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あなたのお店にはありますか? 看板メニューの作り方を解説

「看板メニューなくして繁盛なし」と言ってよいほど、お店にとって重要な役割を果たす看板メニュー。とはいえ、メニュー開発に悩んでいるお店も多いのではないでしょうか? そこで、他店とはひと味違うメニュー開発の秘訣について解説します。教えてくれたのは500件以上の繁盛店をプロデュースしてきた、コンサルタントの須田光彦さんです。

目次
  1. 1.お店の「顔」となる看板メニュー。お客さまにとっては店名より重要!?
  2. 2.お店が「作りたいもの」ではなくお客さまが「求めているもの」を作ることがポイント
  3. 3.解説!看板メニューの作り方
  4. 3-1.3つのコンセプトを明確化しよう
  5. 3-2.他店との「差別化」ではなく「特別化」を目指そう
  6. 3-3.まずは原価を考えずに開発しよう
  7. 3-4.味の設計図を作ろう
  8. 3-5.お客さまの心を掴むビジュアルの工夫
  9. 3-6.メニュー名には店名、特長を入れよう
  10. 3-7.赤字覚悟はNG、お客さまが求めるのは低価格ではなくお得感
  11. 3-8.料理のカテゴリーごとに看板メニューを作ろう
  12. 4.お客さまの行動心理を大切に。嫌われなければ飲食店は生き残れる
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お店の「顔」となる看板メニュー。お客さまにとっては店名より重要!?

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お客さまは「あのトンカツがうまい店に行こう」とか「今日はパスタの気分だから、あそこだね」というふうに、食べたいメニューで決めます。店名を覚えていなくても、「とんかつの名店」「○○パスタの店」というようにメニューでお店を認知しているのです。つまり、看板メニューとは店名よりも大事な「お店の看板代わりになるメニュー」です。
魅力的な看板メニューがあれば新規客の獲得はもちろん、「また食べたい」「友達にも教えてあげたい」というリピーターの獲得にも繋がります。

お店が「作りたいもの」ではなくお客さまが「求めているもの」を作ることがポイント

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看板メニューは他店との差別化や集客に不可欠なものとして重視されているわりに、効果的な開発セオリーがあまり知られていません。そのため、お店側の狙いとお客さまのニーズがずれてしまい、空振りになっているケースがしばしばあります。どうして空振りメニューが増えてしまうかというと、お客さまの行動心理が分かっていないから。

「お店側が”うちはパンケーキが自慢”と思って一生懸命に推しても、他にもっと魅力的なパンケーキ店があれば、お客さまはそちらに流れてしまいます。数あるライバル店をしのぐほどの魅力がない限り、お客さまにとっては”普通のパンケーキ”の域を超えず、わざわざ足を運んで食べようとは思ってもらえません。
要するに、お店側が作りたいものを提供するのではなく、お客さまが求めているものを提供していくことが看板メニュー作りでは一番大切なポイントになります」(須田さん・以下同)

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解説!看板メニューの作り方

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①3つのコンセプトを明確化しよう

では、具体的なメニュー開発について解説していきましょう。最初にすべきは「コンセプトの明確化」と須田さん。
「コンセプトには次の3つがあります。これらを具体化していくことで、看板メニューの方向性が定まります」

業態コンセプト(誰に向けての何の店なのか)

ターゲットとするお客さまのペルソナを明確化します。欲張ってターゲットを幅広く設定すると焦点がぼやけてしまうので、あえてピンポイントで絞り込むのがコツ。そして、その人たちにだけハマる店づくりをしていきます。ペルソナに当てはまる要素を持っている人にとって、そのお店は好みやライフスタイルにぴったり合う「他には替えの効かない店」になるので、根強いリピーターを獲得することができます。

商品コンセプト(何を集客商品にして、何を利益獲得商品にするか。どういう仕組みで利益を出していくか)

看板メニューは「集客商品」であるとともに「利益獲得商品」であるべきです。つまり、看板メニューは出れば出るほどお店が儲かる、「経営的においしいメニュー」にするのがセオリーです。 集客商品が明確になればなるほど、お店の認知度が上がります。たとえ店名が覚えられていなくても、「○○の美味しいお店」「〇〇で有名なところでしょ!」とお客さまには認識されていきます。

