タレ(たれ)が決め手!
チキン南蛮の絶品レシピ・作り方
【人気の定食屋・菱田屋さんオリジナル】

甘酢の酸味とタルタルソースの濃厚な味わいがマッチした、ボリュームたっぷりのチキン南蛮は人気のメニューのひとつ。東京・駒場東大前の人気の定食屋、菱田屋さんオリジナルのチキン南蛮は個性的でボリュームも満点。大人気のお店の味を再現するレシピを工程ごとに詳しく教えていただきました。ユニークなタルタルソース、甘酢のこだわり、そして調理のコツもすべて紹介します!
チキン南蛮とタレ(たれ)を
おいしく仕上げる3つのコツ
今回、チキン南蛮のつくり方を伝授してくれた菱田アキラさんは、東京・駒場前にお店を構える「菱田屋」の5代目。行列ができるこの人気定食屋で日々、おいしいものをていねいにつくり、お客さんたちのおなかを満たしています。そんな菱田さんによると、以下に挙げる3点がこのオリジナルのチキン南蛮をおいしくつくるコツなのだとか。
下味、甘酢、タルタルはそれぞれ薄めの塩加減に
甘酢だれとタルタルソースをかけて仕上げるチキン南蛮は、それぞれの主張が強いと味付けが濃くなりすぎてしまいます。味が合わさったときにくどく感じることがないよう、下味の塩も含めて心持ち薄めの塩加減を心がけましょう。物足りないときは「追いタルタルソース」でバランスをとればOK。
ころもをつけたら最低30分、できれば2時間は寝かせる
菱田さんのつくるチキン南蛮は、ころもがさっくり、ところどころカリッとした食感です。このように揚げられるのは、ころもをつけた後に寝かせてなじませているから。つけてすぐに揚げると、もこもこ&ふわふわ感が勝り、フリッターのような食感となってしまいます。寝かせる時間は2時間が理想ですが、忙しいときは30分ほどでも仕上がりは大きく変わるのだとか。

左がころもをつけた直後、右が2時間以上寝かせたもの。見比べると、後者のほうがころもがサラッとしていて、鶏肉にすっかりなじんでいます。
鶏肉は1枚ずつ、二度揚げしてサクカリ食感に
鶏肉は1枚のまま揚げてから切ります。このとき2枚を一度に揚げてしまうと、揚げ油の温度が安定せず、鶏肉同士が重なってくっついてしまいサクッと仕上がりません。必ず1枚ずつ順に揚げてください。そして、一度揚げた後に休ませ、再び揚げる「二度揚げ」を行うことで、余熱で中まで火を通しながらジューシーに仕上がります。1枚目を揚げて休ませている間に2枚目を揚げれば調理もスムーズ。
甘酢だれとタルタルソースのつくり方
続いては、甘酢だれとタルタルソースのつくり方をご紹介。どちらもチキン南蛮に欠かせない、味の決め手となる要素のひとつです。
チキン南蛮には欠かせない!甘酢だれのつくり方
材料(2人分)

つくり方

- 水溶き片栗粉をつくる。すべての材料を鍋に入れ、混ぜ合わせる(この段階では火にはかけない)。

- 混ぜながら中火にかける。

- 沸騰して、とろみがついたら完成。

このつくり方ならすべての材料を最初に入れるので、水溶き片栗粉を加えるタイミングに迷うこともありません。なお、たれ自体は加熱しすぎると酢の酸味がとんでしまうので、ひと煮立ちさせるくらいで。とろみの目安は、例えるならみたらし団子のたれくらいの固さです。かけたたれがすべて流れ落ちず、お団子の表面に少しとどまりますよね。あれが目安です。
手作りすると、なおおいしい!
タルタルソースのつくり方
材料(2人分)
- 玉ねぎ ※5mm角に切る
- 1/8個(約50g)
- ゆで卵 ※5mm角に切る
- 1個(Lサイズ)
- きゅうりのピクルス ※5mm角に切る
- 30g
- マヨネーズ
- 1/2カップ
- 酢
- 小さじ1
- 砂糖
- 小さじ1
- 塩
- 小さじ1/3
- こしょう
- 少々

