ほうれん草の
ゆで方・ゆで時間は?
下ごしらえのコツも紹介
寒さが厳しくなる季節に旬を迎えるのが「ほうれん草」。1年を通じて見かける野菜ですが、冬に収穫されたものは栄養価がより高く、甘みも強まるのが特徴です。そんなほうれん草をもっとおいしく味わうために、ゆで方や保存のコツといった基本を、料理家の江口恵子さんに教えていただきました。
ほうれん草の
ゆで方/ゆで時間
まずは下ごしらえで、ほうれん草の汚れをしっかり落とす
ほうれん草の下処理手順
- 根の先端を切り、根元に1cmほど(束がバラけない部分)の切り込みを入れる。細いものなら1本線、太いものなら十字線を入れると良い。
- 大きめのボウルにたっぷりの水を張り、根元部分を入れてふり洗いをする。水が汚れたら入れ替え、1~2回繰り返す。
- 同様に、葉の部分も水の中でふり洗いをする。
江口さん「根元に切り込みを入れることで、内側の土が洗い落としやすくなるうえに、火の通りも均一になります。株がバラバラにならないよう、切り込みの深さは加減してください。
葉の部分は一見きれいでも、実は意外と汚れているもの。手を抜かず、きちんとふり洗いをしましょう。なお、洗うときは、1束を2~3回に分けるのがおすすめ。一度で済まそうとすると、汚れが残ってしまいがちなのでご注意ください」
ほうれん草のゆで方(ゆで時間の目安は1.5~2分)
ほうれん草をゆでる手順
- 鍋に湯を沸かし、色止めのため水2~3リットルに対して小さじ1/2くらいの塩を加える。
- 根元から半分程度までを湯に入れ、まずは約30秒ゆでる。その後、葉先も入れて全体を1分~1分半ほどゆでる。
- アク抜きと色止めのため、ボウルに張った冷水に入れて冷やす。
- 根元を上にしてそろえ、上から下へ水気を絞る。
- 4~5cmの長さに、食べやすく切る。
江口さん「ほうれん草の根元にはアクの成分であるシュウ酸が含まれていますが、水溶性のため、お湯でゆでると簡単に除去することができます。どうしても生で食べたい場合は、シュウ酸の少ない葉だけにするか、サラダほうれん草を選ぶと良いでしょう。
なお、カットした状態でゆでたり、水にさらす時間が長かったりすると、栄養分が流出してしまいます。絞るときは力を入れすぎるとパサつく上に、うま味が抜けて苦味が強くなりがち。おひたしにするなら、一度絞った後、まだ水分が含まれているくらいの状態が最適です。
また、おひたしにするときにおすすめしたいのが、「しょうゆ洗い」。絞ったほうれん草をまな板の上に載せ、しょうゆをほんの数滴たらしてかるく絞るという方法です。このひと手間で、しょうゆの塩分が野菜の水分を引き出してくれて水っぽさを抑えられるので、ぜひお試しください」
ほうれん草の
保存方法
冷蔵保存は『立てて保存する』が基本
手順
- 根の先を少し切り、水を張ったボウルでかるく洗ったあと、根元を水に5分ほどつけておく。
- 新聞紙やクッキングペーパーなどで水気をかるく拭き、そのまま全体をくるむ。
- 乾燥を防ぐためにポリ袋へ入れる。口はかるくたたむ程度で良い。
- 立てた状態にして、冷蔵庫の野菜室で保存する。
江口さん「根の先をカットするのは切り花の水揚げと同じで、水を吸い上げやすくするため。この状態で水につけると、明らかにシャキッと元気になりますよ。ここで、根元に切り込みを入れるのはNG。空気に触れる時間が長くなると鮮度が落ちてしまうので、できるだけ手を入れない状態で保存するようにしましょう。
上記の手順は面倒に思うかもしれませんが、そのままの状態で冷蔵保存したものと比べると、明らかに日持ちが良くなるもの。できるだけ新鮮なうちに実践するのがおすすめです」
冷凍保存は『カットしてから保存』が正解
手順
- ゆでてカットしたほうれん草を小分けにして金属トレイに載せ、冷凍庫へ入れる
