豚肉の部位の
選び方・使い分け方。
部位別おすすめレシピも【プロが解説】

扱いやすい食材のひとつ、豚肉はおうちごはんの頼れる味方!スーパーやお肉屋さんにはいろいろな部位が並びますが、それぞれの特徴を知ればもっと無駄なく、おいしく豚肉を使いこなせます。そこで今回は、各部位の特徴や使い分け方を、料理家の江口さんに伺いました。おすすめレシピも紹介しているので、日々の食事づくりにぜひお役立てください!
豚肉の代表的な
部位、名称と特徴
たんぱく質やビタミンB1が豊富な豚肉。その脂肪には、コレステロール値を下げる不飽和脂肪酸も多く含まれています。牛肉や鶏肉に比べ、家庭で消費される量が多い身近な存在にもかかわらず、「部位まで考えて選ばない」「買うのは安価な豚こまばかり」なんて声が聞かれることも。
そんな豚肉の部位は、「食肉小売品質基準」によって以下のとおりに定められています。上手に使い分けるなら、まずはそれぞれの位置と特徴を知ることから始めましょう。

バラ

胸と腹部分にある部位。脂肪と赤身が三層になっているため、「三枚肉」とも呼ばれます。脂肪が多いため、長時間加熱してもジューシー。ブロックや薄切りのほか、肋骨まわりのものは「スペアリブ」として販売されています。
ロース

背中の中央にある肉で、表面は白い脂肪で覆われています。脂身と赤身の部分がはっきりと分かれており、豚肉らしい脂の甘みと赤身のうまみが味わえるのも特徴。
肩ロース

肩とロースの間にあり、全体的にバランス良く脂肪が混ざっていて味わいが濃厚。幅広い料理に使いやすく、ブロックや薄切り、しゃぶしゃぶ用など、さまざまな切り方で販売されています。
ヒレ

ロースの内側にあり、豚肉の中でもっともやわらか。一頭から取れる量が少ないこともあり、価格は他の部位よりも高めです。ほぼ赤身で脂肪が少なく、ヘルシーな部位。
モモ

後ろ足の上部となる部位で、脂肪が少なくあっさりした味わい。よく動かす部分なので、しっかりと締まった肉質ですが、じっくり煮込めばやわらかく仕上がります。
肩

前足の上部にある肉で、よく動かす箇所なので赤身が多くて脂肪は少なめ。豚こま(こま切れ肉)に用いられることも多い部位です。肉質は少し硬めで筋も入っていますが、じっくり煮込むことでやわらかくなり、うまみも増します。
豚肉の部位ごとの
使い分け方・おすすめレシピ
スーパーなどで比較的手に入りやすい部位に絞って、それぞれに適した下ごしらえ、調理法をご紹介します。おすすめレシピには、つくり方のワンポイントアドバイスも添えました。
豚バラのおすすめレシピ・調理法
脂の多さは美点でもありますが、多すぎる場合は脂抜きを。角煮などは下ゆでをする、炒め物では味つけ前にキッチンペーパーで吸い取るなど、必要に応じて処理しましょう。しゃぶしゃぶにするときも、湯に大さじ2~3の料理酒を入れると、脂くささが抜けるのでおすすめ。また、お好み焼きや白菜との煮物など、脂を抜かずに野菜に吸わせることでおいしくなる料理もあります。
薄切りは炒め物やお好み焼きなどに。ブロックは角煮やベーコンはもちろん、角切りにしてカレーに使うのもおすすめです。スペアリブはバーベキューのほか、骨からのうまみを活かして煮込み料理に使っても。
おすすめレシピ(薄切り):
肉野菜炒め(基本の和食、おうちの和ごはん)

具材のうまみが引き出された肉野菜炒めは、シンプルな味つけながら想像以上のおいしさ!味つけに砂糖を少し使うことで、香ばしさがアップします。つくるときは、具材をしばらく焼いてから炒めるのがコツ。すぐに炒めようとすると野菜の水分がしっかり抜けず、全体に水っぽくなるのでご注意を。
肉野菜炒め(基本の和食、おうちの和ごはん)
おすすめレシピ(ブロック):
フライパンで簡単!豚の濃厚角煮