つくり方

- 玉ねぎに塩ひとつまみ(分量外)をまぶして混ぜ、約10分おく。

- 玉ねぎをキッチンペーパーなどで包み、絞って水けをしっかりきる。


- ボウルにすべての材料を入れ、さっくりと混ぜる。

- 混ぜ合わさったら完成。

玉ねぎの水分が残っているとソースが水っぽくなり、辛味も強まるので、しっかり絞るようにしましょう。キッチンペーパーやふきんで包めば、絞るときに玉ねぎがポロポロと落ちず、扱いやすくなります。
玉ねぎ、ゆで卵、ピクルスのみじん切りは、食感が残る5mm角くらいがおすすめ。ピクルスがない場合は、しば漬けのように水分の少ない漬物でも代用できます。また、ゆで卵が切りにくいなら、スプーンでつぶすだけでも大丈夫。ゆで加減は固ゆでだと、混ぜ合わせたときにマヨネーズと同化せずにおいしくいただけます。
プロ直伝!
絶品チキン南蛮の作り方
材料(2人分)
- 鶏もも肉
- 2枚(1枚約350g)
- 【下味】
- 酒
- 大さじ1と1/3
- 塩
- 小さじ1
- こしょう
- 少々
- 【ころも】
- 薄力粉
- 40g
- 片栗粉
- 40g
- 卵
- 1個(Lサイズ)
- 揚げ油
- 適宜

つくり方
【1】
ボウルに皮を下にした鶏もも肉と下味の材料を入れ、混ぜ合わせてなじませる。


鶏肉の皮は調味料が中までしみこみにくいという特徴も。そのため、身を上にした状態で調味料を加えたほうが、味がよく入ります。
【2】
薄力粉、片栗粉、卵を入れて混ぜ合わせ、全体にいきわたらせる。

【3】
ラップをかけて冷蔵庫で30分~2時間おく。

【4】
深型のフライパンや鍋にたっぷりの油を入れ、強火で180℃まで熱する。


写真は直径26cmの深型フライパンに、底から4cmほどまで油を入れた状態です。油温180℃の目安は、少量の粉を入れて表面全体に勢いよく広がるくらい。菜箸で確認する場合は、油に入れてすぐに細かな泡が出てくるくらいが目安です。
【5】
ころもをつけた鶏肉1枚を、皮を上にして油にそっと入れる。


皮を下にして揚げると鶏肉自体の重さで皮がはりつき、ペタッとつぶれてしまいます。一方、皮を上にすれば揚げている間にところどころの皮が浮き、パリッとした仕上がりに。1枚ずつ揚げることで、互いにくっつくことも防げます。
【6】
強火のまま約3分、揚げる。


揚げているときに必要以上にさわると、せっかくパリッとさせた皮がつぶれたり、ころもがはげてしまったりすることも。油をたっぷり使えば全体に熱が伝わるので、ひっくり返す必要はありません。時折、鶏肉の周囲の油を菜箸などでゆっくりかき混ぜれば、温度ムラも防げます。
【7】
鶏肉を取り出してバットの上で約3分、休ませる。

(ここで2枚目の鶏肉を揚げ始めれば、休ませている時間を有効に使えます。)

【8】
再び180℃の油に入れ、強火のまま約1分、揚げる。

【9】
油から引き上げて約3分、休ませる。揚げたての鶏肉を切ると肉汁が出てきてしまうので、落ち着かせる。

【10】
包丁で食べやすくカットして盛り付ける。


【11】
タルタルソース、甘酢だれをかける。


「定食屋としては、わんぱくさを出したい」という菱田さんの思いから、まずはタルタルソースを真ん中にたっぷり。その後に甘酢だれをとろ~りとかけたら完成です!

