手打ちうどんのつくり方を解説
★簡単おいしい
うどん3選と
つゆのレシピも!
おいしいのはもちろんだけど、つくる時間だって「楽しい」料理は何かないかな……はい、あります! それはもっちもちの「手打ちうどん」。じつは意外と工程はシンプル。手でこねたり、足で踏んだり、家族や友人たちとチャレンジしたら、楽しいひとときになること間違いなし。うどんの名店「手打うどん 寿庵」オーナーの蓮見壽さんに、打ち方はもちろん、つゆのつくり方や保存方法など、おいしいうどんをつくるコツを、とことん教えてもらいます!
手打ちうどんを
つくるときの材料と道具。
気温に合わせた
分量調整が重要!
手打ちうどんの材料は、とてもシンプル。小麦粉(中力粉)、塩、水、そして打ち粉に使うコーンスターチと、たいていのスーパーにはそろっているものばかりです。道具も、一般的な家庭で使われているものが大半。
材料
(つくりやすい分量:4~5人前くらい)
-
小麦粉(中力粉)
500g
-
塩
※10%濃度の塩水300gをつくる場合
30g
-
水
※10%濃度の塩水300gをつくる場合
270g(ml)
-
コーンスターチ(打ち粉用)
※どんぶり1杯分程度
適量
●道具
・大きめのボウル(直径30cm程度)
・塩水をつくるためのボウル
・計量カップ
・キッチンスケール
・まな板
・ジッパー付き保存袋かポリ袋(一辺が30cm以上のものを推奨)
・麺棒(直径20mm前後が使いやすい)
・包丁(あれば麺切り包丁、菜切り包丁など刃がまっすぐ平らなもの)
・ふるい
蓮見さん「手打ちうどんの小麦粉は中力粉を使います。薄力粉や強力粉でも麺は打てますが、たんぱく質の含有量がそれぞれ異なる(薄力粉はたんぱく質の含有量が少ない、強力粉は多い)ので、できあがりの食感も違ってきます。打ち粉はたっぷり使うので、余裕をもって用意しておきましょう。
大きめのボウルがない場合は、大きい鍋でも代用できます。麺棒は細めの方が扱いやすいですが、ない場合はビール瓶やラップの芯でも代用できます。今回は、ホームセンターに置いてある工作用の棒(長さ90cm)に、やすりをかけたものを使いました。
麺切り包丁や菜切り包丁がない場合は、一般的な三徳包丁や牛刀でも構いません。この後紹介するつくり方では、ご家庭にあるような牛刀を使います。
寝かす時間を含めて、調理時間は1時間半くらいです」
おいしいうどんの
つくり方(基本の方法)
わずか4ステップで
名店のコシに!
手打ちうどんの工程は、「水回し」「踏み」「のし」「たたみ&切り」の4ステップ。それぞれの手順を詳しく見てみましょう。
【1】水回し
「水回し」とは、小麦粉と塩水を合わせることです。塩水の濃度は約10%で、分量は小麦粉の48%を基本としますが、生地が伸びやすい夏季は45%、固くなりやすい冬季は50%とするなど、気温に合わせた微調整が必要。ただし、エアコンなどで室温をコントロールしている環境では、特に気にする必要はありません。
※塩水と小麦粉の分量の目安
【基本】 小麦粉に対して塩水は48% (例)小麦粉500g ×48%=塩水240g程度
【夏季】 小麦粉に対して塩水は45% (例)小麦粉500g ×45%=塩水225g程度
【冬季】 小麦粉に対して塩水は50% (例)小麦粉500g ×50%=塩水250g程度
手順
- ボウルに濃度10%になるように塩と水を入れ(例:塩30gに対して水270g)、よく溶かして塩水をつくる。カップに入れてキッチンスケールできちっと240gを計って取り分ける(基本の場合)。
- 小麦粉をふるう。
- 小麦粉に半量の塩水を回しかけ、水のかかった位置に乾いた小麦粉を両手でかけるようにして混ぜ合わせる。
- 残り半分の塩水を入れ、舞い上げたときに粉が飛ばなくなるまで混ぜ合わせる。このとき、ボウルが滑ることもあるので、下に滑り止めシートや濡らして絞ったふきんなどを敷くと作業しやすい。
- 全体的にしっとりして、そぼろ状になったら十分に混ざり合った証拠。
- 生地がこぼれないようにボウルの中でまとめ、ジッパー付き保存袋に移す。生地が乾かないよう、袋の中の空気を抜いて口を閉じ、10分ほど休ませる。