とろりとした脂とみりんの照りで、食欲アップ間違いなしの一品。豚肉はカットしてから使うので、ブロックの状態よりも扱いやすく、調理時間の短縮にもつながります。最初のゆでる工程で日本酒を使うのがポイント。くさみが抜けてやわらかくなり、味もしみやすくなります。
フライパンで簡単!豚の濃厚角煮
おすすめレシピ(骨付き):
豚スペアリブの甘辛煮【濃厚なうまみで人気!】

オイスターソースが加わって、うまみが強いスペアリブにも負けない濃厚な味わいに。しっかり煮込まれた肉はやわらかで、骨からするりとはずれます。煮込む前に焼き色をつけることで、香ばしさがアップ。焼かずにつくることもできますが、断然おいしくなるのでこの工程は省かないようにしましょう。
豚スペアリブの甘辛煮【濃厚なうまみで人気!】
豚ロースのおすすめレシピ・調理法
厚切りのものは肩ロース同様、下ごしらえの段階で筋切りを行いましょう。赤身部分はモモよりやわらかいものの、加熱するとやはり硬くなりがち。とんかつやソテーにするときは包丁の背などで叩く、ブロックならフォークを刺すといった下ごしらえも大切です。
薄切りはしゃぶしゃぶや炒め物、鍋物に。厚切りはとんかつやソテー、ブロックはローストポークなどに適しています。薄切りと厚切りの中間ほどのものは、「しょうが焼き用」と呼ばれることも。
おすすめレシピ(薄切り):
豚肉のしょうが焼き【豚ロース薄切り肉で人気】

しょうがを効かせた甘じょっぱい味わいは、ご飯はもちろん、せん切りキャベツとも好相性。玉ねぎは豚肉と一緒にもみ込むことでしんなりするので、火の通りが良くなって時短につながります。漬け込んでから5分おくことで全体に味がなじむので、省かないようにしましょう。
豚肉のしょうが焼き【豚ロース薄切り肉で人気】
おすすめレシピ(厚切り):
カリッとポークソテーのまろやかオーロラソース

オーロラソースの基本的な材料となるケチャップ、マヨネーズに、卵黄とみりんをプラス。コクと甘みが加わり、さわやかな酸味の後にまろやかさが続くリッチな味わいは、華やかな色合いと相まってごちそう感をアップさせます。豚の脂との相性も抜群。
カリッとポークソテーのまろやかオーロラソース
豚肩ロースのおすすめレシピ・調理法
「バラとモモの中間くらいの脂身がほしい」というときにも使いやすい部位です。厚切りのものは加熱すると反り返るので、脂肪と赤身の境目に包丁を入れる「筋切り」が必要。ブロック肉を煮込むなら、数カ所をフォークで刺して肉の線維を壊すことで、やわらかく仕上がります。
薄切りはしゃぶしゃぶ、厚切りはトンテキやポークソテー、ブロックは煮豚と、幅広く使えます。角切りにして酢豚やカレーにしても。
おすすめレシピ(薄切り):
アスパラの肉巻き(基本の和食、おうちの和ごはん)

ほろ苦アスパラと、肩ロースのうまみがベストマッチ!みりん×しょうゆの甘辛味で、ご飯がどんどんすすみます。肉がはがれないよう、豚肉を巻いた後にギュッと押さえ、巻き終わりから焼くのがコツ。焼いている最中も、できるだけ触らないようにしましょう。
アスパラの肉巻き(基本の和食、おうちの和ごはん)
おすすめレシピ(厚切り):
豚肩ロースのソテー【人気のごちそうステーキ】