集客商品は、競合店との差別化や特別感の演出のために、意図的に利益率を少し低めに設定して、コストパフォーマンスを最大化させ、より多くのお客さまのテーブルに商品が届くようにします。この利益率が悪い集客商品ばかりが売れるとお店は儲かりません。そこで、利益獲得商品を設定して意図的に販売するわけです。

軽いものならアミューズプレートや5種の前菜の盛り合わせなど、メインならば豪華な刺身の盛り合わせやミートプレートなど。ある程度の高単価での販売が可能であり、利益額をきちんと獲得できるメニューを置くことで、売り上げと利益獲得の両方の役割を満たし、集客商品の利益率の悪さをカバーすることが、商品コンセプトの狙いです。

最も良いのは、集客商品が利益獲得商品であること。集客も利益獲得も両方をかなえてくれる商品を開発することが最も重要な要素となります。商品コンセプトでは、売り上げと利益を確保するための核となる商品を決めて、商品の大きな方向性を決める作業を行います。

看板メニューは「集客商品」であるとともに「利益獲得商品」であるべき イメージ
メニューコンセプト(どうやってお客さまに売っていくか。どうすれば喜んでもらえる売り方になるか)

とえばお好み焼き屋に行くと、だいたいの人が豚玉とビールを注文しますが、ここで大事なのは「お得なセット商品とお好み焼きが焼きあがるまでの軽いおつまみメニューをおく」こと。 豚玉とビールを単品で頼むと1800円のものが、セットになると1500円なら、「おっ、お得感な商品がある!」と感じて多くの人が頼みたくなるでしょう。この時、売り上げ確保のために、豚玉が焼きあがるまでの時間に2杯目のドリンクのオーダーが入るようにします。

具体的には、早く出せるおつまみや軽めのサラダなどの料理をラインナップし、1杯目のドリンクを飲むときのあてになるような商品を提供します。この「早く出せる」おつまみを出すことで1杯目のビールが進み、豚玉が焼きあがるまでに2杯目のドリンクの注文が入ります。

このように、お客さまがお酒を飲むリズムを作り出すことで、豚玉が焼き上がるまでの時間を稼ぎ、豚玉が出るまでに待っていることへのお客さまのストレスを回避することができます。いろいろな商品を楽しんでいただくために、早く出せる簡単な商品は非常に重要な戦略商品です。一瞬損をしているような1500円のセット商品を販売することで、より多くの商品を注文してもらう“損して得取れの売り方の戦略”を立てていくのがメニューコンセプトです。実際の商品の販売手法を決めて、戦略的な商品の扱い方を具体的に決めていく作業を行います。

おつまみや小鉢、サラダのおすすめメニューに

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②他店との「差別化」ではなく「特別化」を目指そう

パンケーキ店の例で説明したように、ライバル店がたくさんあるなかで「差別化」を図っていくのはとても大変なこと。もはや味や食感の差別化は行きつくところまで行き、今はパンケーキに花火を立ててみたり、きれいな花で飾ってみたりといった、奇抜さを競うアイデア合戦の様相を呈してきました。そうではなく、お客様にとっての特別なメニューになることを心がけるべき、と須田さん。

「例えば今、SNSなどで人気になっているホットドッグ店は、従来のホットドッグの概念を覆す『新ジャンルのホットドッグ』です。今までのホットドッグはコッペパンの間にソーセージとケチャップを挟んだだけの「おやつなのか、食事なのか微妙」なものでした。野菜も摂れないし、1個では大人には足りません。
そうしたお客さまのなかにある『潜在的な不満』を捉え、それを満たすメニューとして、このホットドッグは開発されました。1個で大満足できるボリューム、店内手作りの極太ソーセージ、たっぷり野菜も一緒に摂れる、添加物なし、人に見せたくなるてんこ盛りのビジュアル、といった要素を兼ね備えています。一番人気の看板メニューは1500円近くしますが、それでもお客さまがアップしているSNSには『お得感あり』『一度は食べて損なし』などのコメントが溢れています。『栄養バランスがよくて罪悪感少なめ』という女性のコメントも目立ちます。
こんなふうに、メニュー開発に同じ労力をかけるなら差別化よりも『特別化』を考えるほうが、はるかに効果的です」

