長芋の保存方法
(常温/冷蔵/冷凍)と下ごしらえ★
切った後に日持ちさせる方法も紹介
生のまますりおろして「とろろ」にしたり、焼いたり揚げたりと、さまざまなバリエーションが楽しめる長芋。一方で、「保存の仕方がよくわからない」「ねばねばして調理がちょっと面倒」といった理由から、手に取りづらいと感じている人もいるのでは?そこで今回は、長芋の保存方法や調理のコツを解説。選び方やおすすめレシピもまとめたので、長芋が今まで以上に身近な食材となることうけあいです!
長芋ってどんな食材?
山芋(やまいも)との
違いや特徴
山芋(やまいも)と呼び名が混同しがちな長芋ですが、山芋はヤマノイモ科に属する芋類の総称です。そのうちのひとつで最も流通量が多いのが、今回ご紹介する長芋。他の山芋に比べて水分を多く含んでおり、ねばり気が控えめで、するりと食べられるという特徴をもっています。
長芋以外で山芋に含まれるのは、いちょう芋、つくね芋など。前者はいちょうの葉型と棒型の2種類があり、後者は拳型をしていますが、地域によってはこれらを「大和芋」と呼ぶこともあるのだそう。このほか、長くて曲がっていたり、二股に分かれていたりと形状が多彩な自然薯(じねんじょ)も、山芋の仲間となります。
じゃがいも、さつまいもなどと違って生食できる山芋は、「とろろ」にする食べ方が一般的。すりおろすことで喉ごしの良さを楽しめるうえに、山芋に多く含まれている消化酵素を効率良く摂れるのもうれしいですね。
冷蔵・冷凍で長芋を保存する方法
長芋は空気に触れると酸化しやすく、低温、高温や水分も苦手。涼しくて風通しが良い場所がない場合は、冷蔵、もしくは冷凍して保存しましょう。
●まるごと冷蔵保存
- 長芋を新聞紙で包む。
- 冷蔵庫の野菜室に入れて保存する。生食するなら3~4日、火を通して食べるなら10日程度で食べきるとよい。
江口さん「新聞紙で包むのは、乾燥を防ぎながら不要な水分を吸ってもらうため。冬場、風通しの良い冷暗所ならこの状態のまま保存できますが、気温の高い時期や適した場所がない場合は、冷蔵室より温度が高めの野菜室で保管しましょう。長芋は時間が経つにつれてえぐみが出てくるので、特に生食の場合は早めに食べきるのがおすすめです」
●カットされたものを冷蔵保存
- 断面がヌルヌルしている場合は、キッチンペーパーなどで拭く。
- ラップでぴったりと包む。
- ジッパー付き保存袋に入れて空気を抜き、口を閉じてから冷蔵庫の野菜室へ。保存期間は、生食するなら3~4日、火を通して食べるなら10日程度。
江口さん「長芋を切った状態のままおいておくと、酸化によって断面がピンクや茶色に変色し、えぐみも出てきます。カットされた長芋の断面が変色していたら、切り落として取り除きましょう。なお、酸化をできるだけ防ぐには、断面に酢水を付けておくのが有効です」
●カットして冷凍保存
- 長芋の皮をむき、食べやすい形に切る。写真は半月切り。
- 水500mlに対し、酢小さじ1の酢水に入れ、5分ほどさらす。
- 酢水から引き上げ、キッチンペーパーなどで水気を取り除く。
- ジッパー付き保存袋に入れて平らな状態にしたら、空気を抜いて口を閉じ、金属トレイに載せて冷凍庫へ。保存期間は約1か月。
江口さん「冷凍した長芋は解凍不要なので、そのまま加熱調理をしましょう。酸化防止の酢水から引き上げた後は、水分をしっかり拭き取ること。水分が残っていると長芋同士がくっついてしまい、次に使いにくくなります。平らな状態で金属トレイに載せると、凍るまでの時間が短縮できるのでおすすめです」
●すりおろして冷凍保存
- 長芋の皮をむき、おろし器などですりおろす。
- 長芋350~400gに対して小さじ1/2ほどの酢を入れ、まんべんなく混ぜる。
- ジッパー付き保存袋に入れて平らな状態にしたら、空気を抜いて口を閉じ、金属トレイに載せて冷凍庫へ。保存期間は約1か月。
江口さん「とろろが中途半端に余りそうなときにおすすめの方法です。冷凍のためにわざわざすりおろすのは面倒ですが、ついでだからそれほど手間に感じないはず。酢は酸化を抑えるために入れますが、味には影響ありません。全体に行き渡るようにしっかり混ぜましょう。冷凍したものを次に使うときは、自然解凍してから調理を。冷凍前は薄めに成形しておくと、凍った状態でもパキッと折れるので使いやすくなりますよ」
おいしい長芋を
見分けるコツと
特徴を活かした切り方
長芋の旬は主に秋。また、春に収穫されるものもあるほか、低温貯蔵により、1年を通じて入手できます。
●長芋の選び方
発育の良い長芋は、まっすぐな形で太さが均一。皮にキズが入っているとその部分から傷みやすいので、表面はできるだけきれいなものを選びましょう。カットされている場合は、断面もチェックを。ピンクや茶色に変色していなければ、鮮度が高い証です。
江口さん「長芋は酸化しやすいため、真空パッケージで販売されていることもあります。その場合は開封せず、そのまま野菜室で冷蔵保存しましょう」
●長芋の切り方
縦に繊維が入っている長芋。切るときには繊維に添うか添わないかで、口当たりが変わってきます。
江口さん「繊維に添って切った長芋の方が、一口目のシャキッとした食感が強くなります。これは生でも加熱したものでも同じ印象。特に拍子切りにしたときは、違いがわかりやすいですね。どちらで切るかはお好みで選んでください」
「手がかゆくなる」
「料理がマンネリ」……。
長芋のお悩みはFAQで解決
調理のしにくさがクローズアップされがちな長芋ですが、それ以外にも気になることはいろいろ。どうやったら解決できるのか、江口さんに聞いてみました!
