しいたけは冷凍保存で
うまみアップ!
下処理の方法や選び方も紹介
うまみたっぷりで、煮物や炒め物など、さまざまな料理に活躍するしいたけ。干ししいたけはだしの材料として重宝されることから、常備している家庭も多いのでは。一方、生のしいたけはデリケートで長持ちしない食材ですが、保存方法によっては鮮度を保ちながら、よりおいしくすることもできるんです。では、その具体的な方法って?下処理のコツや選び方、おすすめのしいたけレシピとともにお伝えします。
しいたけを保存する前の
下処理と切り方、
洗わなくていいってホント?
きのこは水洗いをすると風味が落ち、食感が悪くなると言われています。天然のきのこは虫を取り除くための処理なども必要となりますが、一般的なお店で販売されているきのこは洗わず、そのまま調理しましょう。
しいたけの下処理
- 汚れが気になる場合は、湿らせたキッチンペーパーなどで拭き取る。
- 軸を包丁で切り落とす。
- 石づきを切り落とす。
野口さん「汚れを拭き取るときは、軽くなでるくらいの力加減で。ひだの部分が汚れていることもあるので、裏側もしっかり見るようにしましょう。軸を取るときに包丁を使うと見た目がきれいですが、手間を軽くしたいときや、軸を完全に取り除きたいときは手で取り除いても。ただし、一気に取ろうとするとかさまでむしられてしまうことがあるので、回転させながらやさしく倒すようにして外してください。また、石づきの位置がわかりにくい場合は、手で触って確認してみましょう」
しいたけの切り方
野口さんによると、「しいたけは切り方によって食感が変わるので、料理ごとに使い分けるのがおすすめ」なのだそう。それぞれ、どんな料理に使うと良いのか、教えてもらいましょう。
野口さん「軸を切り落とすときに少し残しておくと、見た目がかわいらしく、歯ごたえが生まれてきたりもします。半分に切ったしいたけは口にちょうど入る大きさで、存在感があって焼き物向き。薄切りはお吸い物などに向いています。軸を残して十字に切ったものは、マッシュルームのようにころんとして食感が楽しめる形。煮込み料理やフライなどにおすすめですね」
しいたけの冷蔵保存は
水分を出さない工夫が大切
しいたけはあまり日持ちしないため、買ってすぐに使い切らないなら冷蔵、もしくは冷凍で保存を。冷蔵保存では水分があると傷みやすくなるので気をつけましょう。
しいたけの冷蔵保存の手順
- 数個のしいたけをキッチンペーパーで包む。
- かさの裏側を上にしてジッパー付きの保存袋に入れ、冷蔵庫で保存する。保存期間は4~5日。
野口さん「しいたけは常温保存だと2日ほどで鮮度が落ちてしまうので、使い切るのに数日かかるなら冷蔵保存がおすすめ。石づきを取ると水分が出て傷みやすくなるので、そのままの状態で保存しましょう。キッチンペーパーで包むことで、適度な湿度が保てますよ。ひだのあるほうを上にするのは、胞子が落ちて黒ずんでしまうのを防ぐためです」
しいたけの冷凍保存の方法、
おいしさアップの
メリットも!
しいたけは冷凍してから加熱すると、うまみ成分が増えてよりおいしくなると言われています。より長持ちさせられるほか、解凍不要ですぐに使えるというメリットもあるので、冷凍保存で常備しておくと便利ですよ!
しいたけの冷凍保存の手順
- しいたけのかさと軸を切り離し、石づきを取り除く。
- かさの裏側を上にして軸とともにジッパー付き保存袋に入れ、空気を抜いて口を閉じ、金属トレイに載せて冷凍庫へ。保存期間は約1か月。
野口さん「凍ったしいたけは、2~3分おくだけで難なくカットできます。次の使い道が決まっていないときは、丸ごとの状態で保存しても大丈夫。ちなみに、しめじ、えのき、エリンギ、まいたけなど、よく使うきのこを食べやすいサイズにカットして、オリジナルの冷凍きのこミックスをつくるのもおすすめです。包丁を使わずそのまま調理でき、数種類のきのこを組み合わせて調理すると、それぞれのうまみが重なっておいしくなります」
おいしいものは
見た目も元気!
新鮮なしいたけの選び方
しいたけは冷凍保存で長持ちするとはいえ、できるだけ新鮮なものを選びたいところ。変色したもの、弾力の少ないものなどは避けるようにしましょう。
野口さん「全体的にハリがあり、変色していないものが鮮度の高いしいたけ。ひだが黒ずんできれいではなかったり、石づきの切り口が乾燥していたりすると、収穫から時間が経っている可能性があります。食べ応えがあるしいたけが欲しいなら、全体的にプリッとして肉厚のものを選ぶと良いでしょう。パックされた状態で販売されている場合は、ラップの内側に水滴が付いているものや、ラップが当たっている部分が変色しているものは鮮度が落ちていることがあるので早めに使い切って」
しいたけをもっとおいしくする方法
しいたけは調理前のひと工夫で、うまみと食感がアップします。具体的な方法は、かさの裏側を上にして、風通しのよい場所で1~2時間、陰干しするだけと簡単。時間があるときなどに、ぜひお試しあれ。
野口さん「この方法で干したしいたけは味が凝縮され、香りと弾力も強くなります。しっかりした食感になるので、生しいたけ特有のぬめっとした舌触りが苦手な人にもおすすめですね。直射日光は強すぎるので、くれぐれも当てないように陰干しで」
和食に欠かせない食材、しいたけ
古くより食べられてきたしいたけは、日本を代表する栽培きのこ。健康な食生活に役立つ和の食材を表す「まごわやさしい」では、しいたけをはじめとしたきのこ類が「し」にあてられています。低カロリーで、食物繊維やビタミンDなどの栄養素も豊富。乾燥させることで、うまみ成分が豊富に精製されるため、だしの材料としても役立っています。
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しいたけに関するFAQ
普段、何気なく口にしている食材でも、意外と知らないことは多いもの。ここでは、そんなしいたけの謎をお役立ち情報としてまとめています。
Q.しいたけの軸、食べてる?いつも使っていないんですが……。
A.