蓮見さん「塩水は同じ容積(ml)の水よりも重くなるため、塩と水を混ぜてからキッチンスケールで計量したほうが正確です。お湯を使うと塩が溶けやすいと思う方もいるかもしれませんが、塩の溶けやすさは水でもお湯でもほぼ同じ。むしろお湯を使うと小麦粉が固まってしまうので、必ず水を使ってください。少しでも早く溶かしたいなら、ミネラルウォーターのペットボトルに塩を入れ、ふたをしてシャカシャカと振ると良いでしょう。また、前日の夜につくっておくと、粉となじみやすくなります。
ふるいをかける(2)の工程は省略可能ですが、ダマがあると水が回りにくくなることも。万が一、異物があっても見つけやすいので安心できるというメリットもありますね。途中途中で少し休ませることで、生地がやわらかくなり扱いやすくなります」
【2】踏み
生地を足で踏むことで、うどんには独特のコシが生まれます。食べ物を踏むのに抵抗があるなら、後で紹介する手軽な方法のように手で押しても構いません。床にレジャーシートなどを敷き、その上に袋を置いて作業すれば安心です。
手順
- 生地を広げやすいよう、ジッパー付き保存袋の中央に置き、まずは片足で生地を広げる。
- ある程度、平らになったら体重をかけて両足で踏む。
- 表面がツルツルになったらたたんでから、再び踏む。これを生地が伸びなくなるまで、5~6回繰り返す。
- 6回踏んだ生地がこちら。ここでジッパー付き保存袋に入れ、空気を抜き口を閉じたら5分ほど休ませる。
- 周囲を少しずつ折りたたみ、丸い形状に整えていく。
- 周囲をたたみ終わってできた中央の穴をふさぐ。
- ジッパー付き保存袋に入れる。乾燥を防ぐために空気を抜いてから口を閉じ、1時間以上寝かせる。
- さらに丸くした生地を足で踏んで広げる。直径25~30cmになったら、袋の口を閉じたまま5~10分休ませる。
蓮見さん「お子さんと一緒にするのも楽しい作業です。ただし、生地の上で跳びはねるとグルテンの弾力性が損なわれるので、はしゃぎすぎないようにご注意ください。床に接触する下側には、床の溝などの跡が付きにくいよう段ボールなどを敷いてからシートを広げておくと良いでしょう。一踏み目にかかとを使うと、広げやすくなります。踏んでいるうちに中央が厚くなるので、中から外へ踏んでいくのがおすすめ。足裏全体を使い、均一に伸ばして仕上げましょう。
(7)の工程では、室温25℃以上ならできるだけ涼しい場所(冷蔵庫は除く)に置きます。寝かせる時間が長いほどグルテンの成長を促し、おいしくコシのあるうどんになるので、最低でも1時間は置いてください。私の店では一晩置いてからご提供しています。(8)の工程では、できるだけ真円になるように広げたいので、足の位置を少しずつ回転させるようにして踏んでいくがおすすめです」
【3】のし
麺棒を使って、生地を食べやすい厚さに伸ばす工程です。今回は、ホームセンターなどで売っているMDFボードをのし板としていますが、家庭ではアルコール消毒したダイニングテーブルの上を使うと良いでしょう。
手順
- 打ち粉を広げた場所に生地を置き、生地の上にも打ち粉をふる。
- 麺棒を転がして生地を縦方向に伸ばす。
- 生地を90度回転させて、麺棒で縦方向に伸ばす。さらに90度回転させ、同様に伸ばす。
- 元の2倍程度まで広がったら麺棒に巻き付け、押し付けるようにして転がす。
- 長辺が45cm程度になるまで伸ばす。
- 麺棒に巻き付け、太い部分があればそこに力を入れて転がす。
- 広げてみて、3mmほどの厚さになっていたら完成。
【4】たたみ&切り
生地を切りやすくするためにたたみ、好みの太さの麺として切っていく工程です。
手順
- 山折りと谷折りを交互に繰り返す「屏風たたみ」で3ツ折りにする(たたんだ生地の間に打ち粉をふって重ねる)。全体に打ち粉をふる。
- 好みの幅にそろえて切る。今回は3mm幅。
- 1人分の量を手に取り、くっつきにくいようにねじる
- すべて切り終えたら、同じように束にする
蓮見さん「刃渡りの長い牛刀は根元側の刃が平らになっているので、刃を下ろすだけで切ることができます。三徳包丁や刃渡りの短い包丁なら、刃を立てて押し切り、もしくは引き切りで切りましょう。今回の分量の生地を3mm幅に切った場合、1人分の束の麺量はだいたい15本で、これが4束ほどできます。切る幅の約3mmは割り箸1本分が目安です」
手打ちうどんの
つくり方(足で踏まない方法)。
より手軽にうどんづくり!