③まずは原価を考えずに開発しよう

看板メニュー開発をする際は、「原価のことは考えない」ところからスタートするのが大事です。たとえば原価500円で作ろうとすると、「あれも使えない」「これも予算オーバーで無理」と最初から制限がかかってしまいます。すると、創造力にセーブがかかって斬新なアイデアが出てきません。
「最初は原価を取っ払って、とことん自由な発想で“こんなメニューがあったらお客さまは喜んでくれる”というものを作っていきます。そして、“これだ”というものが決まったら、“じゃあ、お客さまはこれにいくらなら出せるか”を考えて価格を設定します。あとは、価格に合わせて原価を調整していくという考え方です。
原価が高すぎる場合は、提供したい商品価値を維持しつつ、少し具材を減らしたり仕入先を工夫するなどして調整していくと、よいものが作れます」

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④味の設計図を作ろう

看板メニューの味については、「味の設計図」を立てることが大事です。日本人の味覚は6味(甘味、塩味、酸味、苦味、辛味、うま味)で考えますが、全体のバランスを取ったうえで、どれか1つの味を立たせると、エッジの効いた味となります。

「普通にバランスの取れたおいしいものを作ったうえで、あえて辛みを強めにするとか、旨味を最大限に際立たせるようにするのです。すると、食べた人の記憶にインパクトとして残り、「また食べたい」とクセになりやすくなります」

「個性的な味にすると好き嫌いが分かれて、客を選ぶのでは?」と思うかもしれません。しかし、好き嫌いが分かれてよいのです。万人受けの無難な味は「看板メニュー」としては弱すぎるからです。万人受けを狙いたいのであれば、看板メニュー以外のメニューでするのがよいでしょう。

市販の調味料を活用して、オリジナルの味を作るのがオススメ

独自の味の作り方としては、一から自分で手作りするのも悪くはありませんが、より効率的なのは既存の調味料をベースにアレンジを加える方法とのこと。

「私が頻繁に提案しているのは、市販のソースに手持ちの調味料などをブレンドしてみる開発手法です。多くの店ではオリジナルのソースを必要としていますが、そのために手間暇、コスト、労力を割くのかという問題があります。また、最も懸念されることは、常に味を安定させられないリスクを抱えることであり、経営的にも絶対にあってはいけません。しかし、市販のソースを上手に活用することで、これらの問題もリスクも一気に回避することができ、しかも、そのお店オリジナルのソースとして確立させることが可能に。

たとえば、市販のステーキソースに新たな風味を加えてみる、旨味となる素材を加えてみる、濃度を上げたり下げてみる、甘みと照りを出してみる、スパイスを入れてパンチを出してみる、などを行うことで、ベースが市販品とは思えない、まったく違った印象の味を作り出せます。このように市販のステーキソースを上手に活用することで、お店オリジナルのソースが簡単に手間をかけることなく、安価に安定的に作り出すことが可能となります。

市販の調味料は味の完成度が高く、常に一定の味で安定しており、いつでも安定的に手に入るという最大のメリットがあります。看板メニューはお客さまが「噂通りの味か」「この前食べた時と同じ感動を味わいたい」などと期待してくるため、絶対に味のブレがあってはいけません
飲食店は、同じ味をたくさん作り続ける必要があるので、市販のソースを上手に活用することのメリットは、飲食店にとっては大きな味方になるのです」

簡単&魅力的!おすすめアレンジメニュー

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⑤お客さまの心を掴むビジュアルの工夫

ビジュアルはお客さまの心を掴む「第一印象」としてとても大事です。お客さまが「お店に来て食べる」という行動に至るまでにはいくつものステップがあり、この入口になるのがビジュアルだからです。
今はインターネット時代なので、お客さまはインスタグラムやグルメサイトなどを使ってお店の情報収集をします。このとき、ビジュアルがよいと「気になる、食べてみたい」という興味をもってもらえます。その興味が動機となって、メニューの詳細やクチコミを読むことになり、「実際に行ってみよう」となるのです。

