トマトの湯むきの方法を
ていねいに解説。
トマトを扱うコツと
おすすめレシピ3選も
生のままではもちろん、焼いたり煮込んだりと、トマトが活躍する料理はさまざま。特にマリネやトマトソース、冷製スープなどをつくるときは、皮をむく「湯むき」の工程をはさむことで、仕上がりもワンランクアップします。そんな湯むきの方法に加え、選び方や保存のコツなど、トマトをもっとおいしく食べるヒントをずらりとご紹介!「湯むきって、なんだか難しそう……」と思っている人も、思わず試したくなるほど簡単なので、ぜひご一読ください。
トマトの湯むき、
なぜ行うの?
トマトの皮は薄く、包丁やピーラーではきれいにむきにくいため、湯むきのように熱を利用した方法でむきます。皮をむかないまま調理すると、むけた皮の口当たりが気になることがあるので、ソースやスープなどをつくるときは皮を取り除いてから使うのがおすすめ。また、皮をむくことで味がなじみやすくなるという効果もあります。
野口さん「マリネなどの和える料理や、煮込み料理のように味を染み込ませたい場合は、湯むきをすることでよりおいしく仕上げられます。一方、皮を残しておくとパリッとした食感が楽しめるので、サラダなどで使う場合はお好みで残したままでも良いでしょう」
トマトの量で使い分けたい、
皮むきの方法2選
トマトの皮をむくときは、熱湯に入れる湯むきのほかに、直火であぶる方法もあります。数が多い場合は湯むき、少ないときは直火など、状況やご家庭のキッチン環境、仕上がりのお好みに応じて使い分けましょう。なお、これらの方法はミニトマトにも応用できますが、サイズが小さいため、火を通す時間は短めにしてください。
●基本の湯むきの手順
- トマトを洗ってへたをつまみ取り、おしり側から十字の切れ目を浅く入れる。
- 鍋にトマトがかぶるほどの水を入れて沸騰させ、トマトをそっと入れる。
- 皮の切れ目がめくれ始めたところで、湯から引き上げる。目安の時間は20秒弱。
- 氷水で冷やしたら、めくれた部分から皮をむく。
野口さん「複数のトマトの皮をむくときや、コンロがIHのお宅でおすすめなのが、お湯を使う湯むき。へたを取るときに包丁を使うと水っぽくなるので、手でつまみ取るようにしましょう。十字の切れ目は皮1枚分が切れている深さで、長さは3cmもあれば十分。お湯を沸かす時間を短縮したいときは水の量を半分にし、途中でトマトをひっくり返します。お湯から引き上げたトマトを急激に冷やすと、身が締まってむきやすくなるので、氷水を使う工程は省かずに。また、トマトを出し入れするときは熱湯に気をつけながら、おたまなどにのせてそっと行うようにしてくださいね」
●ミニトマトの湯むきの手順
- ミニトマトの場合、切れ目は十文字でなく一文字で。また、切れ目は入れずに爪楊枝を刺して穴を開ける方法も。
- 沸騰した湯にミニトマトをそっと入れる。皮の切れ目がめくれ始めたところで、湯から引き上げる。
野口さん「小さなミニトマトは、普通の大きさのトマトに比べるとあっという間に皮がめくれてきます。沸騰したらすぐ火を止めることで、あわてずに引き上げることができます」
●直火であぶって皮をむく手順
- 洗ってへたを取ったトマトのおしり部分に十文字の切れ目を入れ、へたの横にしっかりとフォークを刺す。
- フォークを手に持ち、まんべんなく回しながらコンロの中火であぶる。
- 全体の皮がめくれてきたら、氷水にとって冷やす。
- 皮がめくれたところからむいていく。
野口さん「トマトをひとつだけ使いたいときに便利な方法。お湯を沸かす手間が省けるうえに、お湯での湯むきと比べ、むいた後の水っぽさを抑えることもできます。あぶるときにしっかり固定できるよう、フォークは深めに刺しましょう。火にかざしているうちに皮が焦げてきますが、表面しかあぶっていなければ、中まで火が通ることはありません」
新鮮&ジューシー!
おいしいトマトの選び方
トマトの鮮度を見分けるなら、まずはへたに注目を。乾燥していて元気がない状態だと、収穫から時間が経っていることが多いので、ピンと伸びて濃い緑色のものを選びましょう。また、果実部分はハリとツヤのあるものがおすすめです。
野口さん「持ったときにズシリと重いトマトは、身がしっかり詰まっていておいしいことが多いですね。また、品種にもよりますが、全体の色が薄いものや、ムラがあるものは早めに収穫されている可能性が。食べ頃のときに収穫された方がおいしいので、赤く熟したものを選びましょう。このほか、おしり部分に表れる“スターマーク”がくっきり出ていると、完熟度が高くて甘いと言われています」
おいしさを長持ちさせる
トマトの保存方法
比較的、日持ちのするトマトですが、適切に保存すればおいしい状態を長くキープできます。寒い場所が苦手なので、真夏以外は冷蔵庫に入れる必要はありません。また、冷凍で保存する方法も。冷凍保存は、皮がむきやすくなるという、プラスαのメリットもあるんです!
