ビタミンの種類と働き、
食べ物からの効率的な摂り方
私たちの体に欠かせない五大栄養素のひとつ、「ビタミン」。体の調子を整える働きがあると言われますが、具体的にはどのように作用するのでしょうか?また、不足するとどのような影響が?そんな疑問を解消するために、ビタミンの種類や働き、効率良く摂取するコツなどを専門家の方に教えてもらいました。ビタミンがたくさん摂れる人気レシピもご紹介するので、日々の食事にぜひ取り入れてください!
ビタミンとは?
ビタミンは人体の機能を正常に保つために必要な栄養素
●三大栄養素の代謝をサポートする働き
五大栄養素の中で、体の構成要素をつくったり、エネルギー源となったりするのが炭水化物、たんぱく質、脂質。「これら三大栄養素の代謝をスムーズに行うために必要なのがビタミンです」と語るのは、管理栄養士でフードコーディネーターの北嶋佳奈さんです。
北嶋さん「ビタミンはそれ自体にエネルギーがなく、エネルギー源となる三大栄養素の働きをサポートするなど体にとって重要な役割をする栄養素。13種類ありますが、一部を除いて体内でつくることができないため、食べ物などで外部から摂取しないと必要量を確保することができません」
●不足したり、摂りすぎたりするとどうなる?
では、ビタミンが不足すると、体にはどのような影響を及ぼすのでしょうか?
北嶋さん「不足するビタミンの種類によって、何が起こるかは変わってきます。たとえば、まだビタミンの重要性がわかっていなかった時代、白米主体でおかずの少ない食事をしている人は、同じおかずで玄米を食べている人よりも脚気(かっけ)になることが多かったそうです。これは、ビタミンB1不足が原因。ビタミンB1はお米の胚芽部分に多く含まれているため、玄米を精米して白米にするとほとんど取り除かれてしまうんです」
このほかにも、ビタミンA不足は夜盲症を、ビタミンC不足なら壊血病を引き起こすなど、ビタミンが足りずに病気につながる可能性は少なからずあるのだとか。
北嶋さん「また、明らかに病気とまでいかなくても、糖質の代謝を行うビタミンB1が足りていないと、糖質制限などをしていないのに疲れやすくなることがありますし、血流を促すビタミンE不足なら手足が冷えやすくなることも。いずれにせよ、ビタミン不足は体の不調を引き起こす要因になりますね」
もちろん、必要量を超えた過剰摂取にも注意が必要です。
北嶋さん「たとえばビタミンCは、美容の面から多量に摂るのが良いと思う人もいるのでは。ですが、成人だと1日の摂取推奨量は100mgで、多少は摂りすぎても余った分は体外に排出されますが、一度に多量に摂った場合などは下痢を引き起こす可能性もあると言われています。通常の食事であれば過剰摂取は起こらないでしょうが、サプリメントの大量摂取などによって摂りすぎることはあるので、用法用量は必ず守るようにしましょう」
水溶性と脂溶性に
分けられるビタミン。
それぞれの特徴と働き
ビタミンは性質ごとに大別すると2種類がある
13種類あるというビタミンは、大きく「水溶性ビタミン」と「脂溶性ビタミン」の2つに分けられます。北嶋さんによると、これらの違いは「水に溶けやすいか、油に溶けやすいか」なのだとか。
●水溶性ビタミン
北嶋さん「血液などの体液に溶け込んでいる水溶性ビタミン。含まれるのはビタミンB群とビタミンCの全9種類で、その多くは代謝にかかわる働きをもっています。必要量を超えると尿とともに排出されるため、体に蓄積されることはありませんが、その分、不足には注意したいところ。大量に必要ではないものの、食生活が偏っていると脂溶性ビタミンよりも足りにくい性質があります」
●脂溶性ビタミン
北嶋さん「脂溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの4種類。粘膜や骨、血液など、体を構成する要素の健康を保つものが多いですね。水溶性と違って、摂りすぎると体内に蓄積されるため、過剰症に注意が必要。一方で油には溶けやすいため、油と一緒に摂ると吸収率がアップするのも特徴です」
主要なビタミンと効果、
多く含まれる食べ物は?
