だしの取り方!
かつお&昆布・昆布・
いりこ&昆布別に
だしの作り方を紹介
うま味を凝縮させた「だし」は、和食のおいしさを支える要。自分でだしを取るのは「大変そう」「時間がない」と思うかもしれませんが、じつはそれほど手間はかかりません。そこで今回は、「かつお節(削り節)」「昆布」「煮干し(いりこ)」の定番素材を使った、基本のだしの取り方を解説。煮出さずに取れる時短のアイデアや、だしを活かした絶品レシピも紹介します。さっそく料理家の江口恵子さんに教えてもらいましょう!
昆布と合わせて
味わいを深める
「かつお&昆布の
合わせだし」の取り方
かつお&昆布の合わせだしの取り方
必要な材料
- 削り節
- 10g
- 昆布(目安:10cm四方×2枚)
- 10g
- 水
- 800ml
- ざる、キッチンペーパー
削り節の選び方
江口さん「かつお節は酸化しやすく、封を切るとすぐに香りが飛んでしまいます。そのため、家庭ではだし用ではなく料理にも使いやすいものを選ぶと早めに使い切ることができるのでよいと思います。お好み焼きなどにも使われる幅広の花削り(花かつお)や、薄さ0.2mm以下で削られた薄削りなどがおすすめ。小分けになっただしパックは、容量が少ないので、少量のだし汁が必要なときに使うといいです」
かつお&昆布の合わせだしの作り方
- 水で濡らして固く絞ったふきんなどで、昆布の表面を軽く拭き、水と一緒に鍋に入れて30分以上おく。
- 弱めの中火にかける。
- 湯が泡立ってきて沸騰直前になったら火を止め、昆布を引き上げる。
- 削り節を入れる。
- 削り節が沈み始めるのを待つ。目安は2分。
- 計量カップやボウルなどに、キッチンペーパーを敷いたざるを置き、だしをこす。
-
かつおだしの完成。
※かつお節だけでだしをとる場合は、水を沸騰させて火を止め、工程4以降同様にすればOKです。味わいの違いを確認してみるのもおすすめ。
江口さん「湯の温度が高いと雑味が出ます。80℃以上だと魚臭くなるので、削り節を入れるタイミングは、火を止めて一呼吸おいたくらいにするのがコツです。こしているときに押さえつけても雑味が出るので、自然に水分が切れるのを待ちましょう。だしの粗熱が取れたら冷蔵庫へ入れ、2日ほどで使い切ってください。
注ぎ口のついた大きめのカップなどでだしをこすと、料理に使うときそのまま注げるので便利です」
素材の味を生かす
繊細な料理に。
シンプルな「昆布だし」の
取り方
昆布だしの取り方(水出し・煮出し)
必要な材料
- 昆布(目安:10cm四方×2枚)
- 10g
- 水
- 800ml
昆布の選び方
江口さん「薄い昆布からだしを十分取るには、枚数を多く使う必要があるので、肉厚のものの方が効率的。一般的には厚さをそろえずに販売されることが多いですが、ディスカウントショップなどでは薄いものだけのこともあるので、購入する場合は注目してみましょう」
昆布だしの作り方
- 水で濡らして固く絞ったふきんやキッチンペーパーで、昆布の表面を軽く拭く。
- 容器に昆布を入れ水を注ぐ。ふたをして冷蔵庫に入れ、一晩おいて昆布を引き上げれば、水出しの昆布だしが完成。煮出す場合は30分以上おき、行程3へ。
- 水につけて30分以上おいた昆布を水ごと鍋にあけ、弱めの中火にかける。
- 湯が泡立ってきて沸騰直前になったら火を止め、昆布を引き上げる。
- 昆布だし(煮出し)の完成。
江口さん「水に入れて放っておくだけの水出しに対し、煮出しは比較的短時間でだしが取れます。水出しの場合、夜仕込んでから冷蔵庫に入れておいて翌朝使ったり、朝仕込んでおいて夕飯のときに使ったりと、忙しくてまとまった時間がとれないときに無理なく簡単においしいだしがとれるのが大きなメリットです。水出しも煮出しも、どちらも水につけておく時間が長すぎるとだしがにごってしまうので、長くてもひと晩経ったら引き上げるように。
