JASによるしょうゆの分類
しょうゆを分類する一つの基準として、日本農林規格等に関する法律(JAS法)に基づく「しょうゆの日本農林規格(JAS)」があります。
JASでは大きく分けて「種類」「製法」「等級」によりしょうゆを分類しています
種類(原料-製法)によるしょうゆの分類
JASではしょうゆは「こいくち」「うすくち」「たまり」「さいしこみ」「しろ」の5つの種類に分けられています。
こいくち(濃口)しょうゆ
日本のしょうゆ生産量の8割以上を占め、日本全国で親しまれているしょうゆです。塩味のほかに、うま味、甘味、酸味、苦味を合わせ持ち、透明感のある明るい赤橙色をしています。調理、卓上用と幅広く使える万能調味料です。
うすくち(淡口)しょうゆ
日本のしょうゆ生産量の1割強を占めています。こいくちしょうゆと比べて、色味が淡く、香りのおとなしいしょうゆで、塩分はこいくちしょうゆよりも1割程度高めです。食材の色合いを生かしたい料理に使われます。
たまり(溜り)しょうゆ
色が濃く、とろ味と濃厚なうま味、独特の香りが特徴のしょうゆです。主な原料は大豆で、小麦はごくわずかしか使いません。すし、さしみ、照り焼き、佃煮などに使われます。
さいしこみ(再仕込み)しょうゆ
醸造を二度繰り返すような製法から、さいしこみしょうゆと呼ばれています。別名、甘露しょうゆ、二段仕込みしょうゆとも呼ばれます。食塩水の代わりに生揚げ(きあげ)しょうゆで仕込むことで、濃厚な味わいに仕上がります。さしみ、すしなど、主に、つけ、かけ用に使われます。
しろ(白)しょうゆ
うすくちしょうゆよりさらに色味の淡いしょうゆです。主な原料は、精白した小麦と、少量の炒って砕いた大豆です。淡い色に仕上げるため醸造期間が短く、吸い物や茶碗蒸しなどの料理に使われます。
主力はこいくちしょうゆ
日本のしょうゆ生産量の8割以上がこいくちしょうゆです。関西地方を中心に使われているうすくちしょうゆをはじめ、各地で地域の食文化と結びついたさまざまなしょうゆがつくられていて、それぞれ独特の味わいを持っています。
製法によるしょうゆの分類
JASでは「本醸造」「混合醸造」「混合」の3つの製法が規定されています。
これらの製法は、商品ラベルの一括表示欄に記載されています。
本醸造方式
原料となる大豆と小麦を、麹菌や酵母、乳酸菌などの微生物の力によって、 時間をかけて発酵・熟成させる方式です。
麹菌がつくり出す酵素の働きで、原料大豆のたんぱく質をゆっくりアミノ酸に分解していきます。本醸造方式でつくったしょうゆは色、味、香りすべてにおいてバランスがとれているといえます。
混合醸造方式
本醸造方式でできた「もろみ」に、アミノ酸液(または酵素分解調味液、あるいは発酵分解調味液)を加え、1カ月以上熟成させる方式です。
大豆などに酸を加え、加水分解してつくったものがアミノ酸液です。酸の代わりにたんぱく質分解酵素を用いた酵素分解調味液や、小麦グルテンを発酵、分解した発酵分解調味液を使用する場合もあります。
混合方式
本醸造方式でつくった生揚げ(きあげ)しょうゆに、アミノ酸液(または酵素分解調味液、あるいは発酵分解調味液)を加える方式です。
しょうゆは本醸造方式が主流
日本の伝統的なしょうゆの製法は本醸造方式です。現在、日本のしょうゆ生産量の約8割が本醸造方式です。地域によっては混合醸造や混合という製法が根付いています。
等級によるしょうゆの分類
JASでは、「特級」「上級」「標準」の3等級が規定されています。これらの等級はしょうゆのうま味の指標といわれる「窒素分」 の含有量や色度(「しょうゆの色の決まり」参照)などで区分されています。
JASを受検し認証されたしょうゆはJASマークを商品に記載できます。
「特級」「上級」「標準」の等級も合わせて記載されます。
※JAS等級の製品への表示は任意であり、すべてのしょうゆにJASマークが付いているわけではありません。
窒素含有量はうま味の基準
しょうゆのうま味成分であるグルタミン酸をはじめ、多くのアミノ酸類は窒素が含まれています。すなわち、窒素分の含有量が多いほど、うま味成分の多いしょうゆ、ということがいえ、等級の一つの基準となっています。
特選、超特選とは?
