
糖質とは?
1日の摂取量や
多く含まれる食べ物、
炭水化物・糖類との違いを
管理栄養士が解説
エネルギーの元となる「糖質」は、私たちにとって必要不可欠な栄養素。近年は「糖質制限」なんて言葉も聞かれますが、実際のところ、どのくらい摂ればいいのでしょうか?また、足りなくなると、どんなことが起こるもの?そんな疑問に答えてくれたのが、管理栄養士で料理研究家の牧野直子さんです。その内容を、糖質の働きや上手な摂り方のほか、糖質制限に役立つ工夫やおすすめのレシピなどとともにまとめたので、ぜひご一読ください。
糖質とは?
炭水化物・糖類との違いを
解説
糖質の基本的な役割
「糖質は脳にとって唯一のエネルギー源」と、牧野さん。具体的にどういうことなのか、まずはその概要と働きを聞いてみましょう。
牧野さん「糖質は炭水化物に含まれる栄養素。この炭水化物に加え、脂質、たんぱく質にはエネルギーをつくり出す働きがあり、総称して“三大栄養素”や“三大熱量素”と言いますが、体だけでなく脳にも使われるエネルギーのもとになるのは糖質だけなんです。
脳はエネルギーをためておくことができないため、毎回の食事で目安として100g程度、およそおにぎり1個分の糖質を摂っていないと、脳のエネルギー不足が起こると言われています。そこまでいくと体に使われるエネルギーも足りなくなっているので、代わりに体の中にある脂質やたんぱく質が使われる場合もあるんです」
このように、糖質の控えすぎが他の栄養素の働きに影響を及ぼすこともあるため、事情がない限り、糖質も脂質も控えすぎは良くないのだそう。
牧野さん「糖質と脂質は悪いもの、と思われがち。もちろん、実際に摂りすぎれば中性脂肪として体に蓄えられ、肥満につながるので、要は適量が大事ということですね」
糖質・脂質・たんぱく質のバランスが大事
牧野さん「エネルギーをつくる炭水化物、脂質、たんぱく質の摂取比率は、“PFCバランス”という言葉で示されます。これは、“Protein(たんぱく質)”“Fat(脂質)”“Carbohydrate(炭水化物)”の頭文字を取ったもの。1日の総エネルギー摂取量のうち、たんぱく質13〜20%、脂質20〜30%で、残りの50〜65%を炭水化物で摂るのが理想と言われています。
近年の傾向では脂質の摂取が増え、糖質は減っています。ラーメン+ライスのような炭水化物の重ね食べや、極端な糖質オフといった食生活でなければ、糖質は摂りすぎや控えすぎになることはほとんどありません」
炭水化物と糖質の違い
牧野さん「炭水化物は糖質と食物繊維の2つに大別されます。糖質は体の中でエネルギーになりますが、食物繊維にその働きはありません」
糖類と糖質の違い
牧野さん「糖類は糖質の一部で、糖質の中でもエネルギーになる“利用可能炭水化物”のひとつ。利用可能炭水化物は大きく多糖類、単糖類、二糖類の3つに分けられ、多糖類はご飯などに含まれるでんぷんのほか、しょうゆやはちみつといったものに含まれるオリゴ糖などを指します。
残りの単糖類、二糖類がいわゆる糖類です。単糖類はぶどう糖やガラクトースといった個の糖を指す一方、二糖類は糖がふたつ結びついたもの。こちらはぶどう糖と果糖が結びついたしょ糖(=砂糖)や、ぶどう糖+ガラクトースの乳糖などが含まれます。
ちなみに、多糖類はさらに多くの糖が結びつき、つながった構成。体内で吸収するにはこれらをひとつひとつ切り離す必要があるため、吸収に時間がかかって血糖値の上昇もゆるやかになります。同じ糖類でも、運動前や運動中などで効率よくエネルギー補給を行いたいときは単糖類、持久力が欲しいなら多糖類といった形で、用途に応じて使い分けると効果的ですね」
糖質の摂取量の目安と、
不足・摂りすぎの影響
1日の糖質摂取量
牧野さん「糖質の摂取基準量は、厚生労働省が示している『日本人の食事摂取基準』には記載されていないため、PFCバランスをもとに炭水化物から計算する必要があります。
たとえば成人女性の場合、1日に必要なエネルギー量はおよそ2000kcalで、そのうちの50%を主食で摂ろうと考えると、約1000kcal。糖質は1gあたり4kcalなので、1000kcalに対しては250gの糖質を摂ることになります。これをご飯で摂るなら、普通盛り1膳(150g)中に含まれる糖質量は51.9gなので、1日約4杯分が必要。もっと簡単な目安として、両手の手のひらに載る量を1食分とするのも良いでしょう」
1食あたりご飯1杯、何ならお代わりしても大丈夫だなんて、ちょっと意外ですよね。近年は、“炭水化物抜きダイエット”や“糖質オフ”といった言葉も定着していますが、それほど我慢する必要はないのかも?
