プロに教わる
鶏の唐揚げ(から揚げ)の
レシピ・作り方
【人気の定食屋・菱田屋さん直伝】

「お店のようなカリッとジューシーなから揚げをつくりたい!」そう思っても、時には中まで火を通せなかったり、仕上がりが油っぽくなったり、なんてこともありますよね。そこで今回は、家庭でできるから揚げの上手な作り方を、プロに教えてもらいました。味付けや揚げ方のポイントに加え、直伝レシピもご紹介。すぐに実践したくなる、プロならではのコツが満載です!
鶏の唐揚げ(から揚げ)を
ジューシー・カリカリに
仕上げる3つのコツ
今回、教えていただいたのは、東京・駒場東大前で「菱田屋」を営む菱田アキラさん。行列ができる定食屋で、連日、多くのお客さんが訪れる人気店です。菱田さんによると、おいしいから揚げをつくるコツは、以下の3つがあるのだそう。
下味のたれは、最低でも2時間漬け込む
下味の漬け込みだれへ漬ける時間を長くとることで、鶏肉の繊維の中にまで味がしみこみます。短時間では表面にしか味がつかないため、しょっぱさだけが際立つうえ、焦げやすくもなることも。また、鶏肉が水分をしっかりたくわえるため、ジューシーに仕上がるというメリットもあります。
ころもはふわりとつけてから、時間をおいてなじませる
菱田さんがつくるのは、ころものところどころが霜柱のようにざくっとした食感のから揚げ。そのためには鶏肉の表面にある水分をできるだけ取り除く必要がありますが、その分、ころもがはがれやすくもなるんです。これを解消するために必要なのが、時間。ころもをつけた後、30分から1時間ほどおくことでころもがなじみ、鶏肉の水分も逃がしにくくするため、ざくっとジューシーなから揚げに仕上がります。
中まで火を通し、やわらかく仕上げるために2度揚げする
生焼けが心配だからと言って加熱時間を長くすると、外側が固くなってしまう……。そんな失敗をなくせるのが2度揚げ。揚げる→休ませる→再び揚げるという工程を経ることで、休んでいる間に余熱で中まで火が入り、2度目の揚げでカリッとしたころもに!

「できるだけ素材を活かし、不要な手間はかけたくない」という菱田さん。「“おいしそうだな”と思ってつくると味に出る」という持論と、「ていねいにおいしくつくったものを食べてほしい」という思いのもと、日々、お客さんにおいしい料理を提供しています。
鶏の唐揚げ(から揚げ)の
レシピ・作り方:材料と下ごしらえ
材料(2人分)
- 鶏もも肉
- 2枚(1枚約350g)
- 片栗粉
- 適宜
- 揚げ油
- 適宜
- 【下味の漬け込みだれ】
- キッコーマン 特選 丸大豆しょうゆ
- 大さじ2と1/2
- マンジョウ 国産米こだわり仕込み 料理の清酒
- 大さじ2と1/2
- しょうが汁
- 2片分
- にんにくのすりおろし
- 1片分

下ごしらえ
【1】
鶏もも肉を5等分に切る。軟骨がある場合は取り除く。


小さくカットした肉は揚げるときに肉汁が逃げやすいので、大きめに切りましょう。ひとつにつき約80g、二口大サイズが目安です。また、肉は繊維が傷ついても肉汁が逃げやすくなるため、できるだけ関節部分で切るのがおすすめ。鶏もも肉の場合は、ももとふくらはぎの境目部分のように、肉が薄くなっているところに見当をつけて切ります。もも側は骨があったため薄くなっている中央部分を切り分けて3等分に、ふくらはぎ側は面積が小さいので中央で切って2等分に。

鶏もも肉は一般的に、もも部分とふくらはぎ部分を縦に開いた状態で販売されています。写真上の鶏肉は、開いた部分を閉じるようにして畳んだ状態。左側がもも、右側がふくらはぎとなります。
【2】
鶏肉に漬け込みだれの材料を加え、もみ込んで下味をつける。



今回、教わったから揚げは、しょうが汁をたっぷり使って風味を効かせたしょうがしょうゆ味。汁だけを使う理由は、しょうがの繊維質が食感を落とすのに加え、しょうゆを吸って焦げる原因となるからです。同じようににんにくも粗くおろすと焦げやすいので、できるだけ細かくおろすといいのだとか。なお、もみ込むときに皮がはがれないよう、力加減は弱めで。

しょうが汁は、おろしたしょうがをしぼったもの。漬け込みだれに漬ける時間を長くすると味が中までよくしみて、しょうがの風味をしっかり楽しめます。
【3】
ラップでふたをして、冷蔵庫で2時間以上寝かせた後、残りの漬け込みだれを吸わせるように再度もみ込む。


