野菜、足りていますか?
1日に必要な野菜摂取量350gを無理なく食べるコツ
野菜の摂取量は、1日350gが目標。そう耳にしたことがある方も多いと思います。でも、実際はどのくらいの量なのか、わかりづらくありませんか? そもそも、なぜ350gなのでしょう? そんな「1日に必要な野菜摂取量350g」にまつわる疑問を、専門家の方に聞いてみました。無理なく食べるコツ、おすすめレシピとともにご紹介します。
1日の目標量「野菜350g」
ってどれくらい?
なぜ野菜摂取目標量は350gなの?
栄養学の専門家として、女子栄養大学栄養科学研究所 客員研究員であり管理栄養士の資格も持つ平井千里さんに教えていただきました。
まず、野菜の摂取量としてよく言われる350gは、厚生労働省が健康づくりのために提唱した『健康日本21』で、目標値として掲げられているもの。カリウムや食物繊維、ビタミンなど、健康を維持する栄養素は野菜から摂取されやすいことから、そのために必要な量として算出された数字です。
平井さん「日本人の平均野菜摂取量は、1日あたり280gほど。一方、野菜を使った副菜も1皿およそ70gなので、足せば350gとなります。このワン・モア・ディッシュで不足分を補えるので、いつもの食卓に野菜料理を1品足してみてはいかがでしょうか」
350gの内訳は?
緑黄色野菜とその他の野菜の
摂取目安
前述の『健康日本21』では、カルシウム源として緑黄色野菜の摂取目標値を1日120g以上としています。これを350gに当てはめると、緑黄色野菜を120g+淡色野菜を230gが内訳の目安と考えられるとのこと。
平井さん「緑黄色野菜は脂溶性ビタミンが多く、淡色野菜は水溶性ビタミンが多いという違いはありますが、まず大切なのは野菜不足を解消することです。ただし、ビタミンやミネラルといった栄養素は、野菜ごとに含まれる成分や量が変わってきます。そのため、理想としてはできるだけいろいろな種類の野菜を摂ることを推奨しています」
なお、緑黄色野菜とは、可食部100g中にカロテンを600μg(マイクログラム)以上含む野菜の総称。一般的なものとしては、ほうれん草、にんじん、かぼちゃ、小松菜、ブロッコリーなどがあるほか、カロテン含有量は600μg未満でも食べる頻度が多いトマトやピーマンといった野菜も含まれています。
その他の野菜となるのが、淡色野菜とも呼ばれるもの。キャベツや白菜、きゅうり、なす、だいこん、玉ねぎなど、多くの種類が挙げられます。
実際の350gはどれくらい?
編集担当で調べてみました!
野菜350gと言われても、あまりピンとは来ませんよね。そこで実際にいくつかの野菜を計って、どのくらいの量になるのかを確認してみました。それが下にある2枚の写真。どちらの内訳も、目安として緑黄色野菜120g、淡色野菜230gにしています。※実際には可食部の合計で350gが推奨量になります、写真はイメージです。
- ▼緑黄色野菜
- ほうれん草
- 1株
- ブロッコリー
- 2房
- ピーマン
- 1/2個
- トマト
- 1/4個
- にんじん
- 1/3本
- ▼淡色野菜
- キャベツ
- 1/8個
- 玉ねぎ
- 1/4個
- 長ねぎ
- 1/4本
-
▼緑黄色野菜
- かぼちゃ
- 1切れ
- ピーマン
- 1/2個
- ブロッコリー
- 2房
- にんじん
- 1/3本
- トマト
- 1/4個
-
▼淡色野菜
- キャベツ
- 1/8個
- 長ねぎ
- 1/4本
- 玉ねぎ
- 1/4個
いかがですか? 「こうして見てみると、意外に少ない」と思った方は、普段からしっかり野菜を食べているのかもしれません。反対に、「ちょっと多いかも」と感じた方は、記事後半に 野菜350gを無理なく食べるコツ をご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
野菜に含まれる栄養素は?
どんな働きがあるの?
野菜には食物繊維、ビタミン、ミネラルなどの栄養素が
含まれている
種類によっても変わりますが、野菜に含まれる代表的な栄養素として挙げられるのが、ビタミン、ミネラル、食物繊維。いずれも体内で生成できないため、食品などから摂取する必要があります。
平井さん「ビタミンやミネラルは、食べたものをエネルギーに変換する代謝機能のコントロールに必要な栄養素です。そして腸内環境を整えるのが、食物繊維。消化されることがなく、腸内の不用物を毛糸玉のようにからめ取って出ていく働きがあります。これらの栄養素は、そういった理由から生活習慣病の予防に効果的だと考えられています。
また、野菜はエネルギー源となるたんぱく質、脂質、炭水化物を含む量が少ないのも特徴。カロリーは低いものの、かさがあって満腹感が得られるため、食べ過ぎを抑える効果も期待できます」
食事のときは野菜から食べたほうがいいってほんと?