噛めば噛むほど、豚肉の脂の甘みが口いっぱいに広がる、ボリューム満点の一品。豚肉に小麦粉を薄くはたくことでうまみと肉汁を閉じ込め、カリッとした仕上がりとなります。焼く前の塩とこしょうは不要と思うかもしれませんが、下味をつけることで肉のうまみが引き出され、味ものりやすくなる大切な工程。
豚肩ロースのソテー【人気のごちそうステーキ】
おすすめレシピ(ブロック):
焼き豚(チャーシュー)(基本の和食、おうちの和ごはん)

30分ゆでた後、予熱でじっくり火を通して焼く。この手順を守ることで、しっとりしながら香ばしさもまとったおいしい焼き豚が完成します。オーブンなどで焼く方法は火の通り具合を見極めにくいですが、このレシピなら初心者でも失敗知らず!シンプルな味つけで、豚肩ロース肉のうまみが存分に味わえるのも魅力です。
焼き豚(チャーシュー)(基本の和食、おうちの和ごはん)
豚ヒレのおすすめレシピ・調理法
脂肪が少ないため、ゆでたり煮込んだりするよりも、揚げ物や炒め物といった油分を加える料理に向いています。加熱するとパサつきやすくなりますが、事前に酒類やオイルをもみ込んでおけば仕上がりはしっとり。ピカタのように、ころもをつけてから加熱する料理とも好相性です。とんかつや串揚げ、ソテー、パン粉焼きなどにもおすすめ。
おすすめレシピ(ブロック):
豚ヒレ肉のパプリカ炒め

2色のパプリカで彩りが良く、食欲をそそる炒め物。肉を炒める前に片栗粉をまぶすことで、表面がトロッとしてパサつかず、調味料もよくからみます。最後に少々の酢を入れますが、酸味はなく、引き締まった味わいに。黒こしょうが全体の味をぐっと引き立てます。
豚ヒレ肉のパプリカ炒め
豚モモのおすすめレシピ・調理法
一見、豚ロースにも似ていますが、肉質はロースよりもしっかりしています。赤身が中心なので、火を入れすぎて硬くならないように注意を。加熱前に料理酒や塩麹をもみ込んだり、小麦粉や片栗粉をまぶしたりしておくとパサつかず、やわらかく仕上がります。
薄切りは炒め物やしゃぶしゃぶなどに、ブロックは煮豚など、長時間煮込む料理がおすすめ。
おすすめレシピ(薄切り):
チンゲン菜と豚肉の中華風ピリ辛炒め

しょうゆと花椒の香りで品良く仕上げた一皿。チンゲン菜のシャキシャキ感もおいしさをつくる大切な要素です。ポイントは、火の通りが異なる葉と茎を分け、時間差で炒めること。切るときは丸ごとの状態より、葉を1枚ずつはがしてからのほうが確実に分けられるので、このひと手間は惜しまずに。
チンゲン菜と豚肉の中華風ピリ辛炒め
「豚こま」って、どこの部位?
店頭でもよく目にする豚こまとは、豚のこま切れ(細切れ/小間切れ)肉のこと。部位は決まっておらず、さまざまな部位が混ざっています。主に肩やロース、バラ、モモなどの部位が使われますが、お店やパックによっても異なります。
カットされた形状は「切り落とし」と似ていますが、部位ごとに分けられているものを切り落とし、複数の部位がミックスされているものを豚こまと呼びます。
薄くスライスされていて使い勝手がよく、炒め物や焼きそば、うどんなど、さまざまな料理で活躍します。

手頃な価格と使い勝手の良さも、豚こまの魅力。
おすすめレシピ:
豚こまでお手軽!ポークチャップ【人気の定番洋風おかず】

しょうゆ入りのケチャップソースはご飯とよく合い、和の献立とも好相性。食べやすい薄切り肉に下味として料理酒をもみ込むことで、よりやわらかく仕上がります。加熱する前にまぶした片栗粉は、全体にとろみをつけながら豚肉をしっとりさせる効果も。
豚こまでお手軽!ポークチャップ【人気の定番洋風おかず】
選ぶときのポイントは?
おいしい豚肉を見分ける方法
新鮮な豚肉の赤身は色鮮やか。鮮度が落ちると、パックの中に「ドリップ」と呼ばれる赤い水が溜まりやすくなります。できるだけドリップが溜まっていないものを選びましょう。
なお、鮮度は空気に触れて酸化することで落ちていきます。特に薄切り肉やひき肉は、ブロック肉に比べて空気に触れる面積が広いため、より注意したいところ。購入したら早めに使い切るか、適切に保存しましょう。