長時間漬けることで味がしみ込むだけでなく、調味料の水分も鶏肉の中に蓄えられていきます。鶏肉は油で揚げる最中に水分が抜けていきますが、しっかり漬け込んでおけばほどよく水分が残り、かんだ瞬間、肉汁がジュワ~ッとあふれる仕上がりに。また、食材にラップを密着させてふたをすることで、風味が逃げにくくなります。

漬け込んで寝かせた鶏もも肉。ボウル内に残っていたたれはほとんどなくなり、肉がふくらんで皮もピンと張った状態になりました。
鶏の唐揚げ(から揚げ)の
レシピ・作り方:おいしくなる揚げ方
続いては、漬け込みだれをたっぷり吸った鶏肉にころもをつけ、揚げる工程。ここにもまた、おいしく仕上げるためのコツがたくさんありますよ。
ころものつけ方
【1】
バットにキッチンペーパー(厚手、もしくは数枚を重ねたもの)を敷き、漬け込んだ鶏肉を並べる。キッチンペーパーで上から軽く押さえ、表面の漬け込みだれを取り除く。



ここで下味の水分が残っていると片栗粉が溶け、揚げたときにころもが固くなってしまいます。また、余分なたれは焦げる原因にも。すでに味が十分染み込んでいるので、しっかり取り除きましょう。このとき、バットに並べる方法だと一気に取り除けて効率がいいですよ。

余分なたれを取り除くと、表面がペタペタした状態に。
【2】
大きめのバットに片栗粉をたっぷり広げる。鶏肉を置き、両手で片栗粉をすくい上げてかぶせる。

【3】
軽くゆするようにして余分な粉を落とす(はたいたり、力を入れて振り落としたりしない)。


片栗粉が少ないところもが固くなるので、大きめのバットにたっぷり出してつけていくのがおすすめ。ちなみに今回は、500gの片栗粉を使用しました。
【4】
バットなどに重ならないように並べ、冷蔵庫に入れて1時間以上寝かせる。


片栗粉がついた鶏肉が重なると粉が溶けてくるので、できるだけ離して並べましょう。ここで1時間寝かせるのは、肉の中から出てくる水分でころもを内側から定着させるため。すぐに揚げてしまうと、せっかくのころもが落ちてしまうので注意してください。キッチンペーパーを敷くのは、粉がバット側にくっつき、鶏肉からはがれてしまうのを防ぐため。
揚げ方
【1】
深型のフライパンや鍋にたっぷりの油を入れ、強火で180℃まで熱する。


使う油はたっぷりと。少ない量では、菱田さんもうまく揚げることはできないのだそう。今回は、直径26cmの深型フライパンに、底から4cmほどまで油を入れました。なお、油温180℃の目安は、少量の粉を入れて表面全体に勢いよく広がるくらい。菜箸で確認する場合は、油に入れてすぐに細かな泡が出てくるくらいが目安です。
【2】
片栗粉をつけて寝かせた鶏肉を、皮を上にしてひとつずつそっと入れる。

【3】
強火のまま約3分、揚げる。


油に入れた鶏肉は、何度もさわるところもがはがれてしまいます。たっぷりの油を使っていれば裏返す必要もないので、できるだけ触れないように。鶏肉が重なったときはずらす、くらいに留めましょう。
【4】
鶏肉を取り出し、バットの上で3分間休ませる。

【5】
休ませた鶏肉を再び油に入れ、1分間揚げる。

【6】
完成。


鶏肉を高温で揚げたまま中までしっかり火を通そうとすると、表面が焦げてしまったり、肉汁も逃げてしまいます。そこで2度揚げ。1度揚げた後、休ませている間に余熱で中まで火を通していくんです。菱田さんいわく、「休ませている時間も大事な“調理“の時間です」。
2人分を一気に揚げようとするとムラが出るので、ここでは1人分である5個ずつ揚げています。1人分を休ませている3分間に残りの1人分を1度揚げすれば、時間もかからずスムーズに調理できますよ。