牧野さん「いも類や果物など、主食以外で糖質を含む食べ物も、100gから200gくらいなら食べて大丈夫。もちろんスイーツでも、その範囲内に収めれば摂りすぎにはなりません。他の食べ物とのバランスもあるので一概に言えないものの、“糖質はとにかく減らさなきゃ”と考える必要はないんです」
近年、若い女性のやせすぎが問題視されていますが、牧野さんは極端な糖質制限などもその一因だと思うそうです。
牧野さん「ダイエットのしすぎなどで血糖値が低い状態を続けていると、いざ食事をしたときに血糖値が跳ね上がります。血管にダメージを与えたり、糖尿病などの生活習慣病リスクにつながったりしかねないので、適正量を摂るようにしたいですね」
糖質を摂りすぎるとどうなる?
牧野さん「余分に摂った糖質は最終的に中性脂肪となるため、肥満や高血圧のリスクが上がります。また、中性脂肪の数値が高くなり、脂質異常症の原因となることも。麺類+ご飯のように、炭水化物同士を組み合わせた食事のほか、糖質の多い菓子パンや清涼飲料水などを多く摂る習慣があるなら注意が必要です」
糖質が不足した場合の影響は?
牧野さん「糖質が不足することで脳へのエネルギーが不足し、集中力の低下につながります。エネルギー不足で体が疲れやすくなったり、先ほどお話ししたように低体重を引き起こしたりもするので、1食につきおにぎり1個程度の炭水化物は摂りたいですね。コンビニで売られているおにぎりは100g前後のものが多いので、目安になるでしょう」
食品別:糖質が多い食べ物・
少ない食べ物一覧
糖質の多い食べ物
糖質を多く含む食品をまとめたのがこちらの表です。
牧野さん「基本的に糖質を多く含むのは炭水化物です。野菜ならさつまいもやかぼちゃ、とうもろこしなども多め。また、生鮮食品に比べると加工食品のほうが糖質を多く含みがちなので、成分表示を確認する習慣をつけると良いでしょう。
意外と糖質を多く含むのが、春雨。一見、しらたきに似ていて低エネルギーに思うかもしれませんが。春雨はでんぷんでできているのでこんにゃくほど糖質は少なくありません。同じようにタピオカもでんぷんなので、甘いドリンクに入っていれば糖質量はさらにアップします。もちろん、どの食品も食べる量によるところが大きいので、普段の食事量を見直すことも大切ですよ」
糖質の少ない食べ物
牧野さん「白米に比べて糖質が少ないのが、もち麦や押し麦などの雑穀米。また、えのきなどのきのこ類のほか、野菜ならカリフラワーやもやしなども糖質が少なく、かさ増しとして使われることも多い食品です」
糖質を抑える工夫、
食事の摂り方や調理法など
糖質を抑える食事法のポイント
牧野さん「食事のときは主食ではなくおかずから食べることで、糖質の吸収がゆるやかになり、血糖値の急上昇が抑えられます。血糖値の上がり下がりが激しいと、必要以上に上がった糖質(血糖)が中性脂肪となったり、インスリンというホルモンが働かず糖尿病を引き起こす要因になったりすることも。よく“ベジファースト”と言われますが、食物繊維だけでなくたんぱく質も糖質の吸収をゆるやかにするクッションとなります。
食物繊維を増やすなら、ご飯は白米だけよりも雑穀米を混ぜたもの、パンは全粒粉のものやライ麦入りのものを選ぶのがおすすめ。このほか、ご飯にきのこやカリフラワー、麺類にえのきやもやしを加えてかさ増しするのも、糖質を抑えるのに役立ちます」
調味料や調理法でできる糖質コントロール
牧野さん「砂糖の代わりに、ラカンカやステビアなどを原料とした、天然由来で糖質を控えた甘味料を使うのもひとつの方法。また、炒めて甘みを出した玉ねぎなどを入れることで、砂糖の量を減らすこともできます。どちらもそれほど大量に使う調味料ではありませんが、気になるときはお試しください」
お菓子や甘い飲み物は控えるべき?
牧野さん「糖質を抑えるなら甘いものはNGと思うかもしれませんが、ストレスになるほど我慢する必要はありません。ただし、食べるなら量を決めて200kcalに収まる程度に。また、時間帯はできれば夕食前、もしくは夕食後すぐなら、血糖値の急激な上昇を抑えられます。
なお、甘いお菓子や飲み物には、思った以上にたくさんの砂糖が使われていることがあるので、やはり成分表示の確認が大切です。砂糖の量=ほぼ糖質の量。たとえば400mlの炭酸飲料で約40gの砂糖が入った商品がありますが、たいていのスティックシュガーは容量3g〜4gなので、これを10本ほど使うのと同じことに。特に飲み物はかむ必要がないぶん、摂りすぎてしまいがちなので注意が必要です。
糖質を控えるときのポイントは、自分が何を食べて糖質を摂りすぎているのかを認識すること。それによって、量を一口分減らす、大盛りを普通盛りにする、お代わりをしないなど、対策も変わってきます。糖質の摂取量をゼロにするのは良くないので、自分の食習慣を振り返って摂り方を考えましょう」
糖質に関する疑問、
FAQでお答えします
糖質にまつわる疑問を、一問一答形式でまとめました。
Q. 「糖質ゼロ」と「糖類ゼロ」は違うもの?
A.