続いては、ビタミンそれぞれの特徴を北嶋さんに教えてもらいましょう。ここでは、主要なビタミン7種類をピックアップしてご紹介します。
【ビタミンA】粘膜の健康を保つ
北嶋さん「粘膜の健康にかかわるビタミン。粘膜には外部からの異物侵入を防ぐ役割があるので、ビタミンAが不足すると風邪をひきやすくなったりすることがあります。また、夜に見えづらくなる夜盲症を引き起こすことも。レバーやうなぎなどの動物性食品に多く含まれますが、ビタミンAは摂取量の上限がそれほど高くないので摂りすぎには注意しましょう。一方で、にんじんやかぼちゃ、ほうれん草などの緑黄色野菜に含まれるβカロテンは、体内でビタミンAに変換されます。体内で足りていない分だけ変換されるので、摂りすぎるといった心配はありません。
過剰摂取は胎児の先天異常のリスクがあり、妊婦の方で鉄分を摂ろうとしてレバーなどの動物性食品を多量に摂るのはおすすめできません。過剰症を心配するならβ-カロテンの摂取を心がけましょう。ビタミンAは脂溶性ビタミンなので、油と一緒に摂取することで吸収率が高まります」
【ビタミンB1】糖質からエネルギーをつくり出す
北嶋さん「糖質の代謝にかかわるビタミンです。糖質を燃やしてエネルギーをつくるときに使われるため、炭水化物と一緒に摂るとエネルギーへの変換がスムーズになります。一般的な食生活を送っていれば摂取量は十分ですが、不足すると前述のとおり脚気の原因となるほか、エネルギーの変換がうまくできずに疲れやすくなることも。
多く含まれる食品としてはうなぎや大豆が挙げられますが、圧倒的に豊富なのは豚肉。肉類の中でも含有量はダントツです。水溶性ビタミンなので、豚肉を調理するときは、ゆでるより蒸すのがおすすめ。また、刺激成分のアリシンにはビタミンB1の吸収を助ける働きがあるので、にらやにんにく、玉ねぎと一緒に摂るのも良いでしょう」
【ビタミンB2】三大栄養素のエネルギー代謝をサポート
北嶋さん「エネルギーの代謝、中でも脂質の代謝に大きくかかわるビタミン。皮膚や粘膜の健康を保つ働きもあり、不足すると口内炎や口角炎のほか、皮膚トラブルの要因になることもあります。美容面に気を遣っている人や、脂質を多く摂りがちな人は意識して摂取したいですね。
含まれる量が豊富なのはレバーで、納豆も多め。うなぎや卵にも、比較的多く含まれています。ちなみに、納豆に多く含まれているのは、納豆菌がビタミンB2をつくり出すからで、原料となる大豆には納豆ほど多くは含まれていません。こちらも水溶性ビタミンなので、調理のときはゆでるよりも蒸すほうが流出を抑えられます」
【ビタミンC】コラーゲンの合成に使われ、抗酸化作用もあり
北嶋さん「大きな働きは、コラーゲンの合成。コラーゲンは肌のハリを保つイメージが強いですが、軟骨や腱といった体の構成要素をつなぎ止める役割も担っています。また、抗酸化作用があるのも特徴。よく、紫外線を浴びたときはビタミンCを摂取すると良いと言われますよね。これは、摂れば肌が白くなるというより、シミをできにくくするということです。ビタミンCはストレスを受けたときに使われるので、喫煙する人やストレスを感じている人は多めに摂ると良いでしょう。ちなみに、ビタミンCには植物性食品に含まれる鉄の吸収を助ける働きもあります。“貧血気味だけど、レバーなどの動物性食品が苦手”という人は、ほうれん草や小松菜といった鉄を多く含む植物性食品と一緒にビタミンCを摂るのがおすすめ。
他のビタミンと違って、動物性の食品からはほとんど摂取できないのも特徴です。特に多く含まれるのは赤パプリカや黄パプリカで、ブロッコリーや菜の花も多め。果物からも摂りやすく、群を抜いて豊富な黄肉のキウイフルーツを筆頭として、いちご、柿などにも含まれています。水に溶けやすいので、水にさらしたりゆでたりする時間は短めに。また、空気や光にさらされると酸化しやすく、果物を切ったまま数日保存したりすると減ってしまうので避けましょう」
【ビタミンD】カルシウムの吸収を助けて骨を強化
北嶋さん「骨の健康にかかわっており、カルシウムの腸からの吸収を助ける働きがあります。不足すると骨がもろくなる可能性も。太陽光を浴びることによって体内で生成できるという特徴もありますが、日照時間が短い冬や、在宅や夜型の生活で日光に当たる機会が少ない人は意識的に摂りたいですね。