野口さん「もちろん食べられますし、うまみも豊富。メインの食材というより、つくねやぎょうざのたねに刻んで入れたり、手で裂いて汁物の具にするのがおすすめです。他にも隠し味として、薄切りにして炒め物やミートソース、カレーなどに入れれば、味により深みが出ますよ」
Q.「原木しいたけ」って何?
A.
野口さん「しいたけは”原木しいたけ”と”菌床しいたけ”がありますが、これらの違いは栽培方法。原木しいたけは、丸太状に切り出した天然の木にしいたけの菌を植え付け、自然の中で育てており、肉厚で味と香りの強いしいたけができると言われています。一方、菌床しいたけは、栄養分を混ぜたおがくずを使って栽培する方法。味と香りがソフトで身が薄いため、しいたけの香りが苦手な人も食べやすいと思います」
Q.「どんこ」と生しいたけって違うもの?
A.
野口さん「”どんこ”は干ししいたけの名称のひとつで、”冬菇”とも表記されます。かさが開ききる前に収穫したしいたけを干したもので、肉厚でかさに丸みがあり、表面には細かく亀裂が入っているのが特徴。ちなみに、かさが広く開いてから収穫したしいたけを干したものは身が薄く、”こうしん(香信)”と呼ばれています」
うまみと香りが
とことん味わえる!
しいたけを使った
おすすめレシピ3選
しいたけを使ったレシピの中でも、特におすすめの3品をご紹介します。メインも張れるおかずや、炊き込みご飯もあるので、たまにはしいたけづくしの食卓を楽しんでみては?
3種類のきのこ+生しょうゆで、深みのある味と香りに
『焦がし生しょうゆ香る!3種のきのことバターのジュワッと焼き』
野口さん「きのこ、しょうゆ、バターと、それぞれの香りを引き立て合うレシピです。バターは炒めるときに使わず、仕上げに入れて溶かすだけ。しょうゆは鍋肌に回し入れることで、香ばしさが引き出されています。チキンソテーなどのつけ合わせにしたり、ホワイトソースのオムライスに添えたりしても合いますよ。パスタの具にするのもおすすめ」
うまみたっぷり!すだちもさわやかに香る
『きのこの炊き込みご飯【しめじ、しいたけ、えのき】(基本の和食、おうちの和ごはん)』
野口さん「3種類のきのこが入ることで、香りもうまみもさらに深まっています。香ばしいおこげも味わえて、おかずがなくても満足できるくらい。どのきのこも手に入りやすくて安価なうえ、手間も少ないので、かんたん・おいしいレシピです」
鶏とごぼう、鉄板の組み合わせにしいたけをプラス!
『肉詰めしいたけの蒸し煮』
野口さん「肉だねは卵を入れたほか、蒸し煮にすることで、ふんわりと仕上がっています。それでも物足りなく感じないのは、しいたけとごぼうの風味が下支えになっているから。しいたけの軸を刻んで肉だねに加えたことでいいだしが出て、あんのうまみもアップしていますよ」
安定した価格も魅力!
うまみたっぷりのしいたけを
もっと活用しよう
野口さん「具材でありながら、おいしいだしにもなるしいたけ。1年を通じて出回っていて、安価で手に取りやすいのも魅力ですね。私はよく、油を使わずにから焼きしています。2回りぐらい小さくなったらしょうゆをかけていただくのですが、歯ごたえが良く、味も香りもギュッと凝縮されておいしいですよ。逆に、しいたけの香りと味が苦手な場合は、小さめに切ったり、油を多めに使って長めに火を入れたりすると食べやすくなると思います。和食や中華だけでなく、洋食にも意外と合うので、活躍の場を広げてみるのはいかがでしょう?」
教えてくれた人 野口英世さん
料理研究家、フードスタイリスト、 All About「簡単スピード料理」ガイド 。無理や無駄のない、つくり手重視の効率的なレシピとスタイリングアイデアにファンも多く、テレビや雑誌、新聞、広告などで活躍中。近著に『turk フライパンクックブック』『使いやすい台所道具には理由がある』(ともに誠文堂新光社)などがある。
撮影/金田邦男
公開:2024年9月18日
ホームクッキング編集担当より
少し使っただけで料理を格上げしてくれるうま味たっぷりのしいたけ。その栄養の豊富さからも毎日の献立にうまく取り入れたい食材ですよね。今回教えてもらった「数種類のきのこと保存」は特に目からウロコでした!うま味アップとすぐに使える利便性という一石二鳥の保存テクは、あと1品ほしい時のスープなどにも使えそうです。さらにホームクッキング通信では様々な きのこの扱い方をまとめた記事 もあるので、ぜひチェックしてみてください♪(編集担当・市川)