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飲食店経営における大きな課題「人手不足」の原因とは?解決策もあわせて解説

飲食店を経営するうえで、アルバイトやパート従業員がなかなか集まらず、頭を悩ませる経営者の方は少なくありません。さらに、現在飲食業界に大きな打撃を与えている新型コロナウイルスの流行もまた、人手不足の要因となっています。
人手不足による弊害は、提供されるサービスの質の低下や、店の存続に関わるものまでさまざま。これらは、飲食店にとって深刻な問題といえます。
この記事では、飲食店における人手不足の原因と解決策について、日々多くの飲食店オーナーから相談を受ける経営コンサルタント・中野裕哲さんにお話を伺いました。

目次
  1. 1.飲食業界における人手不足の原因とは?
  2. 1-1.少子高齢化による人材の減少
  3. 1-2.高い離職率
  4. 1-3.採用のミスマッチ
  5. 2.飲食店の採用に新型コロナウイルスが与えた影響
  6. 3.飲食店の人手不足を解決する方法
  7. 3-1.助成金を活用した福利厚生の充実
  8. 3-2.従業員が働きやすい労働環境を整える
  9. 3-3.SNSをうまく活用する
  10. 4.採用に裏技はない、日頃からの情報のキャッチアップが大事
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飲食業界における人手不足の原因とは?

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日本の飲食業界では、恒常的な人手不足が深刻化しています。
2022年7月に帝国データバンクが実施した調査「人手不足に対する企業の動向調査(※)」では、飲食店の約76%が非正社員(アルバイト・パート)が不足していると回答。これは、他業界の数字と比較しても高い数字です。

飲食店が人手不足に陥れば、従業員一人ひとりの作業が増え、お客様への迅速な対応ができなかったり、料理の提供が遅れたりなど、サービスの質の低下を招きます。
従業員への負担が増えれば、労働環境が悪化し離職につながることも。なかには、人手が足りず店舗の運営がままならなくなり、閉店を余儀なくされるといったケースも聞かれます。

また中野さんによると、東京都がオリンピック開催地に決定した際、インバウンド需要で日本経済が盛り上がりを見せた時期にも、飲食業界の人手不足は深刻だったとのこと。

「日本全体がインバウンド需要で盛り上がり、商業施設や飲食店が次々とオープンしましたが、お店で働く従業員の確保が難しく、人材不足の問題が浮き彫りになりました」

では、飲食店に深刻な影響を与える人手不足は、なぜここまで慢性化してしまっているのでしょう。飲食業界における人手不足の原因としてよく挙げられるのは、以下の4つです

(1)少子高齢化などによる人材の減少
(2)高い離職率
(3)採用のミスマッチ
(4)採用にかかるコスト(費用)の捻出が難しい

※出典:人手不足に対する企業の動向調査(2022年7月) | 株式会社 帝国データバンク[TDB]

(1)少子高齢化による人材の減少

現代の日本では、少子高齢化の影響による労働人口の減少が顕著です。
少子化にともない、一昔前まで店舗運営を支えていた大学生アルバイトの数は圧倒的に減少。飲食店では、従業員の採用対象をシニア世代から外国人まで広げるなどの対策を実施していますが、人手不足を解消するまでには至っていないのが現状です。

中野さんによると「コロナ下で日本に働きに来る外国人やアルバイトで活躍していた留学生は減少しており、国内の労働力に頼る比率が増加したため、少子高齢化による働き手不足がより深刻になっている」のだそう。
このように、少子高齢化による働き手の減少は、人材確保を困難にしている大きな要因となっています。

(2)高い離職率

他の業種と比較しても、飲食業界は離職率が高い傾向にあります。飲食店の離職率が高い要因と考えられるのが、労働環境の問題です。
飲食店は、深夜・早朝営業や24時間営業など営業時間を拡大しており、従業員一人ひとりの労働時間や業務量が過多となっています。また、アルバイトやパートといった非正社員でも、正社員と同等の業務を任されることも珍しくありません。

中野さんは、「正社員の仕事をカバーするために非正社員を雇い入れるので、業務が正社員と同等になってしまうのは致し方ない面がある」と語ります。
さらに、賞与や退職金が出なかったり、一般的な企業と比較して福利厚生があまり充実していなかったりする場合が多いため、離職を選択する人も。
離職率が高いためにお店が人手不足に陥ってしまい、従業員一人頭の業務が増え、さらなる離職につながる負の連鎖が生まれてしまっています。