牧野さん「糖質の一部に含まれるのが糖類なので、このふたつは別のものです。たとえば糖類ゼロをうたっていて、ぶどう糖や砂糖は入っていないけれど、多糖類であるオリゴ糖が使われているという場合もあるのです。また、国が定める食品表示法では、糖質も糖類も食品100gあたり、飲料100mlあたりに含まれる糖質の量が0.5g未満なら、“ゼロ”と表示してよいと定められているため、まったく入っていないとも限りません」
Q.糖質制限は誰がやってもいいの?
A.
牧野さん「肥満の人や生活習慣病がある人は、体重(体脂肪)を減らすことで血糖値が安定したり、血圧が下がったりするため、糖質はコントロールしたほうがいいですね。ただし、医師の治療を受けている場合は注意が必要。たとえば糖尿病でインスリン注射を打っている人なら、糖質を控えることで低血糖に陥るなど、さまざまなリスクがあるので、かかりつけ医に相談してください。また、妊娠している人や成長期の子どもなど、食べなくてはいけない時期にある人も、適正体重なら糖質制限は不要。病院で指導されている場合を除き、行う必要はありません。先ほども触れたように、極端な糖質制限はやせすぎとなるリスクもあるので、避けるようにしましょう」
Q.低糖質ダイエット中は、果物やお酒も控えるべき?
A.
牧野さん「果物にはぶどう糖や果糖が含まれる一方で、種類によっては食物繊維やビタミンCといった栄養素も摂ることができます。さらに、水分補給にもなる点を考えると、1日あたり200gを目安に食べるのがおすすめ。
お酒も種類によって違いがあり、焼酎やウイスキーといった蒸留酒は糖質ゼロですが、一般的なビールやワイン、日本酒などには含まれています。また、アルコールは1gあたり7kcalあるので、たとえ蒸留酒でも飲みすぎには注意が必要。甘い物のお話にもあったように、1日200kcalを目安にしつつ、毎日飲むのも避けましょう。」
Q.糖質を摂りすぎた場合、したほうがいいことは?
A.
牧野さん「糖質に限ったことではありませんが、必要以上に摂ったときはできるだけ短いスパンでその栄養素を控えると良いでしょう。たとえば、昼食で摂りすぎた場合は夕食時に摂る量を減らす。難しい場合は、翌日の摂取量を減らしてみてください」
Q.糖質と一緒に摂ったほうがいい栄養素はある?
A.
牧野さん「血糖値の上昇をゆるやかにする食物繊維のほか、糖質の代謝を促進するビタミンB1もおすすめ。ビタミンB1は豚肉に多く含まれており、紅鮭やたらこなどにも豊富です」
Q.低糖質のスイーツやパン、食品の上手な取り入れ方は?
A.
牧野さん「低糖質食品は、食べすぎなどで糖質を必要以上に摂ってしまったときの調整に活用できます。いつも食べているものに置き換えれば、無理なく糖質を抑えられますよ」
糖質を抑えるレシピを紹介!
はんぺんでつくる
ふわふわお好み焼き風
牧野さん「小麦粉の代わりにはんぺんを使うことで、食感はふわふわのまま、糖質量をおよそ1/4ほどに抑えることができます。はんぺんの原材料は白身魚のすり身なので、脂質も抑えられ、たんぱく質はしっかりと補えます」
糖質オフでも満足!
しらたきチャプチェ
自分の食事を見直して、
糖質と上手につきあおう
牧野さん「糖質は体に欠かせない栄養素。必要以上に抑える必要はありませんが、糖質制限を考えるなら、まずは自分の食生活を振り返ることが大切。飲み物を含む1日の食事を書き出すなどして、糖質を何からどのくらい摂っているか、何を減らせばよいかを考えてみましょう。その結果、減らす必要がなかったという人もいるかもしれませんし、足りない栄養素も見えてくるので、そこから見直してみるのもよいと思います」
教えてくれた人 牧野直子さん
管理栄養士、料理研究家。「スタジオ食(くう)」主宰。女子栄養大学在学中より、栄養指導や食育活動に携わり、保健センターや小児科での栄養相談、食生活についてのアドバイスにも定評がある。作りやすく、おいしくて元気になる料理が好評。雑誌、新聞、テレビ、料理教室や健康セミナーなどで幅広く活躍中。
撮影/金田邦男
公開:2026年3月●●日




ホームクッキング編集担当より
飲料やスナック菓子など、巷で「低糖質」「糖質○%カット」という言葉をよく聞くようになりました。私自身糖質の存在がなんとなく気になって、茶碗に盛ったご飯の量を気持ちばかり減らすことも…。今回牧野先生のお話を伺って、糖質が体と脳にとって重要なエネルギー源であることがわかったので、摂りすぎず・控えすぎず、PFCバランスの良い食事を目指していきたいと思いました!(編集担当:賀来)