食べ物で多く含まれるのはいわし、サーモン、うなぎ、さんまなどの魚介類で、まいたけやきくらげといったきのこ類もおすすめ。脂溶性のため、油と一緒に摂取すると吸収率が高まりますが、魚はそれ自体に脂が含まれているので、それほど気にする必要はありません。きのこの場合はソテーにしたり、ゆでてからドレッシングなどをかけたりすると効率良く摂取できます」
【ビタミンE】血管をすこやかに保ち、血流を促す
北嶋さん「血管の健康にかかわるビタミンで、毛細血管の収縮や血流を促す働きがあります。抗酸化作用もあるので、美容に気を遣っている人や冷えが気になる人は意識して摂りたいですね。ちなみに、ビタミンA、C、Eはすべて抗酸化作用があり、“抗酸化ビタミン”や“ビタミンエース(ACE)”とも呼ばれます。これらを一緒に摂ると相乗効果により、抗酸化作用がさらに高まるのでおすすめ。
ビタミンEを多く含む食品はアーモンドやアボカドで、かぼちゃ、赤パプリカ、サーモン、うなぎも豊富。脂溶性なので、油と一緒に摂ると効率良く摂取できます。ちなみに、ビタミンEは油漬けツナの缶詰にも含まれていますが、ツナだけでなく漬けられている油にも多少は溶け出ているはず。カロリーを気にせず、とにかくビタミンEを余すことなく摂りたい人は、油ごといただくのも良いでしょう」
【ビタミンK】血液の凝固と骨の健康に作用
北嶋さん「血液の凝固にかかわっており、ケガをしたときにかさぶたができるのはビタミンKのおかげ。また、カルシウムを骨に取り込むサポートもしています。不足すると出血が止まりにくかったり、骨がもろくなったりしがちですが、極端に偏った食生活を送っていなければ過不足の心配はほとんどありません。
豊富に含まれる食品の筆頭が納豆。また、ほうれん草や小松菜、モロヘイヤ、菜の花、春菊など、緑の濃い野菜にも多く含まれています。他の脂溶性ビタミン同様、油と一緒に摂るのがおすすめ。たとえばほうれん草なら、おひたしにごま油を少し足したり、油で炒めたりすると吸収率がアップしますよ」
ビタミンを効率的に摂るならどの食品?
バランスの良い食事を心がけていても、忙しい日々が続くと偏ってしまうことはありがち。そんなときでも、ビタミンを効率良く摂取するには、どのような食品を食べるのが良いのでしょうか?
北嶋さん「ここまででお伝えしたとおり、ビタミンにはさまざまな種類があるため、必要なビタミンを多く含む食品を意識して摂ることが大切。ただし、うなぎや納豆には数種類のビタミンが豊富に含まれているので、これらを選ぶのもひとつの方法です。また、野菜から摂取するなら、ビタミンAの素となるβカロテンに加え、ビタミンCや葉酸など数種類のビタミンを含むものが多い緑黄色野菜がおすすめ。特に野菜が不足しがちな人は、動物性の食品からはほとんど摂取できないビタミンCが不足しやすい傾向にあるので、パプリカやブロッコリー、ミニトマトなどを食べるのも良いでしょう」
ビタミンに関する
「あるある」な
疑問にお答えします
ビタミンに対して抱きがちな疑問も、北嶋さんならスパッと回答!一問一答形式でお届けするので、あなたが気になっていることも、ここで解消できるかも?
Q. 食事からではなく、サプリメントからの摂取でもいい?
A.
北嶋さん「ビタミンに限らず、すべての栄養素に言えることですが、サプリメントだけでの摂取はおすすめできません。栄養学の世界では、今の時点で判明していない栄養素がいくらでもあると言われています。食べ物によっては、どんな働きをするのかわからない栄養素が含まれていることもあるので、できるだけ食品から摂るようにしましょう。サプリメントは”自分の食生活で不足しがちな部分を補う”考え方で、活用を。
また、栄養素はそれぞれが複雑に作用し合って働くため、ビタミン以外の栄養素も摂れる食品を選びたいですね。さらに、咀嚼も大事なこと。固形物を噛んで食べることで消化酵素を含む唾液が出るうえに、食べていることが脳に伝わるので胃酸の分泌にもつながります」
Q. ビタミンを摂取する上での、タイミングなどの注意点は?
A.
北嶋さん「ビタミンに関することで強いて言うなら、水溶性ビタミンはこまめに摂るようにしたいですね。なぜなら、体内に蓄えておくことができないから。一度に大量摂取しても吸収されるのは必要な分だけで、残りは尿と一緒に排出されるので、3度の食事で少しずつ摂るようにしてください」
Q. 野菜や果物は、旬の時期だと含まれるビタミンの量が増える?
A.