赤身が鮮やかで、脂肪部分は白または乳白色のものが、新鮮と言われています。
身近なようで
意外と知らない?
豚肉に関するFAQ
部位や調理法がわかってきても、「あれっ?」と疑問に思うこと、まだあるのでは。ここでは、そんなちょっとした疑問に一問一答形式でお答えします。
Q.カレーや肉じゃがにおすすめの部位は?
A.
好みにもよりますが、どちらもこってりしたものが合うので、豚バラや肩ロースなど脂肪の多い部位がおすすめ。ブロックならお好みサイズにカットできますし、薄切りなら手軽に使えて便利です。
Q.赤身が多い部分と、脂身が多い部分はそれぞれどの部位?風味も違うの?
A.
特に多い部位は赤身ならモモ、脂身なら肩ロース、ロース、バラ。豚肉は一般的に、赤身が多いほどうまみが、脂身が多いほど甘みが強くなります。
Q.しっかり噛みごたえのある部位と、やわらかくジューシーな部位はどこ?
A.
噛んだときの弾力が強いのは肩とモモ。よく動かすことで、筋肉が発達した部位です。一方、やわらかくて肉汁も多いのは、脂身の多い肩ロースとロース、バラとなります。
Q.豚ひき肉は、どのあたりの部位が多いの? どんな特徴がある?
A.
使われる部位は店舗やタイミングによって異なり、脂肪の量や食感にも差があります。まれに「赤身」と表記されたものが販売されていることもあり、脂身が苦手な人やコレステロールを下げたい人におすすめです。

細かく挽かれていて痛みやすいので、早めに使い切りましょう。
Q.カレー用として角切りで切られているお肉の部位は?
A.
こちらも店舗などでも異なりますが、たいていはロースや肩、モモなど、さまざまな部位が混ざっています。カレー用に限定せず、シチューや酢豚などに使うのもおすすめ。

よく見ると、部位が異なるのがわかります。
豚肉の部位にこだわって、
料理の完成度を
さらに高めよう!
ひとくちに豚肉と言っても、部位ごとにさまざま。味わいや向いている調理法が異なるので、使い分けることで今まで以上においしい料理ができそうです。また、「筋切りをする」「下味をつける」「片栗粉や小麦粉をまぶす」といった工程は、手軽なわりにクオリティが確実にアップするので、ぜひ行いたいところ。おいしさもレパートリーも広がって、料理がもっと楽しくなるはずです!あまり気にしたことがなかった人も、これからはもう一歩踏み込んだ豚肉料理に挑戦してみては?

教えてくれた人 江口恵子さん
料理家、フードスタイリスト、 All About「家事」ガイド 。雑誌や広告、Webなどでレシピ提案やスタイリングを行うほか、企業のレシピ開発など、幅広く活躍。料理教室「 ナチュラルフードクッキング 」主宰、カフェ&デリ「ORIDO. 吉祥寺」オーナー。著書に『普段使いの器は5つでじゅうぶん。』(ジービー)などがある。
撮影/金田邦男
公開:2025年4月22日
ホームクッキング編集担当より
編集担当者の雑談から今回の記事テーマが決まりました。「部位に合った料理って自分達は仕事柄何となくわかるけど、実生活では豚こまを選びがち」であったり、「料理を始めたころは部位の特徴がチンプンカンプンだった」といったりした会話をもとに、豚肉選びのサポートができればという想いで記事を制作。スーパーや肉屋でお買い得な部位を見てからつくる料理を決めたい時など、献立のヒントにしていただければうれしいです。(編集担当・市川)