを加え、具材と和えたら火を止めます。ここからはわざと加熱しません。このトマトケチャップの穏やかでフルーティーな酸味をいかすためです。「リコピンリッチトマトケチャップPRO」と隠し味にシャンパン、オレンジとレモンの絞り汁、胡椒を合わせたソースを絡めて仕上げました。
柑橘やシャンパンの酸味でケチャップの穏やかな酸味はさらに複雑になり、フレッシュなトマトの風味が口の中でグッと上がり鼻に抜けます。通常のトマトケチャップでつくる、いわゆるナポリタンもおいしいですが、トマトの魅力をグッと出したイタリア風ナポリタンはいかがでしょうか。
次は、黒豚のハンバーグです。ハンバーグには、黒豚のひき肉、赤ワイン、「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」、スパイスと塩、胡椒、そしてレモンの皮をすったものと果汁も加えます。
黒豚の甘みのある濃厚な脂をどう楽しむかがポイントですから、合わせるソースが重要です。
「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」、白味噌、醤油、クリームチーズ、赤ワイン、レモン汁、胡椒を合わせてソースをつくりました。
「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」のパイナップルビネガーには完熟した発酵感がありますから、発酵系の素材を重ねてさわやかな中に複雑なうまみと酸味のあるソースに仕上げました。
添えた飲み物は、「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」を麦焼酎で割って冷やしたトマトのカクテルで、イタリアンで食後にグッと飲むグラッパのイメージです。
トマトケチャップはアメリカでつくられたものだが、トマトといえばイタリア料理。トマトを自在に操る料理には、トマトの濃厚なうまみとフルーティーな甘さがなくてはならない。「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」の応用性の広さには驚かされる。
こうして料理やドリンクにまで創作的なことができるのも、「リコピンリッチ トマトケチャップPRO」がトマト感あふれる穏やかな酸味を持っているからです。
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