しょうゆの染み、どう落とす?
油が混ざった染みも、
プロ直伝の方法でこんなにきれいに

調理中や食事中、うっかりついてしまった「しょうゆの染み」。服によっては目立ってしまうこともありますが、正しい方法で対処すれば、自分でもきれいに落とせます。今回は、基本の落とし方から外出先での応急処置、時間がたった染みの対処法まで、家事のエキスパートである藤原千秋さんに教えてもらいました。染みに関するよくある疑問にも答えてもらったので、いざというときにぜひ役立てて。
しょうゆの染みは
どんな染み?
まずは染みの種類を知ろう
衣類につく染みは、大きく分けて「水溶性」「油溶性」「不溶性」の3種類があります。それぞれ性質が異なるため、染み抜きの際は汚れの種類を見極めることが大切。なお、しょうゆの染みは基本的に水溶性ですが、油を使って調理した料理や、ラー油などを加えたたれなどは油溶性の染みになるため、対処法も変わってきます。

基本のしょうゆの
染み抜き方法
染み抜きはスピードが大事
衣類についたしょうゆが乾くと、繊維に定着してしまいます。時間がたつほど落ちにくくなり、場合によっては変色することもあるので、できるだけ早く落とすことが何より大切です。もし、外出先で染みがついた場合も、後述の方法で応急処置をしておけば安心。

しょうゆの染みは時間がたつと酸化し、たんぱく質が変質して黄色っぽくなってきます。シャツの襟がいつの間にか黄色くなるのと、同じような仕組み。できるだけ早くケアをする必要があるのは、このためです。
家庭にあるものでできる!しょうゆの染み抜きの方法
まずは、しょうゆだけの染みを落とす方法から、綿100%の白いTシャツで手順をご説明します。なお、色柄物の場合も手順に変わりはありません。
【1】
染みがついた面の裏側に、清潔なキッチンペーパーを折りたたんであてる。


このあとたたいて染みを抜きますが、キッチンペーパーは折りたたんで厚みを持たせることで、染みが衣類の裏側まで染み込むのを防ぎます。
タオルをあてる方法もありますが、吸水性の点では紙の方がベター。写真では、キッチンペーパーを5枚重ねてさらに4つ折にして使用しています。
【2】
固く折りたたんだティッシュを水で湿らせ、染みのふちから中心に向けてトントンとたたく。



汚れが広がってしまうので、こするのはNG。たたいて汚れを押し出し、裏側のキッチンペーパーに移すイメージです。染みは外側から乾いていくので、まずはふちからぐるりとたたいていくようにしましょう。ティッシュは全体を水に浸して軽くしぼり、水がしたたらない程度に。途中、乾いてきたら再び湿らせてください。
【3】
染みがある程度薄くなったら染みの戻りを防ぐため、あてているキッチンペーパーをきれいな面に交換する。ティッシュも新しいものに交換し、再びたたく。



上記の手順で、ここまできれいになりました!
【4】
普段通り、洗濯する。

写真左は、しょうゆの染みができて5分ほど経ったもの、写真右は染み抜きと洗濯を終えて乾かしたもの。浸けおきなどもせずに通常コースで洗えば、ここまできれいに。
油が混ざったしょうゆ(=混合汚れ)の染みは?
(料理の食べこぼしなど)
続いては、油が混ざったしょうゆの染みの落とし方。ここでは、しょうゆ+ラー油の染みを落としていきます。
【1】
食器用中性洗剤の薄め液をつくる。分量は水50mlに対し、洗剤1滴くらいで十分。


水では落とせない油汚れに有効なのが、食器用の中性洗剤。食器についた料理の油を落とす洗剤なので、油が混ざった染みにも効果があります。
【2】
しょうゆの染みのときと同様、染みの裏側にキッチンペーパーをあてる。ティッシュを固く折りたたみ、【1】の薄め液に浸したら染みのふちからトントンと叩く。


通常の油汚れなら、この段階でほとんど落とすことができるので、後はいつも通り洗濯するだけ。ラー油のように色素が強い汚れの場合は、次の手順に進みます。

食器用中性洗剤の薄め液を使った後の状態。しょうゆの色はほとんど落ちましたが、中央にはまだラー油の赤い色素が残っています。
【3】
あてているキッチンペーパーを汚れていないものに交換し、液体酸素系漂白剤の原液をつけた歯ブラシで染みをトントンとたたく。



過酸化水素を主成分とした液体タイプの酸素系漂白剤は、基本的に色柄物の衣類にも使えます。歯ブラシでたたくときは、あくまで軽く。力を入れる必要はありません。

酸素系漂白剤を使ったことで、赤い染みがかなり薄くなりました!
【4】
普段通り、洗濯する。※液体酸素系漂白剤を使用しているため、お湯を使うと色落ちしてしまうので常温の水を使う。

染み抜きの前後を比較。ラー油のしつこそうな赤い色素も、すっかりきれいになっています。
外出先での染み抜き
(しょうゆ以外でもOK)
応急処置
外出先での応急処置法
【1】
香辛料や具材のかけらなどの固形物を含んでいる場合は、最初に乾いたティッシュ(なければ紙ナプキンも可)で取り除く。染みの裏側に乾いたティッシュを折りたたんであて、表側を乾いたティッシュで押さえ、汚れを吸い取る。