(3)採用のミスマッチ

飲食店の人手不足の要因のひとつに挙げられるのが、求めている人材を採用できないという、採用のミスマッチです。

飲食業界は、業務量が多く長時間労働、休みがとりにくい、給料が安い…などのネガティブなイメージが定着しているため、求人を出しても応募者が集まりにくい傾向にあります。 さらに、競合する店舗が多いため、経験者やスキルを備えた人材は、取り合いになっているのが現状です。

中野さん曰く、「求める人材がなかなか採用できないため、採用基準を下げた結果、お店と求職者の間でミスマッチが起こり、離職につながってしまうケースがある」とのこと。 たとえ採用できたとしても、長期的に雇用できる人材が集まらないため、人手不足解消には至らないのです。

(4)採用にかかるコスト(費用)の捻出が難しい

採用にあたっては、求人サイトや雑誌に広告を掲載するための費用を捻出しなければいけません。また、利益率が低い飲食業界はすでに人件費が利益を圧迫しており、利益構造にあまり余裕がありません。
結果、採用コストの捻出ができず、採用活動がままならないために、人材不足が解消しない状況を作り出してしまうのです。

実際に、中野さんのもとには、飲食店オーナーから採用コストについての相談も寄せられます。
「とくに個人経営をしている中・小規模の店舗において、採用にかける費用の捻出が難しいことは頭の痛い問題でしょう。
現在は、新型コロナウイルスの影響で事業の縮小を余儀なくされた場合に受給できる『雇用調整助成金(※1)』や、『新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(※2)』などといった救済措置もあります。ですが、制度自体を知らない方や、申請の仕方がわからないという方も少なくないんです」

※1 出典:雇用調整助成金 |厚生労働省
※2 出典:新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金

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飲食店の採用に新型コロナウイルスが与えた影響

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2020年1月以降、新型コロナウイルスの感染拡大により飲食業界は深刻な打撃を受け、採用の面においても影響を及ぼしています。2022年2月に帝国データバンクが調査した「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査(※)」では、新型コロナウイルスの流行により、92.6%の飲食店が個人消費において「マイナスの影響がある」と回答。飲食業界は、いまだ厳しい状況が続いています。

「多くの飲食店が休業や閉店を余儀なくされ、既存従業員の雇用を維持するのも困難で、求人そのものが出せない状態でした」と中野さん。
また、時短要請で労働時間が短縮され、じゅうぶんな給料が貰えなくなり離職する人が増えた結果、店舗運営がままならなくなったケースも少なくありません。

新型コロナウイルス流行後、求職者の仕事選びに対する考えは変化し、感染リスクの懸念や飲食業界の先行き不安から、飲食店でのアルバイトやパートは敬遠される傾向にあるようです。
現在、ようやく客足が戻りはじめている飲食店では、店舗再開に向けて人手が必要となり、再び人手不足が大きな課題となっています。

※出典:新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査(2022年2月)| 株式会社 帝国データバンク[TDB]

飲食店の人手不足を解決する方法

飲食店の人手不足を解決する方法 イメージ

飲食店経営において人手不足は、サービスの質の低下はもちろん、閉店を余儀なくされかねない深刻な問題です。中野さんは、「人手不足解消にはまずなによりも『離職率を低下させること』が重要で、そのための『手段を知ること』が大切」と語ります。

今回、飲食店の離職率を低下させ人手不足を解決する策としてご紹介するのは、以下の3つです。

(1)助成金を活用した福利厚生の充実
(2)従業員が働きやすい労働環境を整える
(3)SNSをうまく活用する

(1)助成金を活用した福利厚生の充実

離職率が高い要因として、一般的な企業と比較し、飲食店は福利厚生があまり充実していないことが挙げられます。離職率を低下させるためには、まず従業員の福利厚生や待遇を改善するのが重要です。

福利厚生は、社会保険や労働保険などの法定福利と、自社が独自に用意する法定外福利の2つに大別できます。法外福利は家賃補助や食事補助、社員旅行などが代表的ですが、中野さんによると「iDeCo奨励金といった、従業員の資産形成に配慮した福利を実施している店舗もある」のだとか。

