おせちの重箱への詰め方と
皿盛りのコツ!
簡単な盛り付け方も紹介!

お正月の食卓を彩るおせち料理。最近は手づくりと買ってきたものをミックスしたり、家族の好きな料理を加える方も多いよう。気持ちもあらたまる新年です、盛り付け方にこだわって、華やかに演出してみませんか? ちょっとしたコツを押えれば、初心者でもぐんときれいなお重や皿盛りが完成するはず。詳細な写真でていねいに手順をご紹介します!
おせち料理ってどんな料理?
おせちはもともと、3月3日や5月5日などの季節の節目となる「節句」の供え物を指す料理の総称です。年を経て、お正月を祝うものとなってからは、日ごろ食事づくりを含めた家事に忙しい家族も休めるようにと、保存のきく料理を中心とした数品で構成されるようになりました。
盛り付けには四段の重箱を使うのが正式。段ごとに入れる料理も決められているものの、詰める料理や重箱の段数、詰め方などは地域や家庭によっても異なりますし、近年ではカジュアルになってきているようです。
おせち料理の中身、
何をそろえればいい?
一品一品にいわれがあるのも、おせち料理の特徴。たとえば黒豆は「真っ黒になるまで、まめ(勤勉)に過ごせますように」、えびは「腰が曲がるまで健康で長生きできますように」など、さまざまな願いが込められています。
これらの料理は、大きく分けて「祝い肴(いわいざかな)三種」「口取り(くちとり)」「焼き物」「酢の物」「煮物」の5種類。諸説ありますが、「祝い肴三種」は数の子、黒豆、田作り、もしくはたたきごぼうを指し、これだけあればおせちの形が整うとも言われています。

祝い肴三種。右上から時計回りに黒豆、田作り、たたきごぼう、数の子。関東では黒豆、数の子、田作りを、関西では黒豆、数の子、たたきごぼうが三種にあたります。
「口取り」はかまぼこ、栗きんとん、伊達巻き、きんぴらごぼうなど、祝い肴と同様に酒の肴になる料理です。「焼き物」に含まれるのは鯛やぶりなどの焼き魚、えびといった海の幸で、「酢の物」は紅白なます、菊花かぶなど。「煮物」は里芋やくわい、蓮根や人参など山の幸を使ったお煮しめ、筑前煮などが含まれます。
最近ではおせちに詰める料理も多様化。たとえばローストビーフを入れたりと、家族が好きなものを詰めた和洋折衷のおせちもよく見られます。
野口さん「さまざまなしきたりのあるおせち料理ですが、ご家族だけで楽しむ場合など、子どもが好きな唐揚げを入れたり、洋風のごちそう料理を入れたりと、カジュアルに楽しむのもありだと思います。お重の数も品数や食べる人の数に合わせて一段重、二段重にしても良いですし、お重を使わずにプレートに盛り付けるという選択肢もありますね」
なお、今回、野口さんに教えてもらうのは、三段重とプレート、二通りの盛り付け方。重箱は一の重に祝い肴と口取り、二の重に肉・魚介の焼き物と酢の物、三の重にお煮しめを詰めてもらいました。
簡単&きれいな
おせちの盛りつけ方:重箱編
それでは早速、重箱への盛り付け方を教えてもらいましょう。今回は3~4人分を想定し、お重は6.5寸(約19.5cm)の三段を使用しています。

最近は、重箱の種類もさまざま。今回、使用した塗りのお重のほか、白木、わっぱといったスタイリッシュなものも増えています。
野口さん「お重に盛り付けるときは、料理が傷まないよう、しっかり冷ましてからにしましょう。具材の高さや長さをそろえるのも、きれいに見せるコツです。また、味や香りが移りやすい料理は葉(は)らんなどで仕切り、黒豆のように汁気のあるものは小鉢より小さな小付(こづけ)や、豆皿などに入れると、見た目にもきれいですよ。
基本的にお重の場合、それぞれの段に入る料理の数は奇数と言われています。もちろん、これも厳密に守る必要はないと思いますが、今回は一の重に9品、二の重に5品として、一の重は縦3×横3のブロックに分けた市松型で盛り付けます。こうやってエリアを区切ることで、それぞれの料理をきれいに見せることができます。9品用意できない場合、たとえば7品になるなら上から2+3+2ブロックに分けるなど、品数に応じて変えるだけなので難しく考えないで大丈夫」

「何をどこに入れるのか、最初にイメージしておくのも大切です」と、野口さん。器を使う場合は、料理を盛る前に置くことでサイズ感がつかめるので、失敗しにくくなります。
●一の重の盛りつけ方