【2】
裏側のティッシュをきれいな面に変え、表側を水で湿らせたティッシュ、もしくはノンアルコールのウェットティッシュで押さえる。


濡らしたティッシュで押さえると、裏側のティッシュにはさらに染みが移っています。

ティッシュ+水の力で、ラー油の赤い染みが少し残る程度に。あとは帰宅してから、液体酸素系漂白剤を使って落としましょう。

目の前におしぼりがあると、ついこすりたくなるかもしれませんが、染みが広がるばかりか、衣類の繊維が傷む可能性もあるので避けましょう。

こするのと同様、つまんで落とそうとするのもNG。基本は「染みを押さえてティッシュに移す」です。
衣類の素材別!
染み抜き注意ポイント
衣類は素材によって、「繊維の性質」「水や熱、薬品への耐性」が異なるため、染み抜きの方法も変わります。代表的な素材とポイントを、以下にまとめました。
シルク、レーヨン
デリケートで水に弱い素材のため、自宅での染み抜きはあまりおすすめできません。衣類の価格にもよりますが、クリーニング店に依頼するのが最も確実。
ウール
撥水性が高く、染みになりにくい素材。しょうゆなどがついたときは裏側にキッチンペーパーなどをあて、表側から押さえるだけでかなり吸い取ることができます。もし、染みが残ってしまった場合は、クリーニング店への依頼の検討を。
デニムやリネン
色落ちしやすいので、染みをより落とす液体酸素系漂白剤よりも、界面活性剤を使った染み抜き剤がおすすめ。食器用洗剤の中でも油汚れに強い、弱アルカリ性の洗剤でも効果的に落とせます。
ポリエステル、ナイロン、アクリルなど合成繊維
色素が残りやすいので、できるだけ早く染み抜きしましょう。
木綿、または木綿とポリエステルの混紡生地
外出先での応急手順を含め、今回、ご紹介した方法と同じように染み抜き可能です。
染みが残ったら?
水の温度はどれくらい?
染み抜きに関するFAQ
染み抜きにまつわる疑問を、一問一答形式でご紹介します。
Q.時間がたってしまった染みへの対処法は?
A.
まずは染みが乾いた部分を水で濡らしましょう。そこからは油分を含むしょうゆの染みと同じように、界面活性剤入り洗剤の薄め液を使ってトントンと軽くたたいたうえで、液体酸素系漂白剤をつけた歯ブラシで処理します。カレーのように複合的な汚れの場合は、上記の工程の後に一度すすいでから、再び酸素系漂白剤を使いましょう。
Q.一度洗濯機にかけたが、なんとなく染みが残ってしまった……。ここからできることはある?
A.
液体酸素系漂白剤が使える素材なら、まずはこちらを試してみましょう。それでも落ちない場合は、クリーニング店に依頼してください。
Q.応急処置や洗濯時の水の温度は?お湯のほうがよく落ちるの?
A.
冷たい水よりも少しぬるいほうが汚れ落ちは良いですが、お湯と言っても40度以下の「ぬるま湯」まで。これ以上高温のお湯を使うと、たんぱく質を含む染みは熱で固着して落ちにくくなります。なお、液体酸素系漂白剤を使う場合は、色柄物の色落ちや生地を傷める可能性があるため、常温の水を使用してください。
Q.カーペットについたしょうゆの染みへの対処法は?
A.
基本的には、ここまででご紹介した染み抜きの方法と同じ。染みが広範囲にわたるなら、裏側にあてるのはペーパーではなく使い古しのバスタオルなどを使うと良いでしょう。
染み抜きをするときは
あせらずに、
手早く正しい対応を!
しょうゆが服にピッと飛ぶと、しっかり落とそうとあわてるあまり、ついこすってしまうなんてことも。でも、記事で触れたように、ゴシゴシするほど染みを落としにくくなってしまいます。まずはいったん落ち着いて、キッチンペーパーなどに染みを移動させることを第一に考えるようにすれば、しょうゆの染みに悩むことも少なくなるはず。今回、ご紹介した染み抜きテクニック、ぜひご活用ください!

教えてくれた人 藤原千秋さん
住生活ジャーナリスト、ライター、 All About「家事・掃除・子育て」ガイド 。主に住まい・暮らしまわりの記事を専門に執筆して25年余り。現在はライティングのかたわら、監修、企画、広告、アドバイザリーなどの業務に携わる。『家事ずかん750』『家事のきほん新事典』(ともに朝日新聞出版)など著書監修、マスコミ出演多数。
撮影/金田邦男
公開:2025年8月19日
ホームクッキング編集担当より
「しょうゆを扱うキッコーマンだからこその情報を、ちょっと違った切り口で発信してみよう!」そんな思いから今回のテーマが生まれました。大人になっても染みに困る場面は多く、小さなお子さんがいるご家庭ならなおさらかもしれません。覚えておくと役立つテクニックばかりなので、ぜひ気軽に試してみてください。お気に入りの服を守って、これからも安心しておいしい時間を楽しんでいただけたらうれしいです。(編集担当・大津)