また、「福利厚生が充実すれば、従業員のモチベーションを高めて離職率の低下を図れるほか、競合他店と求人条件の差別化が図れるため、求職者が集まりやすい」といったメリットもあるのだそうです。

とはいえ、一般企業や大規模なチェーン店と異なり、中・小規模の飲食店において、福利厚生充実のために費用を捻出するのは難しいもの。ですが、補助金や助成金などの制度を活用すれば、福利厚生の見直しを図ることが可能です。

具体的には、非正社員のキャリアアップや待遇改善に関する取り組みを助成する『キャリアアップ助成金(※1)』や、人材確保や定着を目的とした取り組みを助成する『人材確保等支援助成金(※2)』などが挙げられます。補助金や助成金制度をうまく利用し、福利厚生を充実させて離職率の低下につなげましょう。

※1 出典:キャリアアップ助成金
※2 出典:人材確保等支援助成金のご案内

(2)従業員が働きやすい労働環境を整える

従業員の労働環境を整えることは、離職率を低下させるのに有効です。同じような条件の求人があった場合、雰囲気などを含めた労働環境が良いほうに行きたくなるものです。

労働環境を整えるうえで、オペレーションの改善は欠かせません。従業員の負荷を少しでも減らすためにも、キッチン、フロア、バックヤードと、それぞれのセクションでオペレーション効率化を図ることが重要です。マニュアルを作成し共有したり、キッチンの作業導線を見直したり、時短調理製品を使用したりするとよいでしょう。

さらに、予約管理システムやタッチパネル式の注文システム、セルフレジや電子決済の導入など、ITツールを取り入れれば従業員の負担を減らせます。
また、ITツールの導入には、小・中規模事業者がITツールを導入したり、専門家からコンサルティングを受けたりした際、費用の一部が補助される『IT導入補助金(※)』があるので、活用を検討するのもひとつの手です。

「競合となる店舗がどういう待遇で求人を出しているか調べてみるのも大事です」と中野さん。「他社が行なっていて、取り入れられそうな施策はどんどん取り入れていきましょう。飲食店の業務は日々をこなすことで精一杯なところもありますが、少しずつ分析や現在の状況の見直しをする時間を捻出することが重要です」

※出典:IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)

(3)SNSをうまく活用する

お店のPRに利用されるイメージの強いSNSですが、うまく活用すれば、離職率を下げたり採用効率を上げたりする効果も期待できます。SNSで店舗の画像を公開したり、従業員を紹介したりすれば、お店の雰囲気や働いている人のイメージを伝えられるので、採用のミスマッチを減らせます。

実際に、TwitterやInstagramなど、さまざまなSNS上では人材募集の投稿がなされており、採用実績がある店舗は多いようです。中野さんによると「主に採用を目的としてSNSを活用しているお店もあります」とのこと。お店の雰囲気や従業員の仲の良さが伝わるような内容を投稿することで、求職者にここで働きたいと思ってもらえるきっかけにつながります

基本的にSNSは無料で利用できるので、採用コストが捻出できないお店にはとくにメリットといえるでしょう。ただ、SNSには投稿に批判が集まる、いわゆる炎上リスクもあるため、活用する際は注意してください。
▶「SNSを活用した集客対策3つのポイント」記事を読む

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採用に裏技はない、日頃からの情報のキャッチアップが大事

最後に中野さんからメッセージです。
「新型コロナウイルスにより、とくに飲食業界の方には厳しい時代が来ていますが、飲食店というのは人々の生活を豊かにする大切な業種であり、世の中に貢献している仕事だと思います。

採用に裏技はなく、日頃からの地道な動きが必要となります。競合となる企業や店舗の分析、あるいは自店舗の魅力を高めるといった時間を創出し、常に最新の情報が入ってくるルートを作り、情報をキャッチアップする習慣を続けていただくことが重要です。

従業員にも喜んでもらえるお店づくりをすることで、少しずつでも良い方向に向かうのではないでしょうか」

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監修:中野 裕哲
経営コンサルタント、起業コンサルタント®、税理士、行政書士、特定社労士。年間約200件の無料相談受託。起業準備から経営まで多数の経験と複数資格で起業準備から経営までまるごと支援する。

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