食事の際、野菜から食べることを勧められることはありますが、これはなぜなのでしょうか?
平井さん「ベジファースト、野菜ファーストなどと呼ばれる方法ですね。カロリー源のない野菜から摂取すると、血糖値の急上昇が抑えられ、生活習慣病や肥満などへのリスクが下げられます。このときの野菜は、生でも加熱していても構いません」
野菜350gを上手に
摂るコツとは
続いて伺ったのは、無理なく350gの野菜を食べるコツです。こちらは、一問一答形式でご紹介しましょう。
特に、どんな野菜をどれくらい摂るのがおすすめ?
平井さん「前述のとおり、野菜に含まれる栄養素はさまざま。どれか特定のものが優れているというわけではないので、まずは手に入りやすい、旬の野菜を食べていただくといいでしょう。旬を迎えた野菜は安価で、栄養価も高いと言われています。たとえば、冬が旬のほうれん草は、ビタミンCの含有量も増えるもの。実際に、文部科学省の『日本食品標準成分表』には通年のほか、夏、冬でも記載があるんですよ」
上手にこの量を摂るにはどうしたらよい?
平井さん「手間をかけたくないなら、生の状態で食べることです。レタスを手でちぎったり、きゅうりやトマトを丸かじりしたりするのが一番簡単。ただ、生野菜ばかりでは飽きてしまいますし、かさがあってあまり食べられないので、火を通すのもよいでしょう。加熱すると栄養素が壊れるのでは、と心配するかもしれませんが、完全になくなるわけではないですし、食べられる量も増やせるというもの。特に子どもや高齢者など、食の細い方、かんだり飲んだりする力の弱い方に向いていますね。
自炊するなら、もう一品野菜を追加してみては?調理方法に決まりはないので、煮ても焼いていいですし、味付けに変化をつければ飽きずに食べられます。また、ラーメンをゆでる時に野菜を加えたり、主菜のお皿に添えたりしてもよいでしょう。付け合わせだと量はそれほど多くないですが、野菜の色が加わることでワンディッシュでも華やかになります。おいしそうと思って食べることは大切なので、ぜひ実践したいですね。外食のときも意識して、野菜の副菜が付いた定食を選んだり、小鉢を追加で頼んだりしてもいいでしょう」
1日に350gって、実際にはなかなか難しいと感じてしまうのですが?
平井さん「朝はトーストと牛乳、昼は牛丼、夜はラーメンとぎょうざ……なんて食生活を送っている方もいるかもしれません。それならまずは1皿、いつもの食事に野菜をプラスするワン・モア・ディッシュを実践して見ましょう。1皿70gなら、5皿で1日分を達成できます。コンビニの冷凍野菜やカット野菜でも構いません。大切なのは意識することなので、ぜひ気をつけてみてください」
ホームクッキング通信 では、野菜の冷凍保存のコツなどもご紹介しています。安いときや購入できるタイミングで野菜を購入し、冷凍保存しておくなどの方法もおすすめです。
目指せ、350g!
野菜がたくさん摂れるレシピをご紹介
豚こま肉となすと
小松菜のふんわり卵炒め
レンジで簡単!
野菜たっぷりミルフィーユ
豚しゃぶ
やさしい味わい!豆乳ポトフ
平井さん「材料を用意しやすいですし、つくり方も野菜を切って煮ればOKなので難しくありません。寒い季節にはおすすめです」
野菜をどれだけ摂っているのか、まずは意識してみよう
平井さん「野菜は意識していないと、なかなか量を摂れないもの。価格高騰などで手が出づらいときもありますが、野菜を摂らないと生活習慣病のリスクが高まるなど、体を壊すことにもなりかねません。結果、医療費がかかってしまったら本末転倒。それよりも日々の野菜にお金を使う方が出費は少ないし、健康でいられるから生きていることへの満足度も高くなるはずです。健康な体は、毎日の積み重ねでできるもの。今まで、不足しがちだったという方は、まずは少しでよいので、意識して野菜を摂るようにしていただきたいですね」
教えてくれた人 平井千里さん
小田原短期大学食物栄養学科 准教授、女子栄養大学栄養科学研究所 客員研究員。 All About「実践栄養」ガイド 。前職は病院栄養科責任者(栄養相談も実施)。現在は教壇に立つ傍ら、実践に即した栄養情報を発信中。
撮影/金田邦男
公開:2022年10月25日
ホームクッキング編集担当より
野菜をたっぷりとりたい……健康志向が高まる中、ホームクッキングでも肉と野菜のバランスがよいメニューに注目が集まっているようです。まずは350gという数字の前に、野菜のメニューを1皿プラス。平井さんのアドバイスはとてもわかりやすいと思いました。ホームクッキングは副菜に絞って検索もできるので、ぜひお役立てください。(編集長S)