- 一の重では9品を3×3のブロックに分け、中央にメインとなるものを置く。

- 左上から順に、四隅を盛り付ける。

- 上から順に、空いている部分に盛り付ける。

- 器を使う場合は先に器だけ置き、後から料理を盛り付けると他の料理と混ざりにくい。

- 全体のバランスを見て、高さや料理の量を調整し、南天やヒバの葉などのあしらいを添える。

- 煮汁のある料理は、食卓に出す直前に煮汁をかけて、つやを出すときれいです。

- 一の重の完成。

野口さん「お重の場合はできるだけ余白をとらず、間を埋めていくことが大切。器が隣り合うときも、高さの違うものを使えばスカスカに見えることはありません。今回は先の細い盛り付け箸を使っていますが、ない場合は菜箸よりも、食事用の細めの箸が小回りがきき、盛り付けやすくておすすめ。配置を決めるときは、似た色の料理が近くに来ないようにすると、彩りよくまとまります。端からきっちり順に盛りたくなりますが、まず中央を決め、それから四隅、最後に間を盛っていく順序の方が盛り付け慣れしていない方でもバランスがとりやすいと思います。
数の子のように形や大きさがバラバラのものは、少し立てて立体感を出すと見映えが良くなります。魚など頭があるものは左向きでそろえると品良く見えますが、今回の田作りはくるみ入りなので、立体感を意識してランダムに盛り付けました。栗きんとんは、斜めにくるりと丸めた葉らんや笹の葉で巻くと、あんが周りにつかず味が混ざるのを防げます。
南天やヒバなどのあしらいも、立体感を演出するアイテム。色味が似た料理が並ぶところや、華やかな印象にしたい位置に、2箇所ほど入れるのがおすすめです」
●二の重の盛りつけ方

- 葉らんを敷く。お重からはみ出てしまうなら、大きさに合わせてハサミでカットする。

- 葉らんを縦半分に折り、敷いた葉らんに添わせるように立てて仕切りをつくる。

- 器にするものを置き、バランスを見る。

- 位置が決まった器に盛りつける。

- 両隅、中央の順に盛り付ける。

- 仕上げにあしらいを添え、あれば食卓に出す直前にえびの煮汁をかける。

- 二の重、完成。

野口さん「二の重はあしらいに葉らんを使って、料理に彩りを添えました。敷くだけでなく仕切りとしても活用することで、えびの煮汁などが他の料理に移りにくくなります。
ぶりはお皿に盛り付けるときと同じように、皮が奥になる向きで。重ねるように立てかけると、立体感を上手に出せます。ローストビーフのように平たいものは、そのまま置くとペタッとして見映えが良くないので、二つ折りにして重ねましょう。えびのうま煮は余計な汁気を入れないよう、盛り付ける前にキッチンペーパーなどで軽く拭います。食卓に出す直前に煮汁をかけるときは、えびの背に添ってかけると全体的にツヤが出ますよ」
●三の重の盛りつけ方
三の重はお煮しめをたっぷりと。

- 彩りの良い具を除き、7~8割を入れる。

- 同じ種類が並ばないようにしながら、残りの具を盛り付ける。

- 飾り切りしたにんじん、さやえんどうを飾る。

- 三の重、完成。

野口さん「同じ具が並ばないようにするには、三角形を意識するのがおすすめです。三角形の頂点3か所に同じ具を置いたら、具材を変え、向きを少しずらした三角形の頂点に再び置いていく。これを繰り返すことで、ランダムでもバランス良く盛り付けられるでしょう。
飾りにしたさやえんどうは、少しずらして3枚重ねただけ。松のように見えるので、お正月気分が盛り上がるかも」

三角形を意識するとバランスが良い。さやえんどうだけでなく、にんじんも三角形型に配置。
お重の完成。一の重は市松型、二の重は手綱型と呼ぶ仕切り方。

簡単&きれいな
おせちの盛り付け方:
プレート編
続いてご紹介するのは、おせち料理をプレートに盛り付ける方法。お重がない場合や、お重の中身が減ってきたときに活用できますよ。

自宅にある大きめのプレートなら、和洋問わず使えます。
野口さん「プレートはリムがない方が、盛り付けしやすくておすすめです。一の重、二の重というように、全員分を数枚のお皿に分けるのはもちろん、一人分を1枚に盛り付けるのも良いでしょう。
プレートに盛り付けるときのコツも、やっぱり立体感を出すこと。平たいプレートに何となく盛り付けていくと、ビュッフェの取り皿のようになって特別感がなくなってしまいます。食材だけで立体感をつくるのは難しいので、小さな器やあしらいを上手に使いましょう。お重は重ねることを前提に、器の高さに収まるように盛りつけましたが、プレートは高さの制限がないので器も選びやすいですよ」