基本の方法だと、つくってみたくてもスペース的に床で踏むのが難しいこともありますよね。でもご安心を。蓮見さんに足で踏まずに手で押すつくり方も教えてもらいました。水回しの工程も、袋の中で行うので粉が飛び散りにくい手軽な方法です。今回も塩水の濃度は約10%で、分量は小麦粉の48%で紹介します。
材料(3人分)
- 小麦粉(中力粉) 300g
- 塩 14g
- 水 130g(ml)
- コーンスターチ(打ち粉用) 適量
●道具
・計量カップ
・まな板
・ジッパー付き保存袋かビニール袋(四辺が30cm以上のものを推奨)
・麺棒(直径20mm前後が使いやすい)
・包丁
手で押す場合のつくり方
- ジッパー付き保存袋に小麦粉と塩を入れる。中身が出ないように口を軽く閉じ、振りながらよく混ぜる。続いて水を入れ、さらに混ぜ合わせる。
- 袋の上から手で生地を押さえ、水を回す。
- 生地がそぼろ状になったら、中の空気を抜いて口を閉じる。5分ほど休ませた後、袋の中で生地をまとめる。
- 袋の口を開けて生地を中央に置き、両手に体重をかけながら押して広げる。
- 生地が袋一杯まで広がったらロール状に巻き、再び手で押して広げる。これを1セットとして、3回ほど繰り返す。
- 広がった生地をたたみ、袋の中央で押しながら伸ばす。これを1セットとして、生地が固くなるまで数回繰り返す。生地が伸びなくなれば、この工程は終了。ジッパー付き保存袋の空気を抜き、口を閉じて5分ほど休ませる。
- 基本編と同様に丸い形状にしたら、ポリ袋に入れてさらに15分以上(時間が許す限り長く)寝かせる。
- 打ち粉を振り、手で押し広げていく。この後は、基本編の【のし】【たたみ&切り】と同様に。
蓮見さん「水回しの工程だけでもこの方法にすると、かなり手軽になると思います。生地をロール状態に巻くのは、たくさんの層をつくってコシを出すため。後半、広げた生地を巻かずに畳んで四角くするのは、丸い形状をつくりやすくするため。最終的に生地の形が丸くなると、【のし】の工程を効率良く進められます。こちらの方法なら、寝かす時間を含めて、調理時間は短くて30分くらいです」
手打ちうどんのゆで方。
たっぷりのお湯で
ゆでるのがコツ!
うどんをおいしくゆでるにも、やはりいくつかのコツがあります。お湯の量、温度、ゆで時間など、手順を追いながら紹介します。
ゆで方
- 大きめの鍋にたっぷりの湯を沸かす。水の量は1人前の麺150gに対し、1.5リットル以上が目安。
- うどんをほぐしながら入れる。数回に分けてゆでる場合は、打ち粉を軽く落としてから入れると、湯の濁りを抑えられる。うどんが浮き上がったら、菜箸で軽くかき回す。
- 再沸騰後、13分ほどゆでる。うどんが透き通ってきたら、ゆで上がりが近い合図。
- 菜箸で持ち上げて滑り落ちなければ、ゆで上がり。1本だけ取り出して冷水で締め、試食して確認するとよい。
- うどんを引き上げる。
- 流水でぬめりを洗い落としながら引き締め、水を切る。
- 盛り付けたらコシのある食感のうどんの完成。ざるうどん、素うどんなど、食べ方はお好みで。
蓮見さん「うどんはお湯の中で踊ることで、まっすぐのきれいな麺になります。麺に対してお湯の量が少ないとねじれたり切れたりするので、容量の見合う鍋がない場合は、数回に分けてゆでるようにするといいですね。ゆでているときは湯温を急激に下げたくないので、吹きこぼれそうになっても差し水はせず、火を弱めて対応を。また、水がぬるくなる夏は、流水でぬめりを取った後に氷水で締めてください」
うどんつゆのもとになる
「かえし」のつくり方。
いろいろなうどんで大活躍!