鶏もも肉1枚がドン!たっぷりのボリュームに思わず圧倒されそうな、菱田さんのチキン南蛮。カリフワのころもと鶏肉のジューシーさも想像以上です。たれをかけてもころもがベチャッとしないのは、二度揚げならではの仕上がり。甘酢だれにくぐらせるのではなく、上からかけたことで、ひと口食べるごとの味の変化も楽しめます。
菱田さんがお答えします!
チキン南蛮に関するFAQ
プロの技が満載のチキン南蛮、いかがでしたか?ここからは、チキン南蛮の気になる疑問に菱田さんがお答えするFAQタイム。思わず「なるほど!」と納得の回答が目白押しです。
Q.むね肉ともも肉で、つくり方に違いはある?
A.
チキン南蛮のように油分の多い料理には、脂肪の少ないむね肉もよく合います。ただし、もも肉に比べると火が入りにくいので、厚い部分は切り開いて全体の厚みを均一にすると、一部分だけパサつくといったことも防げます。もし、全体的にしっとりさせたいなら、下味の酒を多めにしましょう。
Q.タルタルソース、自分でつくるのはちょっと大変……。市販品にちょい足しはあり?
A.
ゆで卵を足すと、一気にリッチな味わいになりますよ!もうひと手間かけられるなら、みじん切りの玉ねぎを加えるのもおすすめです。
Q.甘酢だれ、どれくらいの固さがおすすめ?
A.
好みもありますが、みたらし団子のたれくらい。たれが流れ落ちず、肉の表面にとどまるのでしっかり味を感じられ、食べやすいとろみ加減です。お玉やスプーンでたれをすくったときに、ぽてっと落ちる程度がめやすの固さ。
Q.冷めてもころものふわふわサクサクをキープする方法はある?
A.
ころもに片栗粉を使っているとはいえ、鶏肉自身の湯気も湿気になるので、時間が経てばしんなり感は出てしまいます。湿気を抑えたいなら、できるだけ早く冷ますことが大切。うちわなどで風を当てながら冷やせば、比較的しんなり感を抑えられるでしょう。
Q.鶏肉を1枚で揚げるなら、厚さを整えたほうがよい?
A.
前述のとおり、むね肉でジューシーに仕上げたい場合は、厚さを均一にしたほうがおすすめ。一方で、厚さをそろえると面積が広がり、そのぶん、ころもが多くつくため、さらにボリュームアップすることになります。もちろん、好みもあると思いますが、もも肉でつくる場合などは厚さをそろえないほうが、肉ところものバランスが良くなりますよ。
揚げ物ビギナーさんにも
おすすめ!
プロのコツを押さえた
チキン南蛮に挑戦しよう
難しそうなイメージのあるチキン南蛮ですが、菱田さんのお話を聞くうちに「意外とハードルが低いかも?」と思うようになった方もいるのでは?実際に菱田さんに確認したところ、チキン南蛮はころもに入っている卵が鶏肉をコーティングするため、多少長めに揚げても肉汁が出にくいそうです。これなら、揚げ物をあまりしないという方も、きっとジューシーでおいしいチキン南蛮がつくれるはず!皆さんも早速トライして、お店の味を堪能してくださいね。

教えてくれた人 菱田アキラ(菱田屋)さん
100年以上の歴史をもつ定食屋『菱田屋』の五代目店主。老舗寿司店、中華料理の名店などを経て『菱田屋』に入店。四代目と共に、メニューや食材の見直しを図りながら店のリニューアルを行い、行列ができる人気店へと成長させる。『行列のできる定食屋 菱田屋の男メシ!』(オレンジページ)著者。
撮影/金田邦男
公開:2025年2月4日
ホームクッキング編集担当より
菱田屋さん直伝のレシピ第2弾!から揚げの取材と連続であったにもかかわらず、素早く手を動かしながらたくさんのコツを伝授してくださりました。あまりのおいしさに、編集スタッフもから揚げとチキン南蛮の試食をペロリと平らげてしまいました。いずれも、「二度揚げ」と「油を惜しまずに使う」ことが何よりのポイント。腕まくりメニューとしてここぞという日にぜひトライしてみてください。(編集担当・市川)
プロに教わる鶏の唐揚げ(から揚げ)のレシピ・作り方【人気の定食屋・菱田屋さん直伝】はこちら