●常温保存
- トマトを洗って水分を取り除き、キッチンペーパーで包む。
- ジッパー付き保存袋に入れて口を閉じ、涼しい時期は冷暗所で、それ以外は野菜室で保存する。保存期間の目安は3~4日。
野口さん「キッチンペーパーが余計な水分を抑え、ジッパー付き保存袋が乾燥を防ぎます。洗ったときの水が残っていると傷みやすいので、しっかり拭き取りましょう」
●冷凍保存
- まずはへた取りから。へたのすぐ近くから中心に向け、包丁の刃先を斜めに入れる。
- へたの周囲に添って刃を進める。
- 包丁の刃が1周し、へたが円錐状に取れた状態。
- ジッパー付き保存袋に入れて口を閉じ、金属トレイに載せて冷凍庫へ。保存期間は約1か月。
野口さん「雑菌が繁殖しやすいへたを取ってから冷凍することで、より長持ちさせられます。へたを取るときは、まな板に載せてトマトを安定させましょう。へたの芯部分は意外と深いので、しっかり刃を入れて。大きな包丁は使いにくいので、小回りの利くペティナイフなどがおすすめです。なお、冷凍時は金属トレイに載せることで、凍るまでの時間が短縮できますよ。
冷凍したトマトは食感が変わるので、ソースや煮込み料理などに向いています。私はきゅうりなどの夏野菜やペッパーソースと一緒にジューサーにかけて、ガスパチョ風の冷製スープやパスタソースにすることも多いですね。なお、凍ったトマトは包丁を入れにくいので、半解凍にしてから切るようにしましょう」
●冷凍トマトは皮がスムーズにむける!
冷凍したトマトの皮むきはとっても簡単。トマトをボウルに入れて流水に当てれば、まるで湯むきをするときのように、へたの部分からするんとむくことができます。余ったときに冷凍しておくだけで、皮むきの手間が抑えられるのはうれしいポイント!
トマトにまつわるその疑問、
FAQ形式でお答えします!
Q.トマトを切るときに種(ゼリー)の部分がべしゃっと崩れてしまい、きれいに切れない……。
A.
野口さん「トマトを横半分に切ると、壁があっていくつかの空間に分かれています。この壁の部分を切れば、種はほぼ出ません。均一の大きさにはできませんが、一口大のサイズになるので、生野菜サラダのトッピングなどにぴったり。水っぽさがなくなり、味がぼやけにくいのもメリットです」
Q.料理によってはトマトの種を取る、と聞いたのだけれど、どんなときに取ればいい?
A.
野口さん「和え物のように味を薄くしたくない料理や、あまり汁気を出したくない炒め物などをつくるときですね。また、種部分の食感や見た目が苦手な人もいるので、その際は種を取っておくとよろこばれると思います。取り除いた種は、スープなどの汁物に入れるのがおすすめ」
●種を取る手順
- 洗ってへたを取り除いたトマトを、横半分にカットする。
- スプーンで種をすくって取り出す。
- 種を取り除いた状態。
Q.トマトを薄くカットするコツは?
A.
野口さん「切る場所に包丁の刃で切り込みを入れ、印を付けてから切るとトマトがぐらつきません。また、切り進めるうちにトマトが小さくなったら、逆側から切るようにすると安定して切りやすくなります」
前菜にも
メインディッシュにも!
トマトを使った
おすすめレシピ3選
料理に彩りをプラスしてくれるトマト。酸味やうま味、甘味ももちあわせているので、さまざまなメニューにも活躍してくれます!ここでは、トマトを使った料理の中からおすすめの3品をご紹介しましょう。
色とりどりのミニトマトで見た目にもおいしく!
『カラフルトマトのだしマリネ』
野口さん「めんつゆを使ったカラフルでかわいいマリネは、だしが効いて和食とも洋食とも相性の良い料理。つくりおきできるからおもてなしにもぴったりなので、レパートリーに加えておくのもおすすめです。この写真のようにハーブを加えてオリーブオイルを回しかけるアレンジもおすすめです」
トマトのW使いで味わいアップ!
『丸ごとトマトのチキンカレー』
野口さん「インパクト大の丸ごとトマトは、しっかり煮込むことでよりおいしく仕上がります。『デルモンテ・リコピンリッチ トマト飲料』を入れることで、うま味がさらにアップしているのもポイント。トマトの酸味が程よく残っているので、さっぱりした味わいを好む人にも受けそうですね」
グリーンに映えるトマトの赤で彩りよく
『トマトドレッシングの温野菜サラダ』
野口さん「ほろ苦いエンダイブを使った大人向けの味。もし手に入らない場合は、フリルレタスなど、お好みの葉物野菜を使っても良いでしょう。皮も種も取り除いたトマトのドレッシングは、冷製パスタやチキン、白身魚のソースにしてもおいしいですよ」
トマトの栄養素をおいしく摂取できる副菜レシピも!
トマトの皮むきを
マスターして、
料理をもっと
おいしくしよう!
野口さん「サラダに使われることが多いトマトですが、加熱してもおいしくいただけます。湯むきなどで皮を除いてから使うと、料理の完成度がグンと上がりますし、思った以上に簡単にできるので、まだ試したことがない方は、ぜひ一度チャレンジしてみては。冷凍したトマトなら皮むきはもっと手軽になるので、安い時期にたくさん買ってストックしておくのもおすすめです!」
教えてくれた人 野口英世さん
料理研究家、フードスタイリスト、 All About「簡単スピード料理」ガイド 。無理や無駄のない、つくり手重視の効率的なレシピとスタイリングアイデアにファンも多く、テレビや雑誌、新聞、広告などで活躍中。近著に『turk フライパンクックブック』『使いやすい台所道具には理由がある』(ともに誠文堂新光社)などがある。
撮影/金田邦男
公開:2024年4月17日
ホームクッキング編集担当より
ホームクッキングにはトマトを加熱調理に使ったおいしいレシピもたくさん公開しています。皮をむかずに加熱しているもの多いのですが、今回紹介したように皮をむくと、「パツン」とした皮の食感がなくなって、ぐんとなじみやすくなるはずです。トマトは生食じゃないとどうもね、という方はぜひお試しください。うま味たっぷりのトマトの活用シーン、広がると思いますよ!(編集長・杉森)