かえしとは、しょうゆとみりんと砂糖を加熱して保存した調味料のこと。このかえしをだしで割ると、うどんつゆやそばつゆができます。
かえしをつくるときの材料
(つくりやすい分量)
かえしのつくり方
- 鍋にみりんを入れて中火にかける。
- 煮立ったら砂糖、しょうゆをゆっくり入れる。
- ふちがフツフツして中央に泡が集まってきたら、沸騰させないように注意しながら2~3分、火にかける。
- 火を止めてそのまま冷ましたら、密閉容器に入れて冷蔵保存する。
蓮見さん「砂糖はクセのない上白糖がおすすめ。しょうゆを加えるときにバチバチと音がすることもありますが、あわてずにゆっくり入れるようにしてください。中央に集まる泡の正体はアクなので、気になる方は取り除きましょう」
うどんのつゆ別 かえしとだしの割合の目安
つけうどんのつゆ…かえし1:だし3~4
ぶっかけうどんのつゆ…かえし1:だし6
かけうどんのつゆ…かえし1:だし10
だしの取り方を紹介した記事もありますので、ぜひチェックしてみてください。
うどんの
おすすめレシピ3選。
人気の味も手打ちで
さらにおいしく!
おいしいうどんの味をさらにアップする、おすすめレシピをご紹介!ゆでたうどんさえあれば10分以内で完成するお手軽メニューから、ボリュームありの大満足メニューまでをそろえたので、ぜひご活用ください。
だしたまぶっかけ
だしの効いた
定番カレーうどん
肉うどん
手打ちうどんの保存方法。
冷蔵?それとも冷凍?
たくさんつくったときは、食べない分はゆでずにそのままで保存ができます。2~3日で食べきるなら冷蔵保存、それ以上なら冷凍保存にして1か月以内に食べきって。なお、冷凍保存の場合は、チルド室保存だとうどんが切れてしまうので、通常の冷凍庫に入れてください。
保存するときは1人分の量に小分けし、打ち粉を落とさずにねじる、もしくは折り曲げてジッパー付き保存袋に入れます。空気を抜いて口を閉じたら、冷蔵庫で保存します。量が多い場合は、ふた付きの密閉容器を使うのがおすすめです。
手打ちうどんの
つくり方は簡単!
うどんづくりは
楽しいイベントにもなる!
蓮見さん「手打ちうどんは、皆さんが思っているほど難しくありません。1kgの小麦粉なら10人分のうどんができるコストパフォーマンスの良さも魅力ですし、何より本当においしいんです。私もたまたまスーパーで手打ちうどん用の小麦粉を見かけて打ってみたら、その味にハマってしまい、今では店舗を構えるまでになりました。皆さんもまずは気軽にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。週末や連休など、ご家族で楽しめるちょっとしたイベントにもなりますよ」
教えてくれた人 蓮見 壽さん
1952年11月7日生まれ。埼玉県出身。たまたまうどんを打った経験から、子どものころはあまり好きではなかったうどんの魅力に目覚める。10数年にわたってうどん研究家として活動した後、2012年に「手打うどん 寿庵(ことぶきあん)」をオープンし、研究成果と経験に基づいたこだわりのうどんを提供。現在は息子さんと共に、行列ができる人気店を切り盛りしている。
撮影/金田邦男 公開:2023年4月26日 最終更新:2024年4月19日
ホームクッキング編集担当より
店主の蓮見さんに、店舗がお休みの日に製麺室を開けてもらって取材・撮影させていただきました。粉をこねて、足で踏んで、のばして切って……お子さんもいっしょにチャレンジしたら、「おいしい記憶」になるに違いないと思います。何よりその味わいはもう最高のひとこと。忙しい毎日の料理とはまた違った、手間を楽しむ料理もホームクッキング通信で紹介していきます。また当社の「濃いだし 本つゆ」で食べるうどんも絶品ですので、うどんつくりにだけ専念したいときは、ぜひご活用ください!(編集長・杉森)