Q. ねばねば&すべって大変な皮むき。上手にむくコツは?
A.
江口さん「乾いたキッチンペーパーを当てて長芋を持つとすべりにくいので、しっかりホールドできます。あとはピーラーでスルスルむくだけ。このほか、長芋にフォークを刺して固定する方法もあります。フォークは垂直に刺すと抜けやすいので、30度ほどの角度をつけて刺しましょう。
ちなみに、キッチンペーパーを当てる方法は、すりおろすときにも役立ちます。ペーパーが当たっていた部分は水分が吸われてすべりにくくなるので、終盤の長芋が小さくなったとき、手で持った状態でもスムーズにすりおろせますよ」
Q. ねばねばのせいで手がかゆくなる……。対策はある?
A.
江口さん「手がぬれた状態で長芋を扱うとかゆくなるので、作業中にかゆくなったら手洗いをして、十分に拭き取りましょう。キッチンペーパーを当てたり、調理用の手袋を着けたりして、直接触らないようにするのもひとつの方法です」
Q. 保存していた長芋がピンク色に……。これ、食べても大丈夫?
A.
江口さん「長芋が変色するのは、酸化が進んでいるから。切ったりんごが茶色くなっていくのと同じ理屈です。お好み焼きに入れたり、味付けが濃い煮物などに使ったりする分にはそれほど気になりませんが、長芋の味を活かしたい料理の場合は、変色した部分を取り除いた方が良いでしょう」
Q. 長芋は常温でも保存できる?
A.
江口さん「まるごと1本そのまま手に入った場合、気温の低い時期であれば新聞紙に包み、涼しくて風通しが良い場所で常温保存できます。室温が25度を超える場合やカットされたものは、先ほど紹介したように冷蔵保存がおすすめ」
脱マンネリ!
定番とはひと味違う、
長芋のおすすめレシピ3選
せん切りにしてしょうゆ和え、すりおろしてとろろにするといった定番料理もいいですが、たまに違う楽しみ方をしてみませんか?ここでは、いつもとちょっと違う長芋レシピをご紹介。どの料理も難しい工程はないので、ぜひ皆さんもお試しを。
シャキシャキ、とろり、ホクホク……。3つの食感が楽しめる!
『焦がし生しょうゆ香る!長芋のジュワッと焼き』
江口さん「長芋にしっかりと焼き目をつけることで、より香ばしく仕上がります。長芋を厚く切るのは、歯ごたえを出すため。しょうゆは鍋肌に回し入れることで香ばしさを出し、バターは焦げないように最後に入れるなど、すべての手順には理由があります。シンプルな料理だからこそ、工程をきちんと守ることがおいしさにつながりますよ」
皮をむき、切って漬けるだけの簡単メニュー!
『丸ごと長芋の無敵漬け』
江口さん「シャキシャキとした食感もおいしさのひとつですが、これは水分の多い長芋ならでは。粘り気の多いいちょう芋や自然薯では、この心地良さは生まれません。このままいただくのはもちろん、同じくねばねばの納豆、漬けにしたマグロといった相性の良い食べ物と組み合わせるのもおすすめです」
まるでメレンゲのようなふわふわ食感も魅力
『卵なし!鶏肉と長芋の親子丼風【めんつゆで簡単】』
江口さん「アレルギーなどで卵を控えている人も、こんな丼があれば満足できるのでは?すりおろした長芋がだしにトロッとなじんで、するりとおなかに入るので消化も良さそうです。ごはんだけでなく、うどんやそばと組み合わせてぶっかけ風にしたり、だし巻き卵の上にかけて和風オムレツにしたりと、アレンジも広がりますね」
長芋の栄養素をおいしく摂取できる副菜レシピも!
生でも火を通しても
おいしい長芋は、
さまざまな食べ方で
楽しんで!
江口さん「長芋と聞くと、とろろ汁を思い浮かべる人も多いかもしれません。ですがそれ以外にも、生食のシャキシャキ感や、火を通すことでシャキッと感を残しながらもホクッとした食感が生まれるなど、さまざまなおいしさが楽しめるんです。ご紹介したレシピのように焼くのもいいですし、みそ汁に入れるのもおすすめ。調理しづらさは今回の記事を読めば克服できると思うので、ぜひ気軽に試していただきたいですね」
教えてくれた人 江口恵子さん
料理家、フードスタイリスト、 All About「家事」ガイド 。雑誌や広告、Webなどでレシピ提案やスタイリングを行うほか、企業のレシピ開発など、幅広く活躍。料理教室「 ナチュラルフードクッキング 」主宰、カフェ&デリ「ORIDO. 吉祥寺」オーナー。著書に『普段使いの器は5つでじゅうぶん。』(ジービー)などがある。
撮影/金田邦男
公開:2023年12月4日 最終更新:2024年9月30日
ホームクッキング編集担当より
長芋は調理の仕方によって、いろいろな食感になるのがいいですよね。でもなんとなく扱いが面倒に思っていました。今回の方法をしっかり実践したら、もっと気軽に活用できそうです! 記事最後にご紹介している「鶏肉と長芋の親子丼風」は「キッコーマン+」会員からのリクエストから生まれた人気のレシピです。ぜひお試しください。(編集長・杉森)