お重の場合と同じように、プレートも何をどこに置くかを事前にイメージしておきましょう。
●プレートの盛りつけ方

- 器に盛り付けた料理から、イメージに添って配置する。

- 中央を空けたまま、器の間に料理を盛り付ける。

- 中央にメイン料理を盛り付ける。

- 完成。

野口さん「プレートに器を載せたときに滑って位置がずれるなら、小さく切ったキッチンペーパーを濡らして器に敷くと良いですよ。一番目を引く中央には、メイン料理を配置しましょう。ローストビーフは薄く切って丸めるのも、高さやボリュームが出て良いですね。今回は芽ねぎを巻くことで、彩りと食感をプラスしています。田作りも彩りと立体感を出すために、円すい状に巻いた葉らんに盛り込みました。なお、紅白かまぼこを切らずに並べるときは、“右紅左白(うこうさはく)”という、右に華やかなものを配置するのがならわしです」

キッチンペーパーを使った滑り止めは、プロも使うテクニックです。


まるでブーケのような田作りは、葉らんをくるっと巻き、外側をテープで留めるだけと簡単。食材とテープが触れないように注意します。
おせちをオシャレに見せる
アイテム
ここまでご紹介した盛り付け方の中で登場してきたのが、小さな器と葉らんなどのあしらい。どちらもおせち料理をオシャレに見せるために、あると便利な小物です。
●立体感も演出できる小さな器
お重に使う場合は、高さがお重の深さを超えないものを選びましょう。プレートは自由度が高いので、高さのあるものや、れんげのように持ち手のあるものも組み合わせられます。

お重用の器の例。和風なものにこだわる必要はなく、たとえばガラスの器などもおすすめです。

プレート盛りの場合は、れんげやスプーンに盛るのも見栄えがします。

野口さん「小付や豆皿は、最近は100円ショップなどでも見かけますね。小さなガラスボウル、プリンなどに使われるココットなどもピッタリです」
●葉らんなどのあしらいや、ゆず釜で華やかに
茶色系になりがちなおせち料理を彩るのが、「あしらい」や「ゆず釜」。普段使いは難しいかもしれませんが、お正月の特別感が演出できるので、ぜひ取り入れてみてください。

左上から時計回りに、葉らん、ゆず、裏白(うらじろ)、松葉、ヒバ、南天。

野口さん「料理の下に敷いたり、間に差し込んだりして使うのが〈あしらい〉。松葉は下に敷くだけでなく、黒豆を刺して飾ることもあります。ゆず釜は横向きにカットし、果肉をくり抜いたもの。なますのように酸味のある料理を盛り付けるのにピッタリですね」
今度のお正月は、
自分で盛り付けたおせちで
迎えてみませんか?
野口さん「いろいろな決まりごとがあるおせち料理ですが、基本的には家族みんなの好物があれば良いと思っています。それも一から手づくりするのではなく、無理のない範囲で十分。買ってきたものでも、盛り付けのひと手間を加えることで、グンと豪華になることでしょう。盛り付けられた完成形のおせちを見ると、『難しそう』と感じるかもしれません。でも、今回、ご紹介した手順を実践すれば、誰でも同じように盛り付けることができると思うので、ぜひ気負わず試してみてくださいね」

教えてくれた人 野口英世さん
料理研究家、フードスタイリスト、 All About「簡単スピード料理」ガイド 。無理や無駄のない、つくり手重視の効率的なレシピとスタイリングアイデアにファンも多く、テレビや雑誌、新聞、広告などで活躍中。近著に『turk フライパンクックブック』『使いやすい台所道具には理由がある』(ともに誠文堂新光社)などがある。
撮影/金田邦男 文/石川由紀子
公開:2023年12月26日 最終更新:2024年11月29日
ホームクッキング編集担当より
つくったおせちを並べて、何の知識もなくまっさらな重箱をみたとき、「どこから手をつけたらいいんだか……」という茫然とした気持ちになったことありませんか? 僕は野口さんに、まず中央、次に四隅に置くといいですよ、と教わったらパーッと道が開けた気がしました。きれいな盛り付けのおせちを囲んだら、新たな1年も良い年にしようという気持ちになれそうです。ぜひ新年最初の達成感、感じてください!(編集長・杉森)