「よくあるお店の誤解として“うちは味には自信があるから、食べてもらえば分かる”というのがありますが、マーケティング的にいうと、それはお客さまには通じません。なぜなら、お客さまにとって“おいしさ”という体験は、一番後にくる体験だからです。
食べてみたいと思って→お店について調べて→実際に足を運んで→注文して→出てくるまで期待しながら待ち→口に運ぶ。その後でしか「おいしさ」は分かりません。
つまり、“おいしさ”をイメージできるビジュアル(=「おいしそう」で終わらずに、実際にお店に来て味わうというアクションを生むビジュアル)を作って、メニュー写真などで見せていくことがポイントになるのです」

⑥メニュー名には店名、特長を入れよう

メニューが決まったら、次はメニュー名ですが、「店名」と「メニューの特長」を入れるのがコツです。店名を入れる理由は、「これがうちの看板メニューです」というのが分かりやすくするためです。「メニューの特長」とは、「野菜たっぷり」「産地直送」「グルテンフリー」など、お客さまにとってメリットになる情報のことです。

お客さまの心理のなかには、「損したくない」「後悔したくない」「だまされたくない」という心理があります。時間やお金を使ってお店に来ているので、「それを無駄にしたくない」という想いがあるのです。看板メニューは「ハズレのないメニュー」であるはずなので、お客さまとしてはそれを選びたいと考えます。だから、店内表示やメニューブックを見て、直感的に「これが看板メニューだ」と分かりやすくすることが大事です。

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⑦赤字覚悟はNG、お客さまが求めるのは低価格ではなくお得感

価格を決めるとき「お客さまに喜んでほしいから」「お客さまをびっくりさせたい」という想いから、原価を下回る価格で売ってしまうお店がありますが、「赤字覚悟」「出血大サービス」は絶対にNGです。なぜなら、安さにはお客さまがすぐに慣れてインパクトが長続きしないうえに、お客さまは安売りの理由を想像して商品とお店に対して不信感が発生し、売れれば売れるほどお店は利益を失うばかりで、自らの首を絞めることになるからです。

お客さまが本当に求めているのは、低価格ではなくお得感です。「この商品にこの値段なら良心的」と思ってもらえる価格のラインを見極めることが大事。
もし採算ギリギリで1320円にするなら、いっそのこと1480円にしてしまったほうがいいのです。1320円だと、お客さまは「20円くらいおまけしてよ」と思いますが、1480円なら「1500円のところを企業努力で20円サービスしてくれた」と受け止めます。売価を上げられたことのメリットを商品に反映させて、少し良い食材を使うとか、メインの具材をサイズアップするなどの還元をすれば、商品価値は高まり、お客さまはほぼ確実に喜んでくれます。

⑧料理のカテゴリーごとに看板メニューを作ろう

看板メニューはできればカテゴリーごとに1つ作るのが理想です。居酒屋でいえば「すぐ出てくるおつまみ」「刺身」「焼き物」「揚げ物」「野菜・サラダ」「〆のご飯・麺」のそれぞれで看板メニューを作るのです。そうすると、お客さまはメニュー選びが楽になり、お店も売りたいものを多く売ることができます。

看板メニューを目立たせるために、あえて「捨てメニュー」を作るというのも手です。お客さまは「看板メニューを選ばされた」と感じると冷めてしまい、複数あるなかから「自分で選んだ」と感じると納得感が上がる傾向があるため、わざと看板メニューを選びやすくしてあげるのです。

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お客さまの行動心理を大切に。嫌われなければ飲食店は生き残れる

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コロナ禍以降、飲食店は生き残りが厳しくなっていますが、お客さまの行動心理をふまえてメニュー開発をしていけば愛されるお店、リピートされるお店になっていけます。

「お客さまは日常使いのお店であれば、そこまで毎回の感動を求めているわけではありません。むしろ”安心できる変わらない味”や”はずれがないこと”を求めていることも多いのです。そういう意味では”世の中にないものをゼロから発明”する必要はなく、”身近なものを一段階レベルアップする”ことでも十分に戦っていけます。
、お客さまに嫌われなければ、まちの飲食店はやっていけるということです。ぜひお客さまの気持ちや行動原理をよく観察して、お客さまが求めるメニューを作っていってもらえればと思います」

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監修:須田光彦
年商2,000億円を超える大手外食チェーンから個人企業まで、500件以上の繁盛店を作ってきた実績を持つ。書籍「絶対にやってはいけない飲食店の法則25」(フォレスト出版)

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