炊飯器で手軽にできる、おいしいお米の炊き方
(おむすびの握り方&簡単レシピも!)
いつも、何気なく行っている「炊飯」。でも、本当においしいご飯を炊くなら、気をつけたいポイントがあるんです! 京都の老舗米屋が営む米料亭「八代目儀兵衛」の総料理長・橋本晃治さんに、計量や研ぎ方、ほぐし方といった工程ごとのコツを教えてもらいました。実践すれば、いつものご飯がもっとおいしくなることうけあい!さらに、おいしいおむすびの握り方とレシピも、合わせてご紹介します。
研ぎ、浸水、ほぐし……。
おいしいお米を炊くときに
気をつけたい3つのポイント
橋本さんに聞いたところ、家庭の炊飯器でおいしいご飯を炊く工程の中で大事なポイントは、大きく分けて3つ。ひとつめは「研ぎ方」です。
橋本さん「お米を研ぐときは、ぬかやホコリなどの汚れを取り除きながらも、でんぷん質のうま味は残さなくてはいけません。この研ぎ方として最適なのが、お米を”握っては離す”を繰り返す方法。そうやってお米全体をまんべんなく研いだら、水を3回替えます。この”研ぎ1回、水替え3回”が、おいしい成分を残しながら汚れだけを落とすちょうど良い加減ですね」
続いてのポイントは「浸水」です。
橋本さん「お米を浸水させるのは、お米の芯まで熱を伝えて甘味を引き出すため。熱は水分を通して伝わるので、十分に浸水していないと甘味が少なく、粉っぽい炊き上がりになってしまいます。浸水時間の目安は、季節を問わず、冷蔵庫で60分。特に、夏の暑い時期は雑菌の繁殖を考慮し、冷蔵庫できちんと浸水させましょう」
最後は「ほぐし」。
橋本さん「家庭で炊いたご飯のおいしさを損なう原因のワーストワンが、炊き上がってもすぐにほぐさないこと。そのままにしておくと上がった熱気がふたの裏で結露し、水となってご飯に落ちる”釜がえり”を起こしてしまいます。ご飯がべちゃっとしてしまうので、炊けたらすぐにほぐすことが大事。外気に触れて冷めることでご飯もキュッと締まるので、食感も良くなりますよ」
「八代目儀兵衛」料理長が解説、
おいしいお米の炊き方
手順1:
お米を量る
お米をざるなどに入れ、キッチンスケールで量る。1合=150g。
橋本さん「計量カップだと、すりきりにしても量にばらつきが出てしまいます。重量なら誰でも正確に量れるので、キッチンスケールを使うのがおすすめ」
手順2:
お米を研ぐ
ざるにボウルをセットし、水を一気に入れる。サッとかき混ぜたら、すぐにざるを上げて水を捨てる。
橋本さん「ボウルとざるを組み合わせて使うと、効率良く洗米できます。金属製のざるはお米に傷が付きやすいので、プラスチック製を使うと良いでしょう」
お米をボウルに移し、”握っては離す”を繰り返して、全体をまんべんなく研ぐ。”握って離す”の目安は、2合のときで20~30回。
橋本さん「最初に入れた水には、お米の汚れが多く含まれています。お米は乾物なので最初の水をよく吸います。1回目の水を入れてかき混ぜたらすぐに捨ててください。握るときは力を入れすぎず、お米同士をやさしくこすり合わせるイメージで。なお、”現在は精米技術が高いため、サッと混ぜるだけでいい”という話を聞くこともありますが、それでは汚れが十分に落としきれません」
手順3:
お米をすすぐ
ボウルに水を一気に入れる。
5~6回かき混ぜる。
ざるに移して水を捨てる。
上記のすすぎの工程を3回繰り返した後、しっかり水を切る。
手順4:
水の計量、浸水、炊飯
キッチンスケールで水を量って入れる。水の量は米の重量×1.2倍なので、米2合なら水は360g必要。
ラップをかける。
冷蔵庫に入れて1時間、浸水させる。
炊飯器に移し、早炊きモードで炊く。
橋本さん「水加減は炊飯器の目盛りに合わせる方も多いと思いますが、置き場所が傾いていたり、表面張力が働いたりで、正確に量りきれないこともありがち。お米と同じように、水もキッチンスケールで量るのが確実です。正確な分量で一度炊いてみて、もっと硬めが好みなら水を減らす、柔らかめが好みなら増やすといった形で調整しておくと、いつでも理想のご飯が炊けるようになりますよ。
水の硬度が高いとご飯がふっくらしないので、硬度40以下の軟水が好ましいですね。水道水だと硬度が高いので、浄水器の水を使うのが最も経済的。硬度15~20がベストですが、毎回、ミネラルウォーターにするのは難しいので、こだわりたいなら、吸収されやすい最初の水か、炊くときの水だけに使いましょう。
早炊きモードを選ぶ理由は、浸水を済ませたお米が最もおいしく炊ける方法だから。炊飯器の普通炊きモードに含まれる浸水の工程は加熱を伴うため、炊飯時間が短縮できる反面、ご飯の味を損ねてしまいます。一方、早炊きモードは浸水の工程が省かれているため、工程は炊飯のみ。あらかじめ吸水させておけば不要な熱が加わることもなく、おいしく炊き上げられます」
手順5:
ほぐし
炊き上がったらすぐにふたを開け、ご飯にしゃもじを入れる。
ご飯の粒をつぶさないように、底からすくってかき混ぜる。
橋本さん「炊き上がってすぐのご飯は、しゃもじを入れるだけで簡単にほぐれます。時間が経つと固くなるため、十字に切ったり天地を返したりすることが必要。ご飯にストレスがかかり、食感などに影響してしまうため、炊き上がりにひと混ぜするくらいに留めましょう。一度、ほぐしてしまえば、結露もだいぶ抑えられます。
ご飯が余ったときは冷凍保存を。ご飯は冷めるとでんぷん質が変化して味が落ちてしまうので、熱いうちにラップで包んで冷凍庫へ入れましょう。このとき、薄く平らにして小分けすると、冷凍と解凍にかかる時間を短縮できます。また、金属トレイに載せると冷凍スピードが早くなり、他のものに熱が移りにくくなるのでおすすめ。ラップの上からアルミホイルをかけても良いでしょう」
保存方法は?
無洗米の炊き方は?
気になる疑問に答える、
お米にまつわるQ&A
私たちにとって身近なお米ですが、意外と知らないことは多いもの。上記以外にも疑問に思ったお米と炊飯に関するあれこれを、橋本さんに聞いてみました!
Q. お米の保存方法は?
A.
橋本さん「高温多湿を避けるために、冷蔵庫や野菜室で保存するのが理想的です。保存容器としてよく言われるペットボトルは口が狭く、お米を移し替えるのが大変。麦茶などを入れる冷水筒なら広口で収納しやすいのでおすすめです。
もし2週間ほどで食べきれる量なら、袋のまま保存しても問題ありません。反対に、”田舎からお米が30kg送られてきた”といった場合は保存期間が長くなり、酸化してぬか臭くなることも。量が多いときは布団圧縮袋などを使って、できるだけ空気に触れないようするのも良いと思います」
Q. お米を研ぐとき、水はどれくらい透明になるまですすぐ?
A.
橋本さん「研いだときの水が白いのは、お米の汚れの場合もあればでんぷん質の場合もあります。どちらなのか見分けるのは難しいので、最初にお話しした”研ぎ1回、水替え3回”で行ってください」
Q. 長時間の保温は避けるべき?
A.
橋本さん「ご飯のでんぷん質は保温した状態でも変質します。余ったご飯は熱いうちに冷凍しておくのが、一番おいしく食べられる保存方法。上記でご紹介した手順で、冷凍保存を行いましょう」
Q. 浸水時間を1時間より長くしてもいい?
A.
橋本さん「季節を問わず浸水時間が1時間あれば、十分に水を吸ってくれます。長すぎると雑菌が繁殖しやすくなり、たとえ冷蔵庫に入れておいてもリスクはあるので、あまりおすすめできません」
Q. 無洗米の炊き方には違いはある?
A.
橋本さん「研ぐ必要のない無洗米は、水を入れてすぐに炊けば良いと思われがちですが、省けるのは研ぐ工程だけ。浸水の工程は必要なので、まず水を入れてかきまぜ、すぐに捨ててから浸水させましょう。浸水後は、普通のお米と同じように炊いてください」
料理長直伝!
ふっくらおむすびの握り方
続いて教えてもらったのは、おいしいおむすびの握り方です。「独特な握り方をしている」と言う橋本さんのおむすびをいただいての第一印象は、「えっ、知っているおむすびと全然違う!」という驚きでした。食感がふんわりとしていて、口の中に入れればほろりとほどけます。喉ごしも、とても心地いい。一体、どうすればこんなおむすびができるのでしょう?早速、手順を教えてもらいました。
手順1:
ご飯を丸くまとめる
おむすびひとつ分のご飯を茶碗にとり、ご飯を転がすようにして茶碗を揺する。
茶碗を揺すっているうちに、お米が自然にまとまってくる。
手順2:
おむすびの形に整える
手に水、ひとつまみの塩をつける。片方の手にご飯をのせ、親指のつけ根のふくらんだ部分(拇指球)と中指、薬指の間で軽くはさみながら、もう片方の手も添えて形を整える。
ご飯を転がして成形しながら、きれいな三角形に整える。
ご飯をはさむ位置はこのイメージ。
橋本さん「このおむすびは握るのではなく、米粒を移動させるだけ。ギュッと握るのではなく、いかに空気を残すかが大事になります。最初にご飯を茶碗にとって形をつくったら、あとは手の力を入れずに添えるようにして形を整えます。くずれそうなくらいふんわりしていますが、のりを巻けば形をしっかり保てます。
手につける水の量は、湿らせる程度。つけすぎたと思ったら、両手のひらを一度、打ち合わせると余分な水分が落とせます」
八代目儀兵衛オリジナル
「だしむすび」レシピ3選
最後にご紹介するのは、おいしいだしむすびのつくり方。キッコーマンの調味料を使って、簡単に味わい深いおむすびレシピを3つ、橋本さんに考えてもらいました!ぜひ皆さんも教わった方法で、おいしいだしむすびをつくってみてください。
レシピ1:
旨みひろがる香り白だし だしおむすび
<材料とつくり方>
米2合(300g)は上記の方法で研いでざるにあげる。ボウルに米、水290ml、「旨みひろがる香り白だし」80ml、「国産米こだわり仕込み 料理の清酒」10mlを入れてラップをし、冷蔵庫に入れて60分間おく。炊飯器に移して、早炊きモードで炊飯し、上記の方法でおむすびを握る。
※好みでトッピングや具材を混ぜても。具材を加える場合は、ご飯に混ぜたら10分程おいてから握ると良い。
レシピ2:
濃いだし 本つゆ だしおむすび
<材料とつくり方>
米2合(300g)は上記の方法で研いでざるにあげる。ボウルに米、水330ml、「濃いだし 本つゆ」30ml、「国産米こだわり仕込み 料理の清酒」30mlを入れてラップをし、冷蔵庫に入れて60分間おく。炊飯器に移して、早炊きモードで炊飯し、上記の方法でおむすびを握る。
※好みでトッピングや具材を混ぜても。具材を加える場合は、ご飯に混ぜたら10分程おいてから握ると良い。
レシピ3:
旨み広がるだししょうゆ おむすび
<材料とつくり方>
米2合(300g)は上記の方法で研いでざるにあげる。ボウルに米、水290ml、「旨みひろがるだししょうゆ」30ml、「国産米こだわり仕込み 料理の清酒」10mlを入れてラップをし、冷蔵庫に入れて60分間おく。炊飯器に移して、早炊きモードで炊飯し、上記の方法でおむすびを握る。
※好みでトッピングや具材を混ぜても。具材を加える場合は、ご飯に混ぜたら10分程おいてから握ると良い。
橋本さん「具材はお好みで。今回は『旨みひろがる香り白だし』が具なしで、『濃いだし 本つゆ』にはごま、『旨み広がるだししょうゆ』には鮭フレークと青じそを使いました。ご飯にだしの塩気がついているので、具材は塩味の少ないものが良いと思います」
3食食べたくなる!
おいしいご飯で食卓に笑顔を
橋本さん直伝の技の数々、いかがでしたか?ご紹介したご飯もおむすびも、一度味わえばきっと虜になるはず。
橋本さん「家庭でお米をおいしく炊くのに、特別な技術はいりません。ちょっとしたコツを知って実践するだけで、いつものお米もご飯の味が歴然と変わります。おいしいご飯を食べたいと思う方は、今回ご紹介した方法をぜひお試しください」
取材先/京都祇園・東京銀座の米料亭 八代目儀兵衛
京都の老舗米屋が京都祇園・東京銀座で展開する米料亭。京都の老舗米屋で育った橋本兄弟がタッグを組み、日本米のおいしさを伝えるべく“米”を主役にした料理の数々を提供中。
米料亭 八代目儀兵衛
撮影/金田邦男
公開:2023年3月30日 最終更新:2023年5月11日
ホームクッキング編集担当より
おいしいご飯は和食の基本中の基本ということで、プロに教わる特別企画をお届けしました。浸水は冷蔵庫、そして炊飯器は早炊きモードで……コツの数々、目からウロコでした! 橋本料理長、熱のこもったお話、本当にありがとうございました。そして、当社調味料を使った3つのだしむすび、なんて簡単なのにおいしいのかと。茶碗でくるくるとご飯をまとめるのも楽しいです。(編集長・杉森)