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カリウムが多く含まれる
食品は?
効果的な摂り方や、
主な働きをご紹介

カリウムが多く含まれる食品は?効果的な摂り方や、主な働きをご紹介

人の体に欠かせない栄養素のひとつ、カリウム。体の調子を整えるミネラルに分類され、塩分の摂りすぎを調節するうえで重要な働きを持つなど、さまざまな役割を担っています。では、不足したり摂りすぎたりした場合は、どのような影響を及ぼすのでしょうか?カリウムを多く含む食品や、効果的に摂取する方法、おすすめレシピとともにご紹介します。

カリウムとは?
主な働きと
私たちに必要な理由

細胞、神経、筋肉が正常に機能するのに必要

成人の体内には、約100~150g(体重1kgあたり2g)が含まれているというカリウム。管理栄養士でフードコーディネーターの北嶋佳奈さんによると、「そのうちの約98%は細胞内の液体にある」のだそうです。

北嶋さん「一方、細胞と細胞の間にある液体、細胞外液に多く含まれるのがナトリウム。カリウムは細胞内液、ナトリウムは細胞外液の浸透圧を調整し、それぞれの濃度を一定に保つことで細胞の機能を維持する役割を担っています。

また、カリウムは筋肉や神経への電気信号の伝達にも関わる成分。マグネシウムやナトリウムといった他のミネラルと同じように、筋肉の収縮と弛緩の働きを正常に保ちます」

塩分の摂りすぎを調節するうえでも重要な栄養素

世界的に見て、日本人は食塩摂取量が多いと言われています。健康で過ごすためには減塩を心がける必要がありますが、これにはカリウムの摂取も役立ってくれるのだとか。

北嶋さん「カリウムにはナトリウムを排出する働きもあります。カリウムが摂りすぎた分のナトリウムと一緒に尿として出て行ってくれる、というイメージ。ただし、腎機能が低下している場合はうまく排出できないため、摂取量には注意が必要です」

ちなみに……塩分を摂りすぎるとどうなる?

北嶋さん「慢性的な塩分の過剰摂取は、むくみや高血圧につながることも。さらに、胃がんや腎臓病のほか、動脈硬化からの脳卒中や心臓病など、命に関わる病気を発症するリスクが高まるとも言われています」

写真:カリウムの働き

積極的に摂りたい、
カリウムが多く
含まれる食べ物

健康に暮らしてはいるものの、塩分の摂りすぎが気になる……。そう思うなら、カリウムはぜひとも摂取したいところ。できるだけ効率良く摂取するために、どんな食品に多く含まれるのかを北嶋さんに教えてもらいました。

北嶋さん「カリウムは野菜や果物、いも類といった植物性の食品に多い傾向があります。と言っても、大半の食品に含まれているため、肉や魚といった動物性のものからも摂取可能。下記では、食品分類ごとに特に豊富なものをまとめたので、参考にしてみてください」

食品100gあたりに含まれるカリウムの量は?

写真:食品100gあたりに含まれるカリウムの量

野菜類
北嶋さん「葉物野菜や緑黄色野菜に多く含まれ、ほうれん草、ブロッコリーは特に豊富。ただ、カリウムは水溶性のため、ゆでることでお湯に流出して減る性質があります。ゆで汁をスープなどに使えば摂取できるので、ぜひ活用したいですね」

いも類
北嶋さん「葉物野菜に比べると、ゆでてもカリウムの損失量が少ないいも類。さらに減らしたくない場合は、丸ごとの状態で調理したほうがよいでしょう」

果物類
北嶋さん「バナナに多く含まれるイメージが強いのですが、さらに豊富なのがアボカド。果物はどれも生で食べられるので、流出を抑えてしっかり摂ることができますね」

海藻類
北嶋さん「一見、かなり多く見えますが、これは乾燥状態の数字なので、1食で考えるとそれほど含まれてはいません。また、水やお湯で戻すことで、さらに減ってしまいます」

豆類
北嶋さん「豆類にもわりと多く含まれるカリウム。中でも豆乳は飲むだけで手軽に摂ることができるうえ、加熱しても損失することがないのがうれしいですね」

魚介類
北嶋さん「カリウムは筋肉の細胞内に多く存在するため、魚は脂身の少ない赤身がおすすめ。刺身にして生の状態で食べると、損失を抑えて摂りやすくなります」

肉類
北嶋さん「魚介類と同じように、肉も脂身が少ない部位に多く含まれています。ゆでるとやはり流出するため、ゆで汁をスープなどに使う、煮たりゆでたりせずに焼くといった方法を取り入れましょう」

穀類
北嶋さん「精白していない全粒穀物に多く含まれており、米の場合は胚芽の残った玄米に多く含まれています。パンも白い食パンなどより、ライ麦パンのほうが豊富」

1日にどれくらい
摂ればいい?
不足/過剰だとどうなる?