煮出すときのコツは、少なくとも30分は水につけておくこと、火にかけてから沸騰させないこと。昆布のうま味は水に長時間つかることで引き出されるので、すぐに火にかけると十分に引き出せませんし、沸騰させると雑味が出て磯臭くなってしまいます。なお、夏場のように気温が高い場合や、つけておく時間が長い場合は、水につけて冷蔵庫で保管を。
取っただしは冷蔵庫で保管して2日ほどで使い切りましょう。それ以上保存したい場合は、密封できるジッパー付き保存袋に入れて冷凍保存を。ただ、だしの香りや味わいは落ちてしまうので、使い切れる分だけをだしを取るよう心がけて」
みそ汁との相性のいい、
煮干し(いりこ)と昆布の
合わせだしの取り方
いりこだしの取り方
必要な材料
- 煮干し
- 30g
- 昆布(目安:10cm四方×1枚)
- 5g
- 水
- 1200ml
煮干しの選び方
江口さん「全体的に茶色く変色しているのは、酸化が始まっている証。脂が多い内臓部分は特に痛みやすいので、おなかが茶色かったり、裂けていたりするものは選ばないようにしましょう。袋に入っていると完全に避けるのは難しいですが、全体的に銀白色のものが多いパッケージを選びたいですね」
いりこだしの作り方
- 内臓を取りやすくするために、まずは頭を外す。頭と尾の部分を指でつまみ、頭を折るように力を加えると取りやすい。
- 胴体をおなか側から縦ふたつに割る。上側のおなか部分に見える黒い塊が内臓。
- 内臓を取り除く。
- 煮干しの頭と胴、昆布を容器に入れて水を注ぎ、30分以上つけておく。
- 煮干し、昆布、水を移した鍋を弱めの中火にかけ、沸騰前に昆布を取り出す。
- アクを取りながら3分ほど煮出し、火を止める。
- 網じゃくしなどで煮干しを取り除く。煮干しの破片が気になる場合は、キッチンペーパーを敷いたざるでこす。
-
煮干し(いりこ)と昆布の合わせだしの完成。
※煮干し(いりこ)だけでだしをとる場合は、昆布なしで水につけ、同様にアクをすくいながら煮出せばOKです。味わいの違いを確認してみるのもおすすめ。
江口さん「内臓が残っていると苦味が出てしまうので、面倒な作業ですがめげずにやりましょう。上記の方法なら頭も内臓もポロッと簡単に取れ、身が細かくなるので旨みが出やすいです。簡単かつ子どもの小さな指先の方がやりやすい作業なので、子どもにお手伝いしてもらうのもおすすめです。いきなり包丁を持たせるより安全に、調理体験できますよ」
【だしにまつわるQ&A】
一番だし二番だしとは?
簡単なだしの取り方は?
だしガラどうする?
続いては、だしにまつわる疑問や豆知識をご紹介! 知っておくと料理がもっと楽しくなります。
Q.一番だしと二番だしとは?だしの取り方が違うの?
A.
江口さん「上記の通り、今回紹介したような手順で最初に取れるのが一番だし。そのだしガラをもう一度使って取ったものが二番だしで、水とだしガラを火にかけ、じっくり煮出して取ります。二番だしは、うま味が引き出される一方で雑味も出るので、前述のとおり味が濃いものに使いましょう」
Q.だしの取り方、もっと簡単な方法は?
A.
江口さん「簡単な方法3つあります。ひとつは、茶こしに小分けパックの削り節を入れ、お湯を注ぐ方法。お湯100mlまでなら、削り節は2.5gもあれば十分なので、小分けされた使い切りパックの容量を目安に量を決めてください。
ふたつめは、レンジを使ったかつおと昆布の合わせだし。耐熱ボウルに昆布、削り節、水を入れてラップをふんわりかけ、電子レンジで3分(600W)加熱するだけです。みっつめは、お茶パックに削り節を入れ、食材と一緒に煮ながらだしを取る方法。私はたけのこを煮るときなどに、よく利用しています。
どれも簡単なわりに、おいしいだしが取れますよ」
詳しくはこちら
だしの取り方 手早くだしを取る
Q.かつお節、昆布、煮干し(いりこ)の保存、どうするのが正解?