JAS規格により格付けされた本醸造方式によるしょうゆの中で、こいくち、たまり、さいしこみしょうゆでは、窒素含有量が特級規格より10%以上多いしょうゆ(うすくち、しろしょうゆでは、無塩可溶性固形分(エキス分)が特級規格より10%以上多い/糖の添加不可)には「特選」と表示することができます。
さらに、こいくち、たまり、さいしこみしょうゆでは、特級のなかでも窒素分が特級規格より20%以上多いしょうゆ(うすくち、しろしょうゆでは、無塩可溶性固形分(エキス分)が特級規格より20%以上多い/糖の添加不可)には「超特選」と表示することができます。
しょうゆの「色」の決まり
しょうゆの色は、「色度(あるいは色番)」といい、日本農林規格(JAS)において、色の濃淡により「1」から「60」までの番号に分類されています。数値が小さいほど色が濃く、大きくなるにつれ色が淡くなります。
- こいくちしょうゆ
- :18番未満(生しょうゆは22番未満)
- うすくちしょうゆ
- :18番以上(標準)、22番以上(上級、特級)
- たまりしょうゆ
- :18番未満
- さいしこみしょうゆ
- :18番未満
- しろしょうゆ
- :46番以上
しょうゆとその仲間たち
あまくちしょうゆ
うまくちしょうゆ
しょうゆの原料として認められている砂糖類、甘味料などを加えています。
だししょうゆ
昆布しょうゆ
しょうゆにかつお節や昆布などのだしを加えたしょうゆです。だしを入れたしょうゆは、しょうゆのように使われる場合が多く、地域によってさまざまな種類があります。
粉末しょうゆ
しょうゆを粉末化したものです。
インスタントラーメンのスープなどの原料にも使われています。
食べるしょうゆ
さまざまな製法で固形化したしょうゆです。のせる、あえる、炒めるなど、さまざまな使い方ができ、新しい食感や味わいが特徴です。
えんどうまめしょうゆ
食物アレルギーに対応したしょうゆとして、大豆と小麦を原料に使用せず醸造したしょうゆです。
大豆ペプチド減塩しょうゆ
血圧が高めの方の血圧を改善する機能が報告されている「大豆ペプチド」を含む機能性表示食品です。大豆ペプチドは、醸造技術によって生み出しています。
ハラールしょうゆ
アルコール発酵を抑制した独自製法で製造し、ハラール認定を受けたしょうゆです。小麦を一切使わずつくっているため、グルテンフリーしょうゆでもあります。
しょうゆに関するQ&A
「丸大豆しょうゆ」とは
「丸大豆しょうゆ」は、丸のままの大豆を原料として使用したしょうゆです。大豆の油成分の一部が、醸造中にグリセリンなどに変化し、まろやかな風味と深みのある味が特徴のしょうゆになります。また、脱脂加工大豆という、大豆の油成分を取り除いた後の大豆を原料として使用したしょうゆもあります。
「減塩しょうゆ」とは
食品表示法により「減塩しょうゆ」として表示することができるのは、「しょうゆ100g中、食塩量9g以下(ナトリウムとして3,550㎎以下)」と定められており、これはこいくちしょうゆの約50%以下の食塩分に相当します。一方、うま塩やあま塩、あさ塩、塩分ひかえめ、低塩しょうゆといった減塩しょうゆ以外の塩分を抑えたしょうゆの場合、ベースとなるしょうゆの「80%以下の塩分」とされています。
キッコーマンでは、塩分を66%カットした商品もあります。
「有機しょうゆ」とは
有機農産物原料(大豆・小麦)を使い、有機JAS認定の製造工程でつくったしょうゆです。有機JASマークを表示しています。
「魚醤」とは
JASではしょうゆは、大豆・小麦などの穀物原料を使用することとされており、魚介類を原料に発酵、熟成させた調味料はJASでは、しょうゆに分類されません。
しかし、現代のしょうゆのルーツとされる醤(ひしお)は、穀類や魚、肉などを発酵させてつくった発酵食品の総称であったことから、魚を原料とした「魚醤」も広い意味ではしょうゆの仲間といえます。日本には「しょっつる」 「いしる」 「いかなごしょうゆ」といった魚醤があります。
「生揚げ(きあげ)しょうゆ」とは
発酵・熟成させた「もろみ」から搾ったままのしょうゆを「生揚げ(きあげ)しょうゆ」と呼びます。JASでの定義は「発酵、及び熟成させた「もろみ」を圧搾(あっさく)して得られた状態のままの液体」とされており、熱処理などをしていないしょうゆのことを指します。圧搾作業中に「布で包んだ「もろみ」を槽(ふね)の中で積み揚げる」という工程が「生揚げしょうゆ」という名の語源になったといわれています。
生(なま)しょうゆと生(き)じょうゆの違い
「生しょうゆ」にはふた通りの読み方があります。「生(なま)しょうゆ」と「生(き)じょうゆ」です。しょうゆの品質表示基準では次のように規定されています。
まず「生(なま)しょうゆ」は、火入れを行わずに同等の除菌処理を行ったものに使用してよい呼び方です。
一方で「生(き)じょうゆ」は、「本醸造方式」でつくったしょうゆで、大豆、小麦、食塩のみを使用し、食塩以外の添加物を加えていないものを表す呼び方です。また、料理人がしょうゆに“だし”などを加え独自の味にしたてる「合わせしょうゆ」に対して、 「調合していないしょうゆ」という意味の料理用語として「生(き)じょうゆ」が使われる場合もあります。
この他「本醸造方式」でつくるたまりしょうゆに「生引(きび)き」という用語を使ってよいことになっています。
しょうゆのQ&A
キッコーマンお客様相談センター“しょうゆのQ&A”もあわせてご覧ください