さまざまな食品に含まれるカリウムですが、適切な摂取量はどのくらいなのでしょうか?

北嶋さん「WHOが高血圧予防として推奨するのは、男女とも1日あたり3510mg以上。日本では生活習慣病を予防する目標量は男性3000mg以上、女性2600mg以上で、一定の栄養状態を維持するために適正とされる目安量は、男性2500mg、女性2000mgとされています」

では、実際はどのくらい摂取できているかと言うと……。厚生労働省が令和元年に実施した『国民健康・栄養調査』によれば、カリウム摂取量の平均値は20歳以上の男性が2439mg、女性が2273mgとなっています。

北嶋さん「男性は目安量よりもやや不足。女性は全体的には目安量に達していますが、若年層は不足傾向にあります。私の所感ですが、男性は野菜不足、若年層の女性はダイエットなどで食事量自体が少ないといった要因もあるのでは?男女とも年齢が上がるにつれて摂取量が増えていくのは、健康への意識が高まるからではないかと思います」

写真:カリウム摂取量のめやす

こんな人はカリウム不足に注意

「野菜や果物を十分に摂っていれば、カリウムが不足することはほとんどありません」と、北嶋さん。反対に、食生活が偏っていたり、食事量が少なかったりすると不足する可能性が高まるそうです。

北嶋さん「一方、十分な量のカリウムを摂っている人でも、塩分の多い食事が続いたときは意識的に摂りたいところ。また、アルコールには利尿作用があり、時には下痢を引き起こすことがあります。これによってカリウム濃度が低下し、低カリウム血症につながるおそれもあるので、お酒を飲んだときもできるだけ摂るようにするとよいと思います」

なお、低カリウム血症の主な症状は、手足のだるさや脱力感、こわばり、筋肉痛といったもの。放置していると重症化のおそれがあるので、症状が続く場合は必ず医療機関を受診し、適切な治療を行うようにしてください。

高血圧が気になる人は積極的に摂取を

北嶋さん「塩分を過剰に摂取すると血圧が上がるため、高血圧の人はカリウムを意識的に摂ることをおすすめします。ただし、腎臓の機能が低下していると摂りすぎはよくないため、あらかじめ医療機関に相談するようにしましょう。

また、高血圧の場合、第一に行うべきは減塩です。”塩分を摂りすぎたけれど、カリウムを多めに摂れば大丈夫”というわけではないので、減塩とカリウム摂取のどちらも心がけるようにしてください」

カリウムを摂りすぎるとどうなる?

北嶋さん「カリウムを必要以上に摂取しても、過剰分は排出されるため、健康な人であれば心配はありません。ただし、腎機能が低下していると排出機能がうまく働かず、不整脈や血圧の低下を引き起こす高カリウム血症のリスクが高まります。そこまで腎機能が低下しているなら、すでに医師から指示が出ているとは思いますが、野菜はゆでこぼすといった方法で摂取量を減らすようにしましょう」

カリウムを
効率良く摂取したい!
摂り方のコツは?

おすすめの調理法は、汁物や蒸した調理

北嶋さん「カリウムは水に溶けやすい性質があるため、食品は生のまま食べるか、蒸す、焼くといった調理法がおすすめです。ゆでたい場合は、ゆで汁をスープなどにして汁ごと食べたり、ゆでる代わりにレンジ加熱を行うようにしましょう。生で食べるとしても、水に長時間浸しておくと流出する可能性があるので、キャベツのせん切りなどもさっと洗って切るだけのほうがいいと思います」

カリウムを手軽に摂取できる食品は?