ボリュームたっぷりな菱田さんのから揚げ。ころもの白っぽい部分はざくっと、茶色い部分はカリッとしていて、皮の表面はパリパリ、肉との境目はしっとり……と、部分ごとにいろいろな食感が楽しめます。鶏肉は、ふわっとやわらか!肉汁たっぷり、しょうがの風味もジュワッとしみ出して、押し寄せるほどのおいしさです。
菱田さんがお答えします!
鶏の唐揚げ(から揚げ)の
気になるFAQ
鶏のから揚げと言っても、その調理法はさまざま。粉や部位の選び方など、皆さんの気になる疑問に、菱田さんが回答してくれました!
Q.鶏のから揚げをつくるなら、むね肉ともも肉はどっちがいい?
A.
鶏むね肉は脂肪分が少ないので、ジューシーと言うよりはさっぱりした仕上がりになります。人によってはそれが好みという人もいますが、ころもの薄いから揚げなら、個人的にはもも肉のほうがおすすめ。反対に、チキンカツのようにしっかり油を蓄える料理には、むね肉が向いていると思います。むね肉のから揚げはお弁当にも向いていますね。
Q.から揚げのころもに使う場合、小麦粉と片栗粉では何が違う?
A.
ザックリ言うと、ころもの仕上がりがフワフワなのは小麦粉、カリカリなのは片栗粉。ふたつを混ぜて使うとカリフワな食感になるので、お好みで使い分けましょう。
Q.油の温度は何℃がいいの?
A.
揚げているときの温度は175℃が目安。ただし、鶏肉を入れると油の温度が下がってしまうので、上がるまでに時間がかかることを考慮して、180℃まで上げておきましょう。忙しくて一気に揚げたいと思うなら、185℃まで上げておくのが良さそう。ただし、一度にたくさん揚げようとしてもムラができてしまうので、できれば少しずつ揚げていくようにしてほしいですね。
Q.鶏肉を漬け込む時間はどれくらい?
A.
中まで味がしっかり入るようにするなら、最低でも2時間以上は漬け込みたいところ。長く漬けると調味料の水分も取り込んでジューシーに仕上げられますし、外側だけしょっぱかったり焦げたりといったことも防げます。パパッとつくることはできませんが、待つ時間がおいしくしてくれるので、ここが我慢のしどころですね。
Q.中まで火が通っていなかった!予防法と対処法が知りたいです。
A.
油の温度と揚げる時間が足りないと、中まで火が通りません。おいしく安全に揚げるなら、前述のとおり油の温度を180℃まで上げておき、今回、ご紹介した2度揚げをするのが良いでしょう。もし中が赤かった場合は、オーブントースターでの加熱がおすすめ。焼き網にアルミホイルを敷き5分ほど加熱すると、余分なが油が落ち、衣がカリッとして揚げたてに近い食感が楽しめます。火の通り加減は鶏肉の大きさや揚げ具合にも左右されるので、様子を見ながら加熱していきましょう。
Q.揚げたてのころもはカリッとしているのに、時間が経つとしんなり……。カリッと感をキープするコツは?
A.
時間が経ち、揚げたてのサクサクが失われるのは仕方がないこと。カリッと揚がる片栗粉を使っても、湿気を吸うとしんなりしてしまいます。ただ風を当てながら素早く冷ますと、湿気がころもに浸透する前に温度が下がるので、しんなり感は多少抑えられます。
Q.ドリップが出ておいしくない冷凍肉……。対処法は?
A.
ドリップとともに肉のうまみも出てしまうので、味の底上げとして、鶏がらスープの素(顆粒)を少し足す“追い鶏”がおすすめ。鶏もも肉1枚につき小さじ1/2程度の分量で、鶏のうまみを補うことができます。ただし、入れすぎるとジャンクな味わいになるのでご注意を。
しょうゆのおいしさが
生きる!
シンプルな味付けの
唐揚げ(から揚げ)を
お試しあれ
「しょうゆ味のから揚げは、シンプルな味付けがおいしい」と、菱田さん。しょうゆはうまみがたっぷりで、こしょうなどを入れるとかえって味がまとまりにくくなるので、しょうゆのおいしさを信じてつくって欲しいのだとか。菱田さんが教えてくれた下ごしらえの方法や2度揚げを実践すれば、おいしく揚げられることうけあい!皆さんも、ぜひ!

教えてくれた人 菱田アキラ(菱田屋)さん
100年以上の歴史をもつ定食屋『菱田屋』の五代目店主。老舗寿司店、中華料理の名店などを経て『菱田屋』に入店。四代目と共に、メニューや食材の見直しを図りながら店のリニューアルを行い、行列ができる人気店へと成長させる。『行列のできる定食屋 菱田屋の男メシ!』(オレンジページ)著者。
撮影/金田邦男
公開:2025年1月21日
ホームクッキング編集担当より
実は僕が菱田屋さんにうかがったのは9年前でした。あまりにおいしくてとんでもなく満腹で帰ったのを覚えています。ひさしぶりに撮影でお伺いして、変わらぬうまさに感動(むしろつくり方がよりシンプルになって洗練されていて、すごい)。から揚げは買ってくる、という方も昨今多いと思いますが、今回教わったレシピは唯一無二と思います。ぜひ一度試してもらって、揚げたてのカリっとしたころもと、ジューシーを極めた鶏肉の食感の合わせ技を体験してください!(編集長・杉森)