A.
江口さん「昆布は酸化よりも湿気に弱いので、パッケージがジッパー付きなら、口をしっかり閉じて保存を。付いていない場合はジッパー付き保存袋や、のりが入っていた密閉できる缶などに移し替えましょう。
湿気にも酸化にも弱いのが削り節。ジッパー付きの袋に入れ、空気をしっかり抜いてから口を閉じて冷凍庫で保存を。
煮干し(いりこ)も酸化が早いので、購入したらすぐに全部の内臓を取っておくと、面倒な作業が一度で済みます。それからジッパー付き保存袋に入れます。消費スピードが遅いなら冷凍保存すると安心です」
Q.だしを取った後のだしガラ、何かに活用できる?
A.
江口さん「だしガラを佃煮にするという人もいますが、それ以外にもいろいろなお惣菜に活用できます。昆布はくるっと巻いておでんに使ったり、一口大に切って筑前煮に、細切りにしてきんぴらごぼうなどに入れたりするのがおすすめ。削り節も、きんぴらごぼうに入れるとうま味がアップします。いりこは、かき揚げの具材に混ぜるとおいしいですよ。冷凍しておけば何かの折に使えるので、スペースが許すなら保存してみては」
だしを使って
もっとおいしく!
おすすめレシピ3選
煮物に汁物、そして麺。数あるレシピの中から、今回はだしの味が決め手となるものをピックアップしました! しみじみおいしい3つのレシピ、作り方をぜひチェックしましょう。
かつおだしがふわりと香る『里芋の煮物』
江口さん「里芋料理の定番となる煮物は、やさしい甘さ。下ゆで後に洗うことで、里芋のぬめりを抑えています。トロッとした口当たりが好きな人は、さっと洗う程度にしておくのがおすすめ」
実は相性抜群。トマトの酸味でうま味倍増!
『ミニトマトとはんぺんのお吸い物』
油揚げからおつゆがじゅわっ!
『きつねうどん』
だしの取り方を
マスターすれば、
料理はもっとおいしくなる!
江口さん「きちんと取っただしは、本当においしいんです。手がかかって面倒と思うかもしれませんが、この味を一度知ると、手間ひまを超えた価値に気付くことでしょう。まずは、時間のある週末やお正月のお雑煮のように特別な料理をつくるときにがんばってみてはどうでしょうか。ホッとする味わいに“ああ、だしを取って良かった!”とつくづく思うはず。だしの旨みは和食のベースとなるものなので、ここぞというときのためにぜひマスターしましょう!」
教えてくれた人 江口恵子さん
料理家、フードスタイリスト、 All About「家事」ガイド 。雑誌や広告、Webなどでレシピ提案やスタイリングを行うほか、企業のレシピ開発など、幅広く活躍。料理教室「 ナチュラルフードクッキング 」主宰、カフェ&デリ「ORIDO. 吉祥寺」オーナー。著書に『普段使いの器は5つでじゅうぶん。』(ジービー)などがある。
撮影/金田邦男
公開:2022年10月27日 最終更新:2024年9月30日
ホームクッキング編集担当より
ホームクッキングの「料理の基本」にもだしの取り方を掲載していて、年末をピークにけっこうな数のかたに閲覧されているんです。もっと詳しく解説したページがあったらいいね、と編集担当で盛り上がり、江口さんに詳しく教えてもらいました。まさに和食の基本中の基本、きちんとしただしの取り方をマスターしたら、その味わいはひとしお、何より自分でやったよという満足感があります。ぜひお試しを! もちろん、忙しいときは無理せず市販のだしやつゆを上手に活用してくださいね。(編集長S)