- 半日ほど経って凍ったらひとつずつラップで包み、冷凍用保存袋に入れる。できるだけ空気を抜き、密閉する。
江口さん「忙しいけれど、ごはんをつくらなきゃいけない……なんてときは、ほうれん草を洗ってゆでるだけの手間すら省きたいもの。ゆでた状態で冷凍保存しておけばパパッと1品出せるので、常備しておくと助かります。
ただし、ゆでたてよりも鮮度や風味は落ちるので、おひたしのようにシンプルな味付けのものより、ナムル、ごま和えといったしっかりした味の料理がおすすめ。使うときは自然解凍で。スープのように水分が多い料理なら、凍ったままでも使えます。
ちなみに、冷凍時に金属トレイを使うのは、できるだけ素早く凍らせるため。特に熱伝導率の高いアルミ製がおすすめです」
見た目の差は歴然!? 保存結果を比較してみた
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おすすめレシピや
食べ方
しょうゆをたらすだけで絶品! ほうれん草のおひたし
江口さん「もちろん、メイン料理の添え物などにもピッタリです。洋風の料理なら、塩、こしょうで味付けしたバターソテーに。また、甘辛い味付けの角煮や煮魚などにそのまま添えると、煮汁を吸ってよりおいしくなりますよ。
こうした味付けや使い道だけでなく、ぜひ実践していただきたいのは、上記でご紹介したゆで方。ひと手間加えるだけで本当に甘くおいしくなります。
野菜の下ごしらえって、肉や魚に比べてかるく見られがちですが、きちんとした手順を踏むと、本当に甘くおいしくなりますよ。忙しいと手を抜いてしまいがちですが、時々はきちんと下処理をして、そのおいしさを味わうことも良いと思います」
ほうれん草のレシピはこちら
ほうれん草の栄養素をおいしく摂取できる副菜レシピも!
「干し野菜」にすれば味わいと食感が変わる!
手順はいたって簡単。入念に水洗いをしたあと、写真のように根元を上にしてハンガーやフックなどにかけるだけ。風通しの良い場所に吊り下げて、少し水分が残っている状態になるまで干しましょう(目安は2~3日以上)。
江口さん「干して水分が抜けると味が濃くなり、歯ごたえもしっかりします。太陽光に当てることで、ビタミンDなどの栄養素が増えるのもポイント。こちらもナムルのような、しっかり味の料理がよく合います。調理の際は下ゆでするか、炒めて火を通してからにしましょう。
根元を上にして干すのは、葉よりも太さがあって乾きにくいため。動物や虫などが気になる場合は、干物用ネットなどを使うのがおすすめです。なお、完全に水分が抜けきってはいないので、干した後はできるだけ早く使い切るようにしてください」
おいしい
ほうれん草の
選び方
教えてくれた人 江口恵子さん
料理研究家、フードスタイリスト、All About「家事」ガイド。インテリア&フードスタイリスト。雑誌や広告、Webなどでレシピ提案やスタイリングを行うほか、企業のレシピ開発など、幅広く活躍。料理教室「ナチュラルフードクッキング」主宰、カフェ&デリ「ORIDO. 吉祥寺」オーナー。著書に『普段使いの器は5つでじゅうぶん。』(ジービー)などがある。
撮影/金田邦男
公開:2022年1月27日 最終更新:2024年9月30日
ホームクッキング編集担当より
メジャー野菜のひとつ、ほうれん草の扱い方、いかがでしたか? きちんとした保存をしておくと、見た目にはっきりと状態に差が表れて、撮影現場で驚きの声が。そして江口さんに教わった「絞り具合」をマスターすると、おひたしの味わいがワンランクアップすることを実感しました。当社の「いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」が実に良く合うんですよ。旬の野菜の扱い、これからもホームクッキング通信で紹介していきます!(編集長S)