北嶋さん「旬の作物は栄養価が高いため、ビタミンの量も増えると言えます。文部科学省の『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』には、旬の冬に採れたほうれん草のビタミンCは可食部100gあたり60mgと、夏採りの3倍の数字が記載されていますね。また、収穫から時間がたって鮮度が落ちると、栄養価も下がってしまうため、買ったままの状態で野菜室に入れっぱなしにするなら、冷凍で保存しておくのが良いと思います」
Q. 名前に「ビタミン」と付かない葉酸やビオチンも、実はビタミンってホント?
A.
北嶋さん「本当です。そもそもビタミンは発見された順に振られた番号の名前に加え、化学名も付けられています。この化学名が有名となり、そのまま呼ばれるようになったのが葉酸やビオチン。それぞれビタミンB9、ビタミンB7という名前ももっています。
ちなみに、ビタミンBはB1からB12まであるものの、実際に存在するのは全部で8種類なんです。“4つどこに行った?”という話になりますが、これは番号が付けられた後でビタミンとする必要がなかったり、ビタミンですらなかったりしたとわかったものが外されているから。B4などは欠番になっているんですよ」
ビタミンがたくさん摂れる
レシピを紹介!
キッコーマンが公開するレシピの中から、ビタミンがたくさん摂れて北嶋さんもおすすめするレシピをご紹介!肉や魚のほか、野菜もしっかり使われていて彩りがキレイな、まさに選りすぐりの3品です。皆さんもぜひ、ご自宅でつくってみてください。
巻き巻きポークチャップ
北嶋さん「長芋、ほうれん草、にんじん、えのきと、主菜でありながらさまざまな野菜やきのこから栄養素を摂ることができるうれしいレシピです。レンジ加熱することで水溶性ビタミンが流れ出ないところもポイント。お弁当のおかずにもおすすめ。野菜が苦手なお子さまでも喜んでくれそうです」
漬けサーモンとブロッコリーのサラダ
北嶋さん「ブロッコリーやトマトといった緑黄色野菜が摂れるレシピです。ビタミンAの素となるβカロテンは脂溶性なので、ドレッシングと一緒に摂れるところがポイント。サーモンからはビタミンB群やビタミンD、Eなども摂取できます。ブロッコリーのビタミンCと合わせて、抗酸化作用の相乗効果が期待できます」
鮭と豚ひき肉の皮なしシュウマイ【肉と魚のヘルシーコラボが人気】
北嶋さん「豚肉と鮭というたんぱく質源を2種類使うことで幅広くビタミンを摂ることができます。にんじん、ブロッコリーといった野菜やしいたけを摂ることができるのもうれしいポイント。蒸し焼きにするので、水溶性のビタミンも逃さず摂取できます」
まとめ
私たちの体を動かすエネルギーの代謝を助け、正常に機能させるビタミン。直接エネルギーとなることはなくても、健康に生きていくためには欠かせない栄養素です。
北嶋さん「ビタミンは野菜や果物から摂取できるイメージが強いですが、実は動物性食品にも含まれています。野菜や果物で何を食べようか悩んだら、色の濃いものや旬のものを選ぶのがおすすめ。また、さまざまなビタミンが豊富に含まれ、手軽に食べられる納豆も優秀な食品です。とはいえ、私たちが生きるためには、さまざまな栄養素が必要なもの。特定の食品にこだわらず、さまざまなものを食べて栄養が偏らないように心がけたいですね」
教えてくれた人 北嶋佳奈さん
管理栄養士、フードコーディネーター。All About「きれいになれる簡単レシピ」ガイド。「こころもからだもよろこぶごはん」をテーマに美容・ダイエット・健康に関する料理本の出版、雑誌でのレシピ開発やコラム執筆、ラジオ・テレビ・イベントへの出演などで活動中。
撮影/金田邦男
公開:2023年10月30日 最終更新:2024年9月30日
ホームクッキング編集担当より
動物性の食材からはほとんどビタミンCが摂れない……ヒヤリとした方、いらっしゃるのではないでしょうか、僕もその一人です。野菜をしっかり摂る、偏りなくいろいろな食材を食べるとなると、やはり「献立」が大事だなと再認識しました。キッコーマンではレシピアプリ「きょうの献立」を公開しています。献立をつくりやすいアプリですので、ぜひご活用ください。さりげないPRで締めくくらせていただきます。(編集長・杉森)