北嶋さん「飲み物状になっているものは、摂りたいときに摂れる手軽さが魅力。豆乳やトマトジュースなどは塩分を含まないこともあっておすすめです。フルーツジュースも手軽でいいですが、果物はそのまま食べる方が食物繊維なども余すことなく摂ることができ、ジュースとして飲むよりも吸収が穏やかになります。また、ドライフルーツもカリウムの含有量が豊富で、皮をむく必要がなく手軽に食べられます。ただし、食べすぎには注意してくださいね」

写真:カリウムを手軽に摂取できる食品

カリウムに関する疑問、
FAQでお答えします!

カリウムの概要はわかってきたけれど、知りたいことはまだまだ尽きないもの。そんな気になる疑問に北嶋さんが答えてくれたので、FAQ形式でご紹介します。

Q.一日に必要な量は、一度にまとめて摂ってもいいの?それとも小分けにするべき?

A. 北嶋さん「カリウムは水溶性の成分。摂りすぎると尿として体外に排出されるため、こまめに摂るのがおすすめです」

Q.塩気が強いものと同時に摂るほうが、ナトリウムの排出効果は高まる?

A. 北嶋さん「たとえば、脂溶性ビタミンと油を一緒に摂取すると吸収率が高まりますが、カリウムとナトリウムはそういった関係にはありません。そもそも日本人の場合は塩分過多になりやすいので、むしろ塩けの強いものは控えたうえで、意識してカリウムを摂取するのが良いと思います」

Q.毎日の食事で気をつけることはある?

A. 北嶋さん「野菜や果物は、積極的に摂るようにしましょう。ただ、野菜は味つけをして食べることが多いので、一緒に塩分も摂取しがち。その点、果物は調味不要で食べられるのがよいですね。最近は果物を食べる習慣がない人もいますが、意識して摂るようにしたいところ。このほか、例えば朝食時の飲み物をトマトジュースや豆乳に変えるのもいいと思います」

カリウムがたくさん摂れる
レシピを紹介!

アボカドとほうれん草のわさびマヨ和え
【カリウムが摂れるサプリ副菜】

写真:アボカドとほうれん草のわさびマヨ和え

北嶋さん「ほうれん草とアボカドの2つの食材からカリウムが摂れるレシピ。あまり長い時間ゆでず、ゆでた後に流水にさらさず、おか上げで冷ますことでなるべく流出を防ぎましょう。調理時間が短く手軽に作れる点もおすすめ」

ほうれん草と枝豆のおひたし
【カリウムが摂れるサプリ副菜】

写真:ほうれん草と枝豆のおひたし

北嶋さん「枝豆もカリウムを多く含む食品のひとつです。ほうれん草と合わせることで、カリウムを手軽に摂れるヘルシーな一品に。しょうゆをさっと回しかけていただきますが、かけすぎにはご注意ください」

フライド里芋
【カリウムが摂れるサプリ副菜】

写真:フライド里芋

北嶋さん「先にあげたように、いも類の中でも特にカリウムが多い里芋をおいしくいただくレシピ。ゆでるのではなく“揚げる”ことで逃さず摂取できる点がよいですね。塩分が低いのもうれしいポイントです」

まとめ

減塩を心がけたいとき、むくみを取りたいときなどに役立つ栄養素、カリウム。北嶋さんによると、「バランスの良い食事をしていれば、不足する心配はほとんどない」そうですが、野菜を摂る機会が少ない人や、食事量が少ない人は、少し意識して摂取してみては。

北嶋さん「野菜、果物、いも類はカリウムを多く含むものが多いので、この3点セットを何となく頭に入れておけば、必要な量は摂れると思います。一番のおすすめは、減塩とカリウム摂取のどちらもかなう果物。もし糖分が気になるなら、バナナではなくキウイやりんごなど、糖質の少ないものを選ぶと良いでしょう」

ホームクッキング編集担当より

塩分の摂り方と密接に関係しているカリウムについて取材をしました。いろいろな栄養素の役割を知っておくと、「最近足りないかも……」と自然と気づくようになって、栄養バランスのよい食生活に近づけそうですね。豆乳やトマトジュースといった飲料もぜひ活用してください!(編集長・杉森)

写真:北嶋佳奈さん

教えてくれた人 北嶋佳奈さん

管理栄養士、フードコーディネーター。All About「きれいになれる簡単レシピ」ガイド。「こころもからだもよろこぶごはん」をテーマに、美容・ダイエット・健康に関する料理本の出版、雑誌でのレシピ開発やコラム執筆、ラジオ・テレビ・イベントへの出演などで活動中。

撮影/金田邦